雑感シリーズ

関東学院大学  本間 英夫

景気動向

政府、日銀は引き続き景気が踊り場を脱し緩やかな成長軌道に入ったと先月に続いてコメントしている。すでに景気動向の先行指標であるダウ平均株価はそのあたりは織り込み済みで、昨年までは1万1千円を挟んでこう着状態であったが、今年の6月頃から着実に値を上げ、10月中旬には1万4千円を覗う勢いであった。

さて、われわれの業界はどうだろうか。先ごろ関連企業の所得ランクが業界向けの新聞に発表された。一部で順位の入れ替えはあるものの、利益を出している企業は例年通りほぼ同じであった。またこの2年間の所得は押しなべて大きく上向いているようだ。

そういえば、2年位前までは、表面処理関連業界の経営者の多くは仕事がなくて大変ですよといっていたが、最近はあまりこの種の話題は上らなくなった。むしろ技術力の向上がキーになると技術者の養成に力を入れだした。

ハイテクノの上級講座は開講してすでに40年になるが、10年近く前だったか企業は軒並み収益が上がらず、受講生が大幅に定員割れのような状態に陥ったことがある。当時30年も続けてきた講座だが隔年開講やむなしとの提案もあったが、それを退け、講師の見直し、講師料の削減、カリキュラムの再編成など斉藤先生を中心に大きな努力が払われ、中断することなく講座を進められてきた。それが昨年からは受講生が大幅に増え、本年も募集期間中であるが出足がいいようだ。これこそ景気の先行指標ではないだろうか。

各企業では新規採用を抑制してきたが景気の回復とともに、昨年あたりから多くの企業で新しい人材を確保するようになって来ている。さらには本講座では卒業研究と称して、各自が1年間かけて調査研究を行うことになっており講座の最後の2週間は研究発表会を開催している。

10月中旬から下旬にかけて発表会が行われたが受講生のほかに関係者が集まり例年になく盛況で教室が満杯になった。製造業では技術が命であり経営者も意識が大きく変わってきているように思える。



日本の製造業がトップを維持するためには

戦後の日本経済復興は当時、欧米の技術を取り入れ、創意工夫、改良、改善のもとに大きく成長してきた。しかしながら、情熱を傾けてきた多くの戦後のベビーブーマといわれる世代の技能者、技術者はそろそろ大量に定年を迎えることになる。しかもこれからの日本の製造業は、自らが発想し創造していく高度な技術力が要求される。

これまで何度か技術の伝承の重要性を説いてきたが、果たして各企業でスムースに伝承されてきているのか不安だ。不安の要素は多岐にわたり自分自身も学生の指導に関してそのあたりを意識して表面処理の基礎から指導していかねばならないと来年度から少しやり方を変えていくことにした。



いかに技術力を高めるか

これまでの高度成長期、しかも西欧諸国に追いつけ追い越せの時代は、先進諸国で扱っている同じ装置を導入し同じ薬品を購入すれば何とかなった。しかし成熟した製造技術では、どこでも誰でも同じ品質のものを作ることができるので、もはや品質というよりもコストの勝負になってきている。さらにはグローバル調達、現地生産と日本の物づくりの優位性がなくなるのではと不安になる。 

最近、表面処理に関する基本的な問い合わせがあるが、薬品メーカーも含めて次代を担っていく技術者の再教育がぜひとも必要であると痛感している。

最近の学生を見ているとよく言われるマニュアル人間、まさに的確に最近の若者をあらわしている。情報機器を中心に多機能化した製品が出回り、それらを駆使するためにはマニュアルに頼らざるをえない。

一昔前は一製品に一機能、せいぜい数種の機能が付加されているに過ぎなかった。したがって自分でメカを熟知し、自分なりに愛着をもって直したり、いろんな工夫ができた。しかし最近の傾向として毎年のように、いや数ヶ月毎に新製品が発表になり、それに飛びつき早速マニュアルに首っ丈になる。彼らはあの分厚いマニュアルをこれまでの製品の延長だからとポイントだけをザーッと見て、目的の製品を使いこなすというか使われている。

規格化された物づくりではこのマニュアルが必須のアイテムであるが、コンスタントに良品ができているときはこれで十分である。ところが不良が出だすとこのマニュアルは通用しない。われわれの会社にはちゃんとトラブルシューティングのマニュアルがあるから大丈夫だという人もいるだろうが、ではなぜそれでも不良の山になるのだろうか。

現在の企業における技術研修や技術教育は受験勉強のようなハウツーになっていないか、ちょっと企業の経営者や上司はここで一呼吸入れて考えてもらいたい。

来年度からハイテクノとも連動し実習つきの講座を表面工学研究所で企画立案中である。ハイテクノの講座ではプリント基板を中心とした実装関連のかたがたの受講が少ないようだがこの領域は日本の産業界の中でもサポーティングインダストリーとして大きな役割を担っているので是非成功させたい。また、めっきを中心とした基本的な技術や容量分析、機器分析法についても実習をやる予定である。



理科系大卒の女性

2005年版の経済協力機構(OECD)によると理科系の大卒に占める女性の割合はイタリア35%、英国34%、米国32%、フランス30%、ドイツ23%と続き、日本がなんと加盟30カ国中最低で14、4%。また24歳から35歳の就労者人口に占める女性の理科系大卒者も0,5%で韓国の3,5%フランスの1,9%などに比べてきわめて低い。

このように日本においては高学歴者のうちで女性はあまり活用されていない。しかしながら表面処理の企業において、工程の管理は分析が一番重要であり、この種の業務にはぜひとも女性に活躍してもらいたい。しかも単にルーチンで分析をやるのではなく分析結果あるいは個々の工程の最適な管理やトラブル発生を未然に防ぐシステムを構築したりすることも重要である。

さらには本来の研究職として新技術の開発業務に採用されることを望む。来春博士後期課程を修了する小山田君は、小学生のときからめっきに魅せられ高校時代は自ら化学クラブの長として無電解銅めっきをはじめとして、ニッケルおよびコバルトに関しても研究し、われわれの研究室に志望して卒研、修士課程2年、ドクター課程3年と計6年間研究生活をし、大きく羽ばたこうとしている。これまでは3K産業といわれてきた表面処理関連企業も体質が変わり、このような新進気鋭の女性が活躍できる場を提供されるよう望む。



表面処理における偶然の大発見

これまで本シリーズで何度かセレンディピティーに関して話題を提供してきたが

来月から、これまでの40年以上にわたる経験を中心にした偶然の発見、中には大発見もあるがそれを紹介したい。