雑感シリーズ

関東学院大学  本間 英夫



大学の舵取り

この4月から国公立大学が独立法人として動き出した。特に科学技術分野では、「技術立国日本危うし!」世界に通用する研究拠点をと各大学にCOEの申請を促し、また、TLO、ハイテクリサーチセンター、学術フロンティア、と体制が整いつつあるようだ。さらには産学連携をベースにして新技術、新産業の創出が期待されるなかで大学と民間との共同研究や大学発ベンチャーは急速に増加している。政府は大学発ベンチャーを1000社育成する方針を打ち出しているが、米国などに比べると数の上でも質的にも見劣りしている。

ここまでは箱物作りであり、極端な言い方をすれば、お金をかけて環境を整えたわけだ。

これからが本番、国公立大学のこれまでの研究体制は基礎研究が中心で、応用を視野に入れる研究は軽視される傾向があった。大学の研究もこれからは研究者自身が応用分野も常に視野に入れて、研究を行うことが望まれている。

全ての研究が応用を意識しなければならないとの風潮にはいささか疑問を感ずるが、基礎研究と応用研究さらには、実用化を視野に入れて全体的にバランスよく研究をしていかねばならない。

40代から学会活動に関わってきたが、当時、企業出身の先生方は大学に入って、かなり戸惑いがあったようである。しかしながら最近、これらの多くの方々は、大学の改革の中で、学会および産業界との連携活動は勿論のこと、大学内においてはキーマンになり、活躍されている。

これまで大学の教員は、卒業するとすぐに大学の研究職につき、産業界で働いた経験のない人がほとんどであった。どちらかというと、産業界とのかかわりに興味のない人たちであった。 

大学内において、研究および教育の中心的な役割を担うのは50代の先生方になってきている。50代は学園紛争世代と言われ、その年代の先生方は、産学協同路線反対との運動に対して傾倒したかどうかは別として、産学連携に関して拒絶反応を持っている人が多い。また、この年代は体制を痛烈に批判し、相手の主張を聞こうとせず、仲間意識は強いようだが、自分達の考えを押し付ける。年長者を敬うより、常に体制を批判する。大学内ではそれが通用したのである。

したがって若干、誇張になるかもしれないが、この年代の人たちが仕切る会議は、冷たい雰囲気が漂う。まさに、その雰囲気を打破すべく企業出身の教員が採用されるようになってきたことにより、自分の研究の殻に閉じこもっていた教員の意識変革につながること期待している。

大学は産業界の下請け機関ではないぞとの批判もあるが、産業界との連携は独りよがりにならず、ニーズを知り如何にオリジナリティーの高いシーズを見つけ出し教育と研究に生かしていく努力を怠ってはならない。



大学発ベンチャーは成功するか?

日本における大学発ベンチャーの数は約260社と、米国の10分の1程度にとどまっているといわれている。

日本経済が強かった70年代に経営学修士(MBA)講座を大学に設けるべきだったとか、MBAがあれば世界中の学生が日本の大学に集まり、国際化とともに大学間の競争も進んでいたはずだとか、大学に優秀な研究員と学生を呼び込むことができれば、大学の収益が確保され、ベンチャー企業の創出にもつながると新聞や雑誌にコメントされている。さらには、米国の大学では収入の5割をベンチャー投資などの運用益が占め、中国でも大学教授が企業経営者を兼任することで研究費を稼いでいる。さらに、筑波学園都市中国版と称して、ベルリンに匹敵する広大な土地に研究拠点を計画との事。

日本の大学の収入は授業料依存度が高く、国公立大学では平均75%、私立大学では90%を超えている。これまでは、授業料および国の助成金に依存してきたため大学人には研究費の確保との意識は育たなかった。しかしながら、国は借金漬け、それに伴う助成金の大幅削減、また少子高齢化による受験料収入の大幅な低下、さらに数年前から押し寄せてきた受験人口の低下、数年後にはさらに何十万人も受験人口が減り大学が淘汰される時代に入るといわれている。当然、授業料収入は大きく低下するため、これからは特に工学分野の先生は研究費を稼いでこなければならなくなってきた。

大学発の技術ベンチャーに限定した場合、政府目標である1000社創出の達成は容易ではないといわれている。近視眼的に応用研究だけを大学がやっていたら日本は技術大国から並みの国以下に落ち込んでしまう。したがって、基礎研究は大学にとって絶対に必要だが、利益に直接結びつく応用・商品開発研究も進める必要がある。その際、大学は営利活動を追求すべきでないといった意識は変えねばならない。外で稼げる人は稼ぎ、基礎研究に集中している人にも一部の資金を還元するなど、お互いの分野ごとに協力体制で臨む必要がある。その意味では大学発ベンチャーは是非成功させねばならない。



収益源としての仕掛け

収益源として期待されている技術移転機関(TLO)は、運営に多額の費用がかかる。また、大学に帰属する特許が生み出す環境はまだほとんど育っていない。大学での特許取得ランクを何かの雑誌で見たことがあるが、意外と申請の数、取得の数が少ない。これは、特許を申請することは大学人にとってインセンティブにはないためである。

