雑感シリーズ(10月号)

関東学院大学  本間 英夫

八ツ場ダム建設中止

民主党政権に代わってダム建設の中止が争点になっているさなか、9月末に2泊3日で学生と草津に研修と親睦を兼ねて出かけた。TVで象徴的に紹介されている高架橋のほかに現場を実際見て、自分たちの印象をコメントしてもらうことにした。

すべての学生は工事現場を目の当たりにして、ここまで工事が進んでいるから完成すべきだとの意見が圧倒的に多いと思っていたが、10人すべて中止が当然との意見であった。それは、すでに新聞やTVの報道番組でダムは中止するが道路の整備と住民に対して補償をするとの報道が浸透していたからだろう。地元の方々にしてみると初めは反対者が多かったのであろうが、治山治水の観点から、国の説得に応じ、工事が進んでいた。

しかし計画からすでに50年以上も経過しているという。国が借金漬けで当然、この種の公共工事の無駄遣いに関して見直すべきであるが、政権が変わったからと、すべての事業や政策に関し連続性を無視するやり方は問題である。担当大臣も視察する前から、まず中止ありきでは地元の住民や地方自治体に対して無責任で反発を買うだけである。この種の問題はこれからも山積みで友愛の精神をベースに変革を進めてもらいたいものだ。



怖がり過ぎず、されど侮らず

毎年繰り返し流行するインフルエンザ、鳥インフルのときは表協の会長であったので、当時中国で開催されようとしていた国際会議への参加中止の判断をした以外は、これまでは正直あまり気にしていなかった。

ところが、今回4月下旬メキシコから最初に新型のインフルエンザの流行が報告され、その後、世界中に感染が拡大していった。この新型インフルエンザは多くの人が免疫を持っていないために、一時は大騒動であった。それは、抗原性が全く異なるウイルスが、突然変異によって出現すると、人間はそのウイルスに対して免疫を持っていないので、容易に人から人へ感染し、世界的な大流行(パンデミック)が引き起こされ強毒性の場合、多くの死亡者を出すので世界的な脅威になるのである。

過去に発生したインフルエンザのパンデミックは、1918年のスペインインフルエンザ、1957年のアジアインフルエンザ、1968年の香港インフルエンザ、1977年のソ連インフルエンザなどがあり、たとえばスペインインフルエンザでは世界で約4000万人、日本では約39万人の死者が出ている。

新型インフルエンザのパンデミックは10年から40年の周期で発生するといわれているが、人口増加、都市部の人口集中、交通手段の高度な高速化により、非常に短期間に地球全体に蔓延し、大きな被害をもたらす。

このように現代社会においては、新型インフルエンザの発生から短期間でパンデミックに至る可能性が高く、喫緊な対策がなされねばならない。

9月末頃から10月にかけて、日本でも大流行すると予測されており、その場合は、ワクチンの製造が間に合わない状況で、我が国では、新型インフルエンザ対策を国家の危機管理に関わる重要な課題と位置付け、流行に備えた準備を早急に進められてきている。
 インフルエンザは飛沫感染が主で、くしゃみや咳をしたときに含まれるウイルスを直接吸い込むことにより感染する。また、くしゃみや咳で飛び散ったウイルスが空気中を漂うことになる。このウイルスは数時間漂っており、吸引により感染する。また、増殖のスピードが異常に早く、1個のウイルスが24時間後には100万個になるほどに早い。さらに、電車のつり革やドアの取っ手など、いたるとことに付着したウイルスは、三時間程度は生き続けるという。予防には手洗いとマスクをつけることが有効であり、新型インフルエンザが発生した当初は、すさまじい勢いでマスクが売れ一時は品切れ状態が続いた。
 インフルエンザの流行時期は、気温も低く乾燥している12月から3月頃で、空気中に漂っているウイルスにとっては好ましい環境であり、寿命も長くなる。しかもその季節は、気温が低く空気が乾燥しており、鼻や喉の粘膜が敏感になり、感染しやすくなる。さらには、年末年始は沢山の人が活動するので、これによってインフルエンザウイルスも全国に広がる。

