雑感シリーズ

関東学院大学  本間 英夫



エレクトロニクス実装学会を終えて



3月21日から23日までの3日間、我々の大学でエレクトロニクス実装学会の学術講演大会が開催された。候補として挙げられたのはちょうど1年前である。多くの大学、特に私学では大学の宣伝になると学会やシンポジムの開催を歓迎している。

 2年前にも、表面技術協会の春の学術講演大会を引き受けたが、その時は何か自信と誇りのようなものを感じていた。というのは、表面技術では本校が老舗?であり、表面処理産業にかかわっている人であれば我が大学を知らない人はいない。すでに500名以上のOBがこの産業界に携わり活躍しているからである。

 したがって、講演大会の参加人数はある程度予測できたし、参加者に納得いただけるであろう自信もあった。準備期間をいれて3年前から学長、学部長、事務方に遺漏のない様に色々、事細かにお願いをした。結果は参加者をはじめ、協会の役員からも不満は無く満足して頂いたようであった。

 さて、今回は同じ中堅学会ではあるが(表協は会員数約4000名、実装学会は約3000名)エレクトロニクス実装に関する学会であり領域が広い。

 我が研究室で注力している表面処理(特にめっき)は、この領域では要素技術として、ほんの一分野にしか過ぎない。この学会の研究分野は配線板製造技術、材料技術、半導体パッケージ技術、回路実装設計技術、信頼性解析技術、電磁波特性技術、環境調和型実装技術、光回路実装技術、マイクロメカトロニクスなど分野が多岐にわたっている。まだ新しい学会であり、今までは都心に近い大学で講演大会が行われてきた。都心から、かなり離れたところで開催するのは今回が始めてである。

 設立当初からこの学会のお手伝いをしてきたので、1年前に事務局から講演大会の開催依頼があったときは、若干の不安はあったが是非成功させねばとの思いがあった。事務局が依頼しても、学会の理事会での承認を得なければこちらも正式に動けない。

 5月に理事会で正式に本学で開催することが決まり、それから直ぐに大学に対して要請書を学会から作成してもらい準備に入った。

 今回は、小生が学会の庶務理事をやっていた関係で、学会の役職者が講演大会の実行委員長を兼務するのはどうも筋が通らないということで、同僚の山下先生に実行委員長をお願いした。

 山下先生には、今後、伸びる領域だからと、数年前にこの学会に入会していただき、本学会に関連する研究テーマもみつけていただいたし、前回の横浜国立大学で行われた時も実行委員として活躍して頂いた。現在では我々の研究室と共同研究も一部行っている。同じ大学の中で、共同研究を行うことは極まれであるが、これからは従来の蛸壺?研究ではなく、お互い協力して新しい領域ににじみ出ることが、我々研究者に必要なことだと常々思っていた。

 我が大学には、光化学を専門とされている新進気鋭の教授もおられるし、また有機材料を専門としている助教授もいる。これらの方々にも是非、本学会に入会していただき活躍の場を広げていってもらいたいと願っている。

 さて、学内の事務方との折衝は、山下先生と小生で昨年の8月頃から始めた。どちらかと言うと、せっかちでオッチョコチョイの小生と、じっくり綿密に計画をする山下先生、いいコンビだったと思う。大学の役職者、事務方には小生のほうから渡りを先ずつけることにした。

 小生のほうが少し山下先生よりも先輩なので、事は上手く運んだ。前回の表面技術協会の時は、大学からの寄付を頂いていた。冒頭にも触れたように、ほとんどの私学では学会を開催するにあたっては、少なからず援助している。

 今回は、大学も冬の時代に突入して、無理にお願いするのもとの思いから、当初は援助のお願いは考えていなかった。しかしながら開催数ヶ月前になって、これから頻繁に開催される大会運営上の打ち合わせ、会期中の会場整備、受け付け、進行係りの動員等、色々イメージしてみた。

 特にこの学会は、産業界からの参加者が多く、テーマによっては一つの会場に400名以上ドット押し寄せることが多い。過去の例では何度も会場を変更していた。その際は間髪をいれず会場変更の案内、設営を迅速に行わねばならない。今回も同じ事が生ずることが予測された。援助して頂ければ、アルバイトの学生も動員しやすくなるので、結局は今回もお願いすることにした。

 さて、講演の申し込み締め切りは12月の末であった。申し込みが始まって、例年から見ると出足が悪かったらしく、事務局から講演申し込みが少ないようですと連絡があった。

 大体この種の申し込みは、大学の入学試験の願書や手続き締め切りとほぼ同じで、締切直前にどーっと押し寄せるものである。それでも事務局が心配しているし、折角、我々の大学で開催されるのに、発表件数も少なく貧弱な内容になってはいけないと、初めての試みであるが、思い切って、研究室から13件まとめて講演をすることにした。