事実、TLOの仕掛けが作られた後も、まだまだ収益面では機能していない。米国でも約250あるTLOの半分が採算に乗っていないとのこと。産学連携の本格的推進には、地域や支援企業とのコラボレーションが必要であり、TLOが構築されたからと、これのみに依存しているようでは、事はうまく運ばないだろう。

多額のリターンが期待できるのはナノテクやバイオテクノロジー分野であると、国は重点的にこれらの分野に注力しているようである。

更には、企業との連携においてこれまでの委託研究の契約やライセンスに関して数百万円程度から、それ相応の金額を大学に支払うなどの意識改革が必要になる。

大学は企業の下請け機関ではないとの認識の上に立ち、対等な立場で大学・企業間で人材の流動化をさらに進める必要がある。



表面工学研究所の運営状況

さて、こんなコメントをしておきながら関東学院ではどうなのだろうか?本学が日本において産学協同のルーツであり、キャンパス内に木工工場とめっき工場を持っていて、収益の一部を学院に還元していたことを知っているのは、現役の先生の中で小生しかいなくなっていた。

したがって、関東化成の役員および研究所の副所長を兼務してくれている豊田君を含め、一昨年7月下旬、表面工学研究所設立にいたるまで、大学の経営陣に理解を仰ぐのには多大の努力を払ってきた。実質的には設立まで確か3年くらいかかっている。今なら、おそらく即座にゴーのサインが出るだろう。当時は、これからの少子化で大学の経営が大変になるぞと、一部の私学、特に工学系の単科大学では危機感をもち改革の機運が高まってきていた。

しかしながら、我々の大学では当時はまだ危機意識に乏しく、研究所の設立など、なかなか理解してもらえなかった。

関東化成の敷地内、しかも二十五年以上前になるが、小生がドクター論文をまとめていた中に、無電解銅めっきの物性の改善、マイコンによるプロセスコントロール、電解法による新規なリサイクル技術があった。これを実際のプロセスとして応用したのがKAP-8である。関東化成の連中は80年代を制するKANTOKASEI ADDITIVE PROSESSの頭文字をとって命名しているがKは関東化成ではなく関東学院だと今でも連中には冗談を言っている。その技術は当時大いに注目され、アメリカのトップ企業および、いまや韓国のプリント製造業のリーダー企業にもライセンスを供与している。実はそのKAP8のラインがあった工場の2階のフロアーに今回研究所を設立したのである。

従って小生にとって見れば、現役最後の奉仕活動との意識が高く、学内では同僚を始め経営陣にもなかなか理解を得られなかったが、使命感をもってやってきたのである。前号にも記したように、やっと拡張工事も終了し実験室3部屋、クリーンルーム二部屋、機器分析実験室2部屋、スタッフルーム、応接室、50人程度収容できる講義室が出来上がり実際研究の成果も上がってきた。

現在ドクターコースには企業から4名、マスターからの進学者1名の計5名、マスターコースには2年生4名、1年生4名、計8名、卒研生9名、合計22名。この4月からは有機関係および電気化学の研究室の卒研生、マスターも研究所の施設を利用するようになったので学生だけで30名以上になる。あと研究所の専任研究スタッフ2名、兼任スタッフ3名、教員が4名の陣容で着々と成果を上げつつある。



喫煙について
異性の喫煙を「クール」だ、「大人っぽい」とプラスイメージでとらえる人は全体1割にとどまることが大手医薬品メーカーのアンケート調査で明らかになった。調査は20代、30代男女の非喫煙者、喫煙者各50人、計400人を対象にインターネットを使って実施され喫煙する異性の印象では不健康が最多の32%。「たばこ臭い」(21・5%)、「かっこ悪い」(5・3%)、「時代遅れ」(3・8%)と続き、「クール」(4・3%)、「大人っぽい」(3・3%)、「かっこいい」(1・8%)、「自立している」(0・8%)などの好イメージはいずれも下位で、合計しても1割にとどまったとのこと。一方、喫煙派男性の36%、女性の52%は「何も思わない」と回答。喫煙者は他人の喫煙にも関心が薄い様子がうかがわれた。 また、「結婚するなら吸わない相手」と答えたのは男性で70%、女性で50.5%に上った。

30年前は私自身も含め、研究室のほぼ全員がタバコをすっていた。10年前では約半数になり、その後どんどん減り現在25名中喫煙者は3人である。学校内の喫煙場所は大きく制限されるようになり、全館禁煙、喫煙場所は屋外に数ヶ所のみとなっている。先日、関越自動車道のインターで休憩をとったが環境宣言と施設内は禁煙、かろうじて一箇所喫煙室があった。2平方メートルくらいのガラス張りの部屋の中に灰皿が置かれ、動物園の檻か、ショウウインドーのような感じ。灰皿はまったく汚れがなく、誰もそこに入って喫煙していた形跡は見られなかった。禁煙を促すうまい方法だなと感心したが、益々喫煙者は追いやられている。どこかの国では自宅以外全て公共の場所は禁煙になったとか。愛煙家の皆様、百害あって一利なしこの際、思い切ってやめましょう。