1998年5月


雑感
        関東学院大学   本間英夫

  就職戦線
  五、六年位前でしたか就職戦線異状ありと、その年の求人動向について、本誌に書きましたが、内容の一部を思い起こしてみました。確かその時までは、バブル経済の終焉を、迎えようとしていたときでしたが、未だ、売り手市場であったと思います。当時の学生の中には、企業訪問と称して地方を回り、友達の家に宿泊して旅費と宿泊費だけはちゃかり頂き、月に数十万円を稼いだ?のもいました。大学には毎日、企業の人事や先輩の方々が訪れ、学生の売れ行きはよく、余り先生方がケアーしなくても、学生自身で就職を決めている研究室が多かったようにも記憶しています。就職情報誌は、新四年生の自宅や下宿に、段ボール箱いっぱいに送られてきたものです。又、その就職情報誌に、企業が求人広告を一ページ掲載すると一〇〇万円以上要求し、しかも、アルバイトを雇い、電話でアクセスをさせ、応募をしたように見せかけ、さも広告が有効だったかの印象を持たせる詐欺まがいの行為もあったようです。又、大学の就職部には黙っていても、求人倍率は一〇倍以上で、十分に学生が企業を選ぶことが出来ました。その翌年から、事情は一変しました。バブルの後遺症がボディーブローのように、じわじわと効いてきました。求人数はその後、年々減少し大学に訪れる人も減り始めました。それまでは、毎日のように就職担当の先生は、訪問され企業の方との対応に追われていましたが、私が科長になった三年前は訪れる人もめっきり減り、求人倍率も急激に低下しました。八〇人の学生に対して、一時は一五〇〇社以上からの求人がありましたが、昨年は三〇〇社くらいに激減していました。これには、求人のやり方の多様化もありますので、一概に五分の一に減ったとは決めつけられませんが、それにしても大幅に低下したことは事実です。多様化の中で特筆すべき手法として、先ず、インターネット上のホームページで応募するようになってきたことがあげられます。特に、エレクトロニクス関連業界では力を入れたようです。また、バブル絶頂期の時から比較しますと、冊数は減ったようですが、依然として新四年生の自宅に就職情報誌が送られてきているようです。求人数の減少に伴って、売り手市場から買い手市場に変わり、確か三年位前に、小生の部屋の学生が自分で東証一部の会社に応募した時は、未だ就職協定が生きていましたが(解禁十月)、四月から面接が始まり、なんと役員面接に漕ぎ着けるまでに、合計八回もその会社に足を運んだようでした。買い手市場になったからと言って、学生を長期にわたり拘束するのも考え物です。五月の終わりに内定の通知をもらう頃、本人は、この様な試験制度に疑問を持つと共に、東京六大学の学生と互してやっていけるだけの能力が俺にもあるんだと、自信をつけたようでした。本人は、これだけの競争に打ち勝てるのであれば、さらに大学院に進学して、技術的な力をつけたいと、小生の所に進言してきました。先方の企業には、失礼にならないように、本人の気持ちの変化を説明すると共に、この様な試験制度を見直されるのも大切ではないかと、コメント致しました。昨年から就職協定が廃止になりました。それにともない、いわゆる青田買いが更に加速する事になってしまいました。本年についてみますと、三月の終わりの時点で、私どもの科に既に、二〇〇社近く応募があります。これは、企業にとっても、学生にとっても、教員にとっても、全く良いことではありません。三年生の後半から四年生になった直後の学生に、どの様な能力があるのか、企業側はどの様に判断するのでしょうか。面接と筆記試験だけに頼ることになります。面接では、いわゆる、マニュアル回答を見抜く事は人事担当の方々にとっては、簡単かも知れません。かといって、華麗によどみなく質問に答える学生が良いとか、はつらつしている学生が良いとか、はたしてそうでしょうか? 学生の多くは三年生の時までは、同級生と学生特有の言語で会話をしています。また、卒業研究に入っていませんので、学生の技術に対する能力やセンスは未だ磨かれていません。したがって、面接で明るくて積極的、一般常識と簡単な語学力と算数の力を持っている学生が面接官には良い印象を待たれることになります。