 今年の3月までは、ドクターが4名、マスターが5名そして学部生が12名であったので、何とか質を落とさないで発表できるであろうと踏んだ。山下先生の研究室からも1件発表することになった。

 なんと締め切りが終わってみると、発表件数が約180件で新記録だという。うれしい悲鳴というか、これだったら我々の研究室の発表はいつも通り4、5件にしておけばよかったのにと少々悔やまれた。13件も発表することにしたのだから、これからの2ヶ月は恥ずかしくない発表をするための努力をしなければいけないと新年早々決意した。

 さらに今回は、小生が特別講演をやることに決定したので、関東学院大学として発表する件数は14件にもなる。

 実装の最先端を担っている技術者の多くが参加する学会で、果たして我々の発表が、また特別講演が通用するのだろうか?満足いただける内容になるだろうかと正直、不安な気持ちであった。

 1月の中旬から、プログラム編成が始まった。小生は、実行委員のメンバーではないので、全てプログラムはお任せするしかなかった。印刷にまわる前のプログラムを見せてもらったが、初日、朝の10時過ぎから小生の研究室の発表がずらーっと5件も並んでいる。昼食時間1時間の後、1時から小生の特別講演。関東学院オンパレードだ。

 もしも、小生が実行委員のメンバーになっていれば、小生の研究室の発表は、キャンセルがあったときの穴埋めや、朝一番、または一番最後の発表にして、バッファーの役割に使うのもいいのではないかと思っていたのであるが。

 プログラム編成の結果、コアタイムに連続の発表になっているので、学生の発表は見向きもされず、他の2つの会場が満杯になるのではないかと、逆に心配になった。また小生の特別講演も魅力が無く、参加者は昼食の延長で、休憩時間として利用するのではないかと、これまた不安。もし最悪その様になったら少し恥ずかしいなとの思いがあった。

 まー、現実にその様な状態になっても、学生の発表も、小生の講演も、聴講された皆さんに満足していただけるように努力しなければと、学生の発表と小生の講演内容をいつもよりも吟味した。

 さて、いよいよ大会当日がスタート。

講演が始まる5分位前、200人以上入る会場が未だ半分も埋まっていない。どの学会でも朝一番はこれが当たり前だが、最初の発表は企業の発表であり、しかも配線板の専門領域ではリーダー的存在の方々の発表である。もう少し集まってもいいのだがと不安になる。

 講演が始まって5分過ぎから、ふーふー汗をかきながら受付に来る人が増える。京浜急行で事故があり、電車が15分くらいすべてストップしたとのこと。講演を遅らせるわけには行かず粛々と進める。最初の講演の終わり頃になると会場はほぼ満席になってきた。

 いよいよ、我が研究室の学生の発表がはじまる。小生も気になるので、本部からその会場の様子を見に行っていた。最初の発表が終わった直後に会場から、どれくらいの人が、他の会場に移るか心配である。誰も移らない。逆にどんどん増えだした。小生は安堵し、本部に戻る。

しばらくして、学生が本部に詰めている小生の下に小走りで駆け込んできた。会場を変更したほうがいいのではと。

 直ぐに小生がその会場に走り、様子を見る。確かに立っている人の数が多くなっている。学生の発表を、こんなに沢山の方々に聞いていただいて、学生も自信になるし、小生自身が内心ほっとした。

 3会場同時平行で講演が進められているが、もう一つの会場で実装の関係のテーマが進められていたので、少しくらい立ち席があっても参加者はテーマ毎に動くだろうと、その場は会場変更をしなかった。

 本部に小生が詰めていたので、学生の発表はほとんど聞けなかったし、いつもは質問で学生が回答に困ったら、小生が回答をするようにしていた。今回は全て学生に任せなければならなかった。逆にこれが学生のとってはいい経験になった。昼の発表が終了するまで学生が発表した会場は満席であった。

 昼休みに入る。どーっと3つの会場から堰を切ったように人が溢れ出し、皆、食堂へと向かう。総勢で500名を越えている。実はメインの食堂が改装中で、今回は軽食を販売している館を使用するしか手が無かった。

 案の定、長蛇の列、メインの食堂の改築が終わっていればと悔やまれる。1時から小生の特別特別講演が始まるが気が気でない。時間通りに始めねばならないので司会の先生が、1時きっかりに小生の紹介に入った。

 400人入る部屋で6割程度の聴衆、テーマはマイクロファーブリケーションとめっき 副題をプラめっきから半導体のめっきまでとした。

 先ず大学の歴史から話を紐解き、すでに50年近く前に、現在注目されている技術のルーツは本学であると話を始めた。その話を始める頃には、ほぼ満席状態になっていた。

講演の内容を次号で紹介することにする。

 3日間の会期で延べ人数が1600名を越え、事務局の話では過去最高を記録したとの事。

研究室の学生を総動員した。卒業式を間近に控えているというのに、学生は不平一つ言わず、よく手伝ってくれた。彼らにとてもいい経験になったと思う。

とりあえずほっとした。