雑感シリーズ (12月号)

関東学院大学  本間 英夫



金融不安から実体経済の影響

アメリカ発のサブプライムローンに端を発する今回の世界的な大不況が、業界に対して与えた負の影響は甚大であり、今回もこの話題に限ってしまったことを御了解願いたい。

金融危機に対する一時の過度な不安心理は緩んできているようだが、世界景気は依然として下振れが著しい。

経済協力開発機構が発表した世界経済見通しの中で、主要国経済は景気が後退局面に入ったと分析、さらには経済の後退は長期化するとの見方を示した。このように、景気の先行き懸念が株価の上値を抑え、リスク回避指向は根強く、現金化の動きが続いている。

日米ともに決算発表は一巡したが、好材料には乏しく、市場環境はネガティブな要素ばかりだ。唯一、原油の価格が7月に付けた最高値から、景気の先行き不安による需要減で暴落、たったの3ヶ月くらいの間で3年半前の安値。石油化学製品原料のすべてを輸入に頼る日本にとっては朗報である。

国内では先月、7~9月期の実質国内総生産(GDP)1次速報、10月の貿易収支が発表され、いずれも実体経済悪化を裏付ける厳しい数字であった。

輸出に主力を置かざるを得ない日本にとっては、米住宅市場の底入れ時期は依然不透明であるし、米自動車業界の救済問題も米政府の対応待ちとなっている。

来年1月にミシガン州デトロイトで開かれる北米最大の自動車ショー、北米国際自動車ショー(デトロイトショー)で、大手メーカーが出展を見送る異例の事態が起きた。日産自動車、三菱自動車、スズキの日本メーカー3社が先月25日、見送りの方針を明らかにした。米国での新車販売が低迷しているため経費削減を優先させる狙いで、米国市場の地位低下が鮮明になってきた。

また、半導体大手のインテルは、第4半期の売上高が従来予想を約14%下回るとの見通しを示し、企業業績の悪化は鮮明になっている。 

さらには、これまでの大手金融機関のクレジットクランチから、ノンバンクや企業、個人のクレジットクランチに移行している。したがって、個別企業の悪材料はこれからどんどん出てくるのだろう。

このような流れの中では、当然、今年のクリスマス商戦は厳しいものになる。実体経済がどこまで落ち込むのか、市場は不安心理が支配している。したがって、世界的な景気低迷の出口が見えぬまま、株式市場の重苦しい雰囲気は晴れず、ちょっとしたニュースによって日米とも株価の乱高下が続くことになるだろう。

日本国内では業績予想の下方修正が相次ぎ、日経平均の予想EPS(一株利益)は大幅に低下した。現状の予想PER(株価収益率)は13~14倍とすでに割安感が薄れている。

米国不況と円高のダブルパンチで、輸出企業の業績悪化は著しく、株価の下落に企業業績の落ち込みが追いついてしまった形になる。

このように、株安と企業業績の悪化が同時に進行した結果、実体経済の悪化の底が見えない展開が続き、輸出関連企業、特にエレクトロニクスを中心とした製造業では20~30%の落ち込みとなった。

政府の迅速な思い切った対応が必要にもかかわらず、政界は不安定な状態が続いている。このような状態では、回復にかなりの時間を要することになるのは明白である。

2兆円のばらまきに至っては煩雑で、ほとんど効果がないだろう。教育、医療、自給率を上げる農業、中小企業へのサポートなど、社会基盤の更なる充実化に向けた政策を執るべきである。政治家や官僚の考えだけに左右されるのではなく、いずれの領域おいても公正な専門家の意見を尊重し、税金を有効に使うようにしてもらいたいものだ。



自動車産業

日本の自動車大手8社が、2008年度中に世界で生産を減らす自動車の台数が、合計で179万台以上に達することが、先月の新聞に発表されていた。この数値は、07年度のマツダ一社の生産台数(132万台)を大幅に上回る規模の減産となる。これに伴い、期間従業員や派遣社員は大幅に削減され、自動車市場の急激な落ち込みが景気悪化を加速させる。

ホンダは先月21日、日米欧での当初生産計画(300万6000台)から、5%弱にあたる約14万1000台を減らすと発表した。国内では欧米向け「アコード」、米国ではアラバマ工場の大型車「パイロット」、「オデッセイ」を中心に生産台数を減らすほか、英国工場の生産ラインは、09年2~3月に休止すると報道された。

トヨタ自動車の減産台数は、8社中で最も多く、当初計画(887万3000台)に占める比率は10%を超える。これまで業績を引っ張ってきた米国での落ち込みが大きく響き、利益も75%減。9000名いた派遣社員を大幅に減らすという。

生産台数が減ることに伴う人員削減は、8社中7社(ダイハツ工業は非公表)で、三菱自動車も年末までに、国内工場の期間従業員と派遣社員、計約3500人のうち約1000人を削減する方針を固めた。さらには、来年3月末までの人員削減は、計2000人規模に拡大する可能性があると報道している。

今のところ、人員削減を実施していないのは富士重工業だけで、時短や休日出勤取りやめなどで対応するという。

トラック大手では、いすゞ自動車が08年度内に2万8000台を減産し、年内に期間従業員と派遣社員合わせて1400人のすべてを減らすとのニュース。

当然これら大手の企業が減産すると、部品メーカーを直撃することになる。人件費を削減するために派遣社員やパートの削減を行い、さらには製造コストのダウンとこれまで以上の効率追求を推進し、閉塞感だけが増幅されていくだろう。

このように、まずは弱い立場の非正規社員から切られ、一部の企業では内定取り消しも断行されだしている。したがって、今後ますます社会の安定が著しく低下し、世の中が荒んでいく。 



白物家電は堅調な伸び

金融危機のあおりで、実質的にも心理的に不景気感が強い中、冷蔵庫、洗濯機などの白物家電が堅調な伸びを示している。

家電のなかでも、この「白物家電」は唯一売り上げが前年比プラスで、なかでも「省エネ」「高機能」の商品が好調であるとの調査結果が新聞に発表された。

それによると、08年10月20日~11月16日の白物家電の売り上げは前年同期比で約2%増。薄型テレビなどの大物商品が投入されるAV家電を除いて、全カテゴリーのなかで唯一のプラス成長になった。

冷蔵庫は3・3%、洗濯機は1・5%、調理家電は4%の伸びで、国内景気の減速傾向で家計消費の落ち込みも予測されたが、「白物家電」は健闘し、堅調なのが注目される。

特に省エネや高機能といった付加価値商品が好調で、冷蔵庫では冷凍機能や保温機能などの機能面が重視されている。エアコンでは省エネをアピールする商品が好調である。

デパートに家内をつれて買い物に行っても、目的は食料品を買うくらいで、ほとんどほかの売り場には立ち寄ることがない。たまには家電製品を見てみようと売り場に足を運んだ際に、省エネ、高機能の表示が目にとまり、我が家でも今年夏過ぎから、冷蔵庫と電気釜、洗濯機を購入した。



大学の資産運用に変化

先月末のニュースによると、資産運用を目的とする金融取引で、2つの大学において、約150億円程度の評価損を抱えていることが明らかになった。このように、世界金融危機は企業のみならず、大学経営をも直撃している。

ほかの大学の現状は明らかにされていないが、程度の差はあろうが同じように大きな評価損を抱えていると思われる。

多くの大学では、授業料収入の減少が経営上問題となっている。少子化で受験料収入も大きく減少し、しかも定員を大きく下回る大学や学部も出てきている。したがって、授業料の引き上げを行わないかぎり収入が落ち込み、積極的な資産運用にシフトせざるを得なかったのであろう。

日本の大学では投機性の高い商品に手を出すのはタブーであったが、利息が極めて低い現状から、運用当事者はある程度リスク覚悟の上で、リターンの高い商品に手を出さざるをえなかったのであろう。

米国では、大学も積極的な資産運用は当たり前であった。一方、日本の大学は、預貯金中心に運用が行われてきたが、今後、大学経営を支えるためには、海外の例にならい、リスクとリターンをとる積極的な資産運用に取り組む必要に迫られていた。

運用自体は運用会社への外部委託が一般的であり、国内の証券会社や銀行を通じて行われていたという。

大学による資産運用は、リスクを回避するために、株式だけではなく複数の金融商品に投資する「分散投資」や長期投資のスタンスがほとんどのはずである。それでも今回のように世界中のほとんど市場が大幅に下落している現状では、大きな損失を抱えてしまう結果につながってしまった。

少子化による授業料の減収と金融危機というダブルショックが、大学の経営を脅かし大学倒産につながる恐れが出てきた。