殆どの大学では、三年生までは、教員と直接にふれ合うことはありません。四年生になって初めて、卒業研究を通じて一年間、殆ど毎日のように教員、大学院の先輩とふれあうことになります。そして、その一年間で見違えるように人間的にも、技術的なスキルの面においても、大きく成長します。この辺りの評価を入れて採用をするようになれば、企業側も人材確保でのリスクを回避できることになります。企業側の競争原理から招いた青田買いをやめ、十月以降に各社が採用をするようになれば、学生は半年以上研究に専念し、自分のスキルがどこにあるか、どの様な職種が適しているか、自分で、ある程度判断できるようになります。その頃になると、教員側も学生の適材適所を判断できるようになります。現状では、七月くらいまでは学生が企業訪問や就職試験で、卒業研究に手がつかず、従って全く能力は向上しません。結局、就職が決まった後の数ヶ月で、あまり価値のない論文を作製して、能力のないまま産業界に出ていくことになります。この様に見てみますと、現状の採用時期及び採用方法を採っている以上は、お互いにいや日本の産業界にとって大きな損失になっているだけです。小生の研究室での学生の成長ぶりを示す例を、幾つか上げてみます。先ず学生が四月に研究室に配属されてきたときは、茶髪、まともな挨拶が出来ない、電話応対が出来ない、文章が書けない、人前で話せない、英語能力に至っては大学入学時からみると大幅低下、等々。それが一年後には殆どの学生が自信を持って卒業していきます。大学の最後の一年間は、マンツーマンで教育研究に入っていますので、若い彼らはスポンジのごとく、いろいろの事柄を急速に吸収し、能力は見違えるようにアップしてきます。例年、三月の卒業ぎりぎりまで私の部屋の学生は、自主的に研究室に来ています。もし、皆様の会社で是非私の所の学生を採用いただけるのであれば、希望は早めに、実際に決めるのは十月以降と言うのではいかがでしょうか。ある大手企業役員の採用に関するコメントを紹介します。「学生の採用に関しては、企業側にもかなり責任はあると思います。特に、文化系の場合は、その人が学校で何を勉強してきたかは全くと言って良いほど関係なく、企業側も度々、そこの大学に入学出来た頭があれば、それで十分で、後は会社に入ってから使い方を考えます。結局、大学のブランド名のみにこだわり、それぞれの学生の能力を評価することなく、採用しているのが現状です。場合によると、理工系でも同じような傾向が見られます。学生側もそう言う事には大変敏感で、有名大学さえ出ていれば、何とかなるという甘い考えで、最低の努力で、いかに楽をして卒業するかばかり考えるようになっているのではないでしょうか。更に、一部学生の間では、就職先にこれ又ブランド名を望むと言う、何ともお寒い現状があるようです。そんなブランド思考の中でも、別格の東京大学出身者が、これ又、ブランド志向の頂点とも言われる大蔵省へ入って、いったい何が出来るのでしょうか。日本の景気が浮上しない理由の一端も、案外この様なところにあるのかもしれません。」

  バブルは土地だった。
 一九九〇年の日本の総資産は三五〇〇兆円であったのが、一九九七年度末で、なんと二五〇〇兆円に減少したとのことです。泡と消えた一〇〇〇兆円の中身は、株が三〇〇兆円、土地が七〇〇兆円と試算されています。バブルの中身は、この様に土地であったことが明らかです。多くの企業が不動産投資、土地の買いあさりによって一挙に土地の価値が急騰しました。私も、今から十数年前に、田舎(地方都市)の土地を売りましたが、その時は未だそれほど値動きはありませんでした。しかし、その数年後から値段がどんどん上がり、自分のせっかちさに、ちょっと反省させられたものでした。その時は、不動産屋が仲介するのではなく、なんと銀行が仲介に入ってきました。おそらく銀行が実績を上げるために、個人の不動産に対してまで入り込んだ、バブルの始まりであったと思います。売買代金はしばらくの間、その銀行に預けて欲しいとのことでしたので、別に緊急に用立てするようなこともなかったので、その要請に従いました。