インフルエンザは冬だけではなく、夏に流行することもあり、まさに今回は夏に流行りだした。沖縄でも毎年夏にインフルエンザが流行するようになってきたが、原因は気温・湿度の変化や地球温暖化の影響によるものではないかとも言われている。インフルエンザは風邪とは異なり、高齢者や子どもがかかると重篤な症状を引き起こす場合が多く、最悪の場合死に至る。これを予防するためには、インフルエンザワクチンの接種が効果的で、ワクチンによりインフルエンザの罹患を防止でき、たとえかかったとしても症状が軽減され、合併症や死亡する危険から身を守ることができる。

新型インフルエンザの国内感染者数は、厚生省のHPで7月末まで累積数を発表していたが、すでに指数関数的に増加し実数が把握できなくなっている。それからは定点観測に切り替えられ、9月7日から13日の一週間で都道府県別定点あたりの患者数は1万5000人に達している。現在沖縄が一番多く、次いで千葉、東京と続いている。ということは医者にかかっていない罹患者はすでに何百万人にもなるだろう。

最近は現役をセミリタイアの身なので都心部へ出かけることは少なくなったし、通常は車で移動している。

しかしながら、9月に入り学会の参加や、企業との打ち合わせで、電車で出かけねばならなかった。夏場だというのに一車両に何人もせき込んでいる人がいるし、その人たちはマスクもしてない。当然ウイルスは車内にまき散らされる。これでは免疫力の低い人は感染してしまい、予防といっても限界があり、罹患している人はかなり多いはずである。通常の季節性インフルエンザ同様、感染が広い範囲に拡がる可能性がある。また、現在研究室の学生の数は20名くらいであるが発熱や、のどの痛み、せき込むような症状の時はしばらく休むように指示している。幸い、今のところ、新型インフルエンザウイルスは弱毒性であることが明らかになっているので、必要以上に危機感をあおることはないが、怖がらずされど侮らずのスタンスが重要である。



個人としての対策

現在の情報を元に、弱毒性新型インフルエンザに対し、個人がどう対策すればいいか参考にしてほしい。インターネットでインフルエンザウイルスの「弱毒性」とは、どういう意味だろうか検索してみたところ、直接的な意味で「毒性が低い」ということではなく、ウイルスが感染する部位が呼吸器に限られるという意味であり、これに対し強毒性とは、全身の細胞で増殖しうるということ。したがって、現実に弱毒性の場合は、人体へのインパクトが強毒性より、はるかに弱く致死率が低いので、危険性は低いとは言える。ウイルスの毒性について現在のところ、今回のウイルスの初期の患者の致死率は約0.4%とされている。これは、通常の季節性インフルエンザよりは高い数値であり、感染力も、季節性インフルエンザより高いとされている。新型では免疫を持っている人が基本的にはおらず、そのため感染速度は速く多くの人に拡がりやすい訳である。

日本では、季節性インフルエンザで人口の5~15%が感染し、多い年で、1万人~2万人くらいが亡くなっていると報告されている。新型インフルエンザでは、それ以上の被害が発生する可能性があるが、今回の新型インフルエンザウイルスは、抗インフルエンザウイルス薬のタミフルやリレンザが治療に効果を発揮することがわかっている。

重要なのは、治療より予防で、感染予防、感染拡大防止に心掛ける人が増えれば増えるほど、急速な感染拡大が避けられる。緩慢な感染拡大であれば、医療機関の処理能力以上の患者が殺到する事態は避けられるので、致死率も下がるだろうし、社会的なインパクトも低く抑えることが可能である。

今回の弱毒性新型インフルエンザウイルスに対し、個人の防衛対策としては、まず、手洗いと、うがいの励行である。特に手洗いは、石鹸で15秒以上かけて行い、洗ったあとは清潔なタオルで水を十分拭き取る。手洗いは食事の前や、帰宅後だけでなく可能な限り頻繁に行う。せきやくしゃみのでるときや、人ごみの多いところに出かけるときはマスクをつける。また、せきやくしゃみの際、ハンカチやテイッシュなどