雑感シリーズ (11月号)

関東学院大学  本間 英夫



株式投資

低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題に端を発した金融危機から、最近の報道では、アメリカの金融工学の終焉、カジノ資本主義に決別と、投機マネー呼び込みへの反省しきりである。

東京株式市場の株の売買では、外国人投資家比率が六割を超えていた。従って、先月は金融不安から全業種にわたって、株が売りたたかれ、多くの株価は半値から3分の一になっている。確定しないで放っておけば、別にショックを受けることはないと強がってみても、パソコンで証券会社の個人アセットを開く気持ちになれないのが偽らざる気持ちである。

しかも、これまでは投資信託などのような間接的な投資は妙味なしと思っていたが、老後は安定が大切と、小額の資金を昨年から廻してみた。これでさえ評価額が元本の60%になっている。

このような状況から、これまで投資にはあまり興味なかったが株式投資をしてみようかと思っていた人たちは結局、ゼロ金利にもかかわらず貯蓄が一番安全ということになってしまう。一方、株式投資を行っている人にとっては、余裕資金があれば、今が千載一遇の買い場であると買い出動をすべきところであろう。小生は、もはや目減りした資産を取り返そうとか、更に資産を増やそうとする気持ちはなく、塩漬けにしている。

これまでの投資スタンスも、日本の産業界の成長とともに資産は増加するのであるから、貯金のような間接的な方法よりも直接投資のほうが効率的だと考え、頻繁に売買するのではなく、その企業の応援団のつもりで、ほとんど長期投資で臨んできた。

しかし、もう歳だから老年の生きがいを探すようにして、むしろ多少の金が入ったら後進のために役立てたいと実際に微力だが実行している。

先日、ある証券会社の支店長と話す機会があったので、中高年層の小金持ちに絶好のチャンス到来と投資をすすめたらと話したばかりだが、これからもヘッジファンドなどの投機基金による売買が主であるようならば、健全な株式投資はまだまだ日本には根付かないのかもしれない。       

日本はすでに不良債権を整理しており、健全な財政状況になっている。従って、ドルに対してもユーロに対しても円が独歩高で、原稿を書いている10月後半の時点で、円は一時90円台、10月26日現在で94円台に突入している。これからも円高が進行し80円台になるのではとの予測も出てきている。

ドルの信頼が大きく低下したことによる円高であるので、輸出産業に依存してきた日本にとっては、円高の進行に伴って大打撃を受けることになる。主力の輸出関連株は10年くらいのスパンで見てみると最安値に落ち込んでおり、純資産倍率が0・5と売りたたかれている。


歴史は繰り返す

1929年10月24日、木曜日。ニューヨークの株式市場が突如として大暴落に見舞われ、この日を境に世界経済は大恐慌に突入した。

米国の株式市場から始まった大恐慌は、アメリカだけでなくヨーロッパに伝播し、世界経済に大打撃を与えた。物価の下落、生産活動の急減少、企業や銀行の倒産が続出して、アメリカでは工業生産は半分以下に落ち込み、街中に失業者があふれた。今回の状況も、この80年前の状況と類似している。

歴史的に見て、大暴落が起きる前は株式市場が大活況に沸いていて、株式や不動産投資が大ブームとなっている。

個人も企業も、ブームに乗って株を買っていた人たちは残らず大損し、投資家の中には一夜にして破産する人も出てくる。直接投資をしていない一般の人には関係がないと思ったら大間違いで、この損失は国民経済に大打撃を与え、消費活動は冷え込み、モノが売れなくなり、企業の生産は急減する。

一般に株価が大きく上昇している時には、株式や不動産も大きく値上がりしている。株式や不動産などの資産価値が上昇すると、それを担保にして銀行からの貸し出しが増える。銀行の貸し出しが増えるということは、必要以上にお金があふれていることになり、それが景気を更に押し上げることになり、カネ回りがよくなると、それがまた株式市場や不動産に流れ込み、ますます景気はよくなる。その結果、株式や不動産の資産価値は暴騰する。

しかしながら、株価が急落すると、このお金の回転が逆転し、株式や不動産が急激に下がり担保価値がなくなり、お金が回らなくなる。銀行は貸したお金を回収しようとするが、借り手側はお金がなくなり、その結果、株式や不動産を売らざるを得なくなり、セリングクライマックス状態になる。