確か半年してから、こちらの銀行に移そうと連絡したところ、ああでもない、こうでもないと、なかなか解約してくれません。彼らは支店間毎に預金額の競争があるのでしょう。そのときから、銀行は今までは、一円もミスがあってもいけないとか、きちっと厳格に処理をするところであると信用しておりましたが、それ以来信用出来なくなりました。そんなに多額な金額ではありませんでしたが、大口の顧客に対しては、以外にいい加減な事を実際はやっているのかなとも思えました。その頃から最近明るみになった証券会社のとばし、借名口座、利益の付け替え等が行われていたのかと疑いたくなります。その後のバブル経済と共に公正さ、倫理観がどんどん失われ、ついには金融業界をはじめとして多くの企業が不動産の投機に走り、担保価値の低い不動産の値段がどんどん指数関数的に上昇し、日本の景気の停滞にともなって、いったいどれ位なのか予測もできない未曾有の不良債権と化したわけです。話は少し土地問題からはずれますが、あの山一証券が三月に全店閉鎖廃業になりましたが、破綻した十一月のその翌週から、一般の投資家に対する証券の返却が始まりました。一ヶ月の間は各支店とも多くの一般投資家、特に中高年の方々が詰めかけている風景が目に付きました。一月の後半には、そろそろ落ち着いたような雰囲気で、取引をしていない方にとっては、一般の投資家に対しての返却がほぼ終了したのかなと思われていたと思います。実は二、三年前から実施された委託保証制度(実質株主)の証券は、名義が本人になっていませんから、片っ端からその証券を取ってくれば良いので、返却はスムーズに進みましたが、本人名義になっているものはそうはいきません。本人名義の件数が一二〇万件以上あり、本人のものを探すのには、大変な時間を費やすことになります。実際本人に返却されたのは、三月に入ってからでした。このことは、余りニュースとしては流されなかったことと思います。金融破綻と共に株価が大幅に下落する中で、独歩高を演じていた国際優良株、特にエレクトロニクス関連の株を持っていた投資家は、実際には売りのタイミングを逸したことになります。前月の会報にも書きましたが、資本主義経済下において、真の投資環境、投資家を育てるようにしてもらいたいものです。何も悪いことをしているわけではありません。銀行だけが低い金利で借り受け、有効に投資しているのは異常です。逆に言うとこの低金利政策を続けざるを得ないほど日本の経済は深刻な状況にあることは殆どの方が認識しているのにもかかわらず、政府は依然として抜本的な対策をとってきませんでした。経済界ではこれをNATOと揶揄した人もいます。(Not action talk only)後手後手で折角経済政策を打ち出しても失望感や折り込み済みとの解釈で短期的には反応しても、市場には反映されませんでした。さて話は本題から大きくずれてしまいましたが、この様に一度高騰した土地の価格が高騰前に戻ってしまいました。殆ど価値のない土地を高額に評価し、それを担保として巨額の資金が動いたわけです。そしてバブルが消えると共に、不良債権化していったのです。最近では潤沢な資金を持った外資系の証券会社が、安く土地や不動産を買いあさっているとのことです。バブルの時に外国の不動産を買いあさった日本の企業が、しっぺ返しにあっているような感じがします。日本の個人金融資産は一二〇〇兆円であると試算されています。今回の色々な問題で、数百兆円にも上る資産価値がバブルと共についえた事になっていますが、当然個人資産は目減りしているわけです。これを直接的にわからないように、繕っているのが、公的資金の投入です。すなわち税金ですから、結局は国民の負担が増加していることになります。金融機関が大きな負債を抱えるに至っているのに個人金融資産が目減りしないわけがありません。結局は預金者である一般の国民は、余り意識は無いと言うよりも、一人一人ではどうすることもできない問題であり、低金利に甘んじ、金融機関は企業に対する貸し渋りを強化せざるを得ず、景気はますます停滞する状況に陥っているわけです。この記事が出る頃には景気の反転を願っていますが、果たしてどうなっているでしょうか。

  トレンディーな話
