雑感シリーズ

関東学院大学  本間 英夫



就職率とフリーター



 ベア凍結、賞与ゼロ、年功序列から能力給へ、終身雇用制度も崩れつつある。最近の新卒者の就業率に関しては、先月号にも紹介したように全国平均で65%程度であろうといわれている。就職も大学院にも進学しないで、アルバイトで生活費を稼ぐ人をフリーターといい、大学を評価する上でフリーター率なる用語が使われだしている。

10年位前までは大学を出れば必ずどこかに就職できる時代であった。しかし、景気の後退とともに就職先も募集人数も大きく減少し、学生の就職に関する考えも変わらざるを得ない状況である。

従来のフリーターは一般の就職に飽き足らず、自ら生き方の選択肢として捉えられてきたように思える。しかしながら、就職が厳しくなってきてからは、必ずしも積極的な選択の結果ではなくなってきている。

 4年生になると、文科系の学生はゼミや授業はそっちのけで、連日就職活動に飛び回る。工科系も企業の技術者の採用は、大卒から大学院の採用にシフトし、同じく落ち着いて卒業研究に取り組んだり、授業に専念できなくなってきている。中には何十社にもエントリーしたが就職できなかったという悲惨な状況もある。

 担当の先生のケアーが及ばず、学生もそのうちに精根尽きて、フリーターや、卒業後に専門学校に進むようである。

 就職率や進路は大学によって、学部によって、又研究室によって大きく異なる。大学にとって、学生の就職率は大学の人気の重要なバロメーターであり、就職が出来ない大学であるとのレッテルが貼られてしまうと、存亡の危機に曝される。

 したがって、就職課の事務員や就職担当の先生は、就職率向上に腐心している。どこの大学でも、就職に関する模擬試験や模擬面接まで導入しているようだ。

 以前、このシリーズで学生の就職動向に触れたことがあるが、こんな対策でいい学生が育つわけがない。就職率を上げたいのであれば、付け刃的な姑息な手法はやめ、ゼミや卒研の担当の教員が、学生の資質をあげるように育てなければならない。

 

学生の指導方法と学会への積極参加



すでに企業によっては、大学のこの種のやり方を見抜き、大学の知名度で選ぶのではなく、きちっと育てている研究室を教授枠として指定し、力のついた学生だけを採用するようになってきており、その精度はかなり上がってきている。

 学部や領域によって、どのように学生を育てるかは異なる。例えば我々のような工学部の場合は、産業界との連携を意識して取り入れ、学生毎に指導をしなければならなくなってきている。しかし、産学の連携がこれだけ社会的に叫ばれているにもかかわらず、実行に移せない先生が多数いるようだ。

 何も難しい事ではなく、工学部であれば教員としての研究活動のベースである学会活動を、もう少し積極的にやるべきだ。産業界との接点は学会活動を通して生まれる。産業界が何を今要求しているのか、大学として何をやればいいのか、どのような学生を育てればいいのか、色々な角度から教えられることが多い。学会活動に積極的に関わってもらいたいものである。

 学会活動を積極的にすべきだとアドバイスすると、あいつは研究ばかりやっていて、大学のことはちっともやらないとの批判をする始末。

研究と教育は一体であり、少なくとも工学部の教員であれば、年間数回は学会で成果を発表し、また力のついた学生には発表させるよう努力するのが常識ではないか。さらには、それらの成果を最終的には論文として投稿するのが妥当であり、また大学人として社会に対する大きな使命であることを忘れてはいけない。その実績を企業に示せば学生の就職は難しくない。

何も研究、研究と亡者になっているわけではない。そのような感覚では、いい研究が出来るわけがない。卒研生も大学院の学生も、自ら、わくわく充実感を持って研究し、実力をつけていけるような研究に専念できる環境を構築すればいい。

我々の研究室では、毎朝の輪講会に始まり、昼休みは皆と食事をとりながら、政治経済や特に意識しているのは、ケーススタディーと称して身近な事例や、様々な問題を取り上げ論議している。

 先ずは研究ありきではなく、年間を通しての人間教育がベースなのである。この種の研究室の日々の行動を、本間イズム、本間教と評した人がいた。教員としてこの常識的なことが出来ず、影で批判ばかりしているようでは、これからは生き残れないであろう。



学生の能力を上げる本来の教育を



1月の下旬に3人のドクターの公聴会が行われた。公聴会には産業界から10名くらい参加されるのが一般的である。ところが有り難いことに、これまで小生の研究室から5人のドクターが出たが、毎回100名近くの方々が参加されている。

 今回は、あらかじめ出欠はとらず、メールで皆様に声をかけるだけにとどめた。しかしながら、これまでと同じように100名近くの方々が公聴会に参加された。

 この公聴会当日、さらにその後数日の間に、来年の学生の就職の予約が何社からも入った。

 おりしも、先月から今月にかけて、受験生は併願で合格した大学の中から、どの大学を選択するか決めているところである。

 従来は、合格後に納入した入学金は一切返却されなかったが、本年度から、本学を含め多くの大学で入学辞退者に返却する制度が採用された。したがって、今まで以上に大学は選ばれる時代になり、勝ち組みと負け組みが峻別される。各大学では生き残りをかけて本格的な改革と就職支援に取り組んでいる。

 当然ながら、企業は確実に実力をつけた学生だけを厳選し、採用するようになってくる。現実を直視すると、大企業ではほとんど大学院修了者を採用するようになってきている。

すでに主要大学では、工学部の学生はほとんど大学院まで進学するようになってきた。したがって、学部卒では自分が専攻してきた学科に関係なく、ソフトやサービス業が主要な就職口になってきている。

表面処理関連の企業の技術者の採用はどうなのか。上述のような大卒の就職のトレンドからみて、これから技術力で勝負しようとする表面処理関連企業は、考えるまでもなく学卒者の採用の願ってもないチャンスではないか。もし学卒者を採用して、その学生がかなり将来を担ってくれるようであれば、社会人入試制度を利用して、次年度から大学院に入って、更に力をつける方法は目的意識も高く力がつくであろう。

 これまでに、研究室への社会人の大学院生としての受け入れは10名以上になり、その中で博士後期課程まで進んだ人が8名いる。さらに、この4月から博士後期課程に2人の社会人が入学してくる。大学院修了後は、皆それぞれの企業に戻り大きく貢献しており、本方式が高く評価さている。