したがって、一度にみんなが手持ちの資産を売ろうとするので、ますます価格は下落する。銀行は貸したお金が回収できず、担保価値もどんどん目減りする事態に直面し、いずれは銀行の経営危機が表面化して、連鎖的に企業倒産が広がることになる。

まさに現在の状態が歴史は繰り返すことを如実に示している。チューリップ相場から始まり、これまで何度も経験してきた株式、不動産に端を発する金融危機に関してほとんど学習経験が生かされていない。

企業が成長するためには、設備投資を行って企業の規模を拡大する手法がとられてきているが、事業の拡大を計画している時に、株価が暴落したら、設備投資計画をストップせざるを得ない。

このように企業の活動が鈍化すれば景気は益々悪化し、賃金は下がり、新規採用減、失業者の増加につながる。株式市場の暴落は、株式に投資している人たちだけの問題ではなく、我々にも大きな影響をきたすのである。

最近、学生には意識付けのために、来年の君達の就職は大変のことになるぞ、これまでのように単に大学を卒業しているでは通用しないぞ、今のうちに実力をつけるよう真剣に取り組むようにと忠告している。

これからの減速経済で給料は減るし、さらにはこの十数年にわたり経験してきた50歳以上の希望退職や肩たたきの復活、退職金の大幅減額、若者に対しては正規雇用のチャンスが減るなど、マイナスの予測ばかりが目に付く。学生には、真剣に充実した学生生活を送るように促している。


4年ぶりの電気化学講会に参加して

10月の中旬にハワイで日米の合同電気化学会が開催された。この講演会は4年に一度開催されてきたが、一度だけ変則的に5年に一度開催されたので、第一回目が21年前の1987年に開催され、本年は5回目になる。

その第一回目は忘れることは出来ない。例のブラックマンデー、まさにその月曜日から講演会が開催された。当時は今のようにインターネットや携帯電話が発達していなかったので、大学の研究室に電話をしたら、すべての銘柄がストップ安で値をつけていないという。

確か一日で多くの株価が20%くらい下がったと記憶している。その後も、ハワイに出かけているときには不思議と株価が暴落している。今回もまさにその会期中に大きく株価が下がった。

それはともかく、これまで5回とも講演会に参加しているが、年々参加者が多くなり、前回は日米あわせて2000名以上の参加があった。今回は更に参加者が多く、おそらく3000名に達したのではないかと思われる。

これだけの参加者になるとセッションごとの会場数が多くなり、人気のある会場では部屋から聴講者があふれるセッションもあれば、逆に講演者と数名の聴講者しかいない会場も出てきてしまう。

我々の研究室では、学生がポスターセッションで3件、ポスドクと神奈川県との共同研究者の口頭発表が2件の発表で、小生は発表せず興味のある会場を渡り歩いた。

中でも最も興味を持って聴講したのは、MEMS技術を用いた化学センサの開発に関するセッションであった。

マイクロマシーニングは化学センサ、システムの微小化、一括大量生産を実現する上で、極めて有効な技術である。様々な微細加工技術を用いて、酸素電極、二酸化炭素電極等の化学センサや、ガス分析システムなど各種分析システムの微小化の研究に興味を持った。

このように近年、センサのみならずより総合的な分析システムの微小化を目指す微小化学物質分析システム (Micro Total Analysis System (mTAS)) の研究が活発に進められている。

この背景には微小化、一括大量生産による低コスト化や、その場での計測が可能になるなどの利点があげられる。特に電気化学センサはこれらを実現するのに最も適している。

化学センサ、分析システムの微小化には様々な微細加工技術が用いられてきた。

電極等のパターン形成に用いられるフォトリソグラフィー、シリコンの異方性エッチング、アクチュエータの作製に用いられる微細加工技術が重要になってきている。

微小酸素電極作製の一例としては、ガラス基板上に電極パターンをフォトリソグラフィーにより形成し、電解液を蓄える容器を、シリコンの異方性エッチングにより形成する。

この種の微細加工技術にはめっきがかなり重要であり、我々の研究室でも3次元の微小構造体を作成し、すでにエレクトロニクス実装学会に論文を投稿したが、その写真の一部が学会誌の表紙に採用されている。