  四月九日の朝刊に「相模ゴム全品回収」「新型コンドーム回収」「半分の薄さ、強度三倍に穴」等と、全ての新聞の三面記事に出ました。四月号で紹介した株のストップ高が、今度はストップ安です。しかも私の予測ですが、景気停滞の厳しさが増している中では、数日は売り気配で値がつくのはおそらく、次の週の火曜日か水曜日になるでしょう。最近の状況では、プラスの情報にはさほど反応せず、又、反応しても、しばらくして、行って来いの状況です。一方、悪材料には、過敏に反応しています。今回の報道で実際に使用している人たちは不安を感じたと思いますが、大した問題ではないようにも思えますが、すなわちこの種の品質チェックについて、今回の事件ではじめて知ったのですが、三一五個中ピンホールが三個以上あると不合格となるそうです。逆に言えば、三個あっても良いことになります。それが今回は六個あったからと言うことで回収騒ぎになったわけです。一般紙には、この事実を書いているだけでしたが、皮肉なことに、スポーツ紙に、かなり詳しく、避妊及びエイズ予防には問題がないことを衛生研究所のコメントとして、書かれていました。実際的には、粘度や拡散、泳動速度から、医学的にも工学的にも危険性は無いと見て良いと思われます。しかしながら、品質管理やPL法から見て、この会社は、かなりの信用失墜は免れないでしょう。実は、ウレタンの薄膜に関しては、この種の用途以外にも、ピンホールがゼロに出来ず、問題になっていたとのことです。それをピンホールフリーに製造可能であり、しかも、前号で書いたような宣伝文句で若者から中年まで、飛びついたのです。同業他社の最大手メーカーは、ピンホールの問題を解決できず、遅れをとっていたようです。しかし、ここで形勢が逆転する可能性があります。相手の信用が回復するまでは、かなりの時間を要すると思われますし、この機会に相手企業が品質の完全なものを出せば、これまで品薄状態になっていたことからしても、新規需要開拓や、宣伝費も余りかけないでも、(問題を起こした会社では既に五億円の宣伝費をかけていたとのことです。)皆飛びつくのではないでしょうか。 と言うことで中年以降の関心の薄れてしまった方々には、同業他社の株の先回り買いをお勧めいたします。「人の裏道花の山」

  新聞に発表された次の日、その会社からリクルート用の情報がインターネットに出されたので転記します。 最近の当社関連報道で驚いた人も多いと思います。内容を要約しますと"当社が発表したポリウレタン製コンドームの、未出荷分の一部を神奈川県が検査したところ、不適合品が数本発見されました。これを受けてこの商品の将来性を重視した結果、自主判断によりポリウレタン製のコンドームの全量を市場より回収して、発生原因を徹底的に究明すべく、記者会見及び新聞による消費者告知を行った"という内容です。この商品は、当社が世界に先駆けて三四年間に渡って研究開発を進め、本年二月に日本で初めて発売開始した次世代コンドームで、以来爆発的に売れた期待の新商品でした。商品に同封された消費者アンケートでも、圧倒的に好意的な感想が消費者から寄せられるほどで、売り切れ状態にありました。当社は、六四年前に日本のラテックスコンドームのパイオニアとして生まれ、以来世界八〇カ国に一五〇億個以上販売され、その品質管理では、ぬきんでて高い評価を得ており、世界一を自負しておりましたので今回の件については、当惑していますし、大変残念に思っています。このたび回収した商品は速やかに検査をし、又生産管理体制も検証することで、できるだけ早い機会に原因究明をし、万全の体制を構築して再出発したいと社員全員考えています。当社は六四年間、一度も欠損を出したことの無い優良会社で、このプロジェクトについても借入金なしで設備を整えました。従って、貴兄が依然当社に興味を持っているなら自分なりに当社を研究し、当社に将来を託す価値があると判断したら是非当社を受験してみて下さい。時代はこれからますます厳しくなると予測されます、この時代に生き残るには、他社にない何かを持った企業のみです。当社は自分で考え自分で行動する若い社員を待望しています。貴兄が行動的で柔軟な思想を持っているタイプなら当社はまさにぴったりの会社です。メールで再びエントリーして下さい。