雑感シリーズ

関東学院大学  本間 英夫



これでいいのか就職活動



10月解禁とされていた就職協定は、これまで全く守られていなかった。したがって、本年度から協定が廃止され、その結果、昨年まで実質的には5月くらいから盛んであったリクルート活動は、本年はさらに前倒しの、3月くらいから活動が始まった。

最近ではほとんどの企業がHPを開設しており、学生が自由にエントリーできるようになっている。名前の知れた大企業では、数百名の採用に対して、何万人もの学生がエントリーしてくる。会社説明会に始まり、大体四から五段階の篩にかけ、内定に至る。私の知っている幾つかの大手企業でも、数千人がエントリーし、先ずは会社説明会、続いてSPIを中心とした基礎学力試験、そこでほとんどの学生がふるい落とされると聞く。

また、ご本人から了解をいただいているので紹介するが、我々の業界の中で、最近NHKを初めとして、民間のテレビ局で幾度も紹介されたヱビナ電化工業株式会社では、すでに本年100名以上の応募者があったという。学部が7割、大学院生が3割。応募者全員と面接をし、採用したのは一桁と、海老名さんは言っていた。

このように多くの企業では、おそらく5月から6月の時点で、内定者を決めている。しかしながら、新規学卒の雇用は大きく縮小しているので、ほんの一部の学生しか内定しない。

それ故、ほとんどの大学の研究室やゼミでは、今まで以上に学生の就職活動が長期化し、研究活動は停止状態に陥っている。四年生になって初めて学生生活の中で充実した日々を送ることができるはずなのに、これでは大学生活の中で一番意識が高く、大いに能力がアップする大切な期間を無駄に送ることになってしまう。学生にとっても、教える立場の教員にとっても、また受け入れる企業側にとっても、さらには、大げさな言い方をすれば国家にとっても大きな損失である。

高度成長期の際、企業はあまり学生には注文をつけなかった。誰でもいいから、とにかく人が足りないからと、どんどん採用が決まったものである。

しかしながら当時の学生は、中年を過ぎ、現在早期退職をはじめとしてリストラの対象になっている。企業の人員構成もピラミッド型から中年層の中膨れのいびつな形になってきている。しかも、多くの製造業は中国本土にシフトし、これからの若者の就職形態は大きく変化せざるを得ない状況である。

そのような状況下で、リクルート活動をする学生は右往左往、大学も打つ手なし。

最近、「インプットにばかり精を出すのではなく、アウトプットをきちっとしないと、市場から去らざるを得なくなりますよ」と、大学の会議で声を大にして訴えているが、先生方から冷ややかな目で見られるだけである。

来春から国立大学が独立法人化され、いよいよ大学の生き残りをかけて差別化が始まる。魅力の無い、またフットワークの悪い大学は淘汰される運命にある。とくに、文科系の学部は学生のアウトプットを真剣に考えないと、目の前に危機が迫っている。

要は、特徴のある魅力のある大学作りに専念し、きちっと学生を育てていかないと、受験生からも、父兄からも、高校の先生からも、産業界からも見放される。

我々の大学では、企業より会議が多く、教員一人でいくつもの委員会のメンバーになっている。私自身も7~8の委員会のメンバーになっている。会議に出席することで自分の教員としての使命を果たしていると、勘違いしている教員が実に多い。

一番大切なのは、学生を如何に育てるかである。大学も企業も、変革期は迅速に対応していく必要がある。日本もこの二年間、構造改革の名の下に改革が進められてきたが、フットワークが悪く、経済とのバランスもとれず、どんどん奈落のそこに突き落とされているような感覚に陥る。



企業への注文



3月号に書いた「就職率とフリーター」のなかで、教授推薦の枠が増加してきており、学生に対して熱心に教育、指導しておればチャンスだと書いたが、内心は本年マスターの二年生を5人も抱えているので彼らの就職がどうなるか一番心配であった。

幸いなことに、3月から、幾つかの企業から教授推薦枠の申し出を頂き、本年は4月末で、すでに4人が内定し、また最後の一人も、5月中旬に内定した。大学院の学生に対しては就職協定がなくなったことで、一年次の終わりから二年次のはじめに内定すると、その後の一年間は、就職活動から開放され、研究活動を通して知識、能力の向上に専念できる。したがって、大学院の学生にとっては、卒業研究、その後大学院に入ってから、ほぼ同じテーマーで研究活動に専念しているので、3月くらいからの就職活動が時期的には良いと思われる。

ところが、四年生の求職活動が3月や4月ではあまりにも早すぎる。彼らはまったく自分の学んできた領域の専門性を理解していないし、将来、どの領域が適正なのかも掴んでいない。

したがって、学部の学生に関しては、早くても7月から8月頃に採用試験を実施するようにお願いしたい。その頃になって、彼らはやっと卒業研究が理解できているし、推薦する先生も学生の適性を把握できる。

しかも、今までのように何度も篩いにかけて、数ヶ月学生を引き止めておくようなやり方はやめて、1,2週間くらいで決着をつけてもらいたいものである。



企業収益V字回復?



上場企業の03年3月期決算発表が5月末で発表を終えた。調査結果によると、東証一部上場企業の売上高は、深刻化するデフレを反映し前期比0.8%増にとどまったが、連結経常利益は、前期比で15%増加した。
 経常利益が増加した企業は全体の65%以上。製造業では16業種中、14業種が増益を達成しており、業種別では精密機器の50%、自動車の30%の増益とのこと。しかしながら、これらの増益はほとんど賃金カットや人員削減などのリストラの効果が大きく効いた回復であり、サラリーマン、特に中年層は苦々しく思っているだろう。また、せっかく企業が本業で利益を上げても、代行返上で利益が相殺されるどころか赤字も出ている。したがって、業績回復の実感は極めて乏しいといえる。
 さらに、新型肺炎(SARS)の被害拡大、自爆テロが続いており、世界的な社会不安から先行き懸念材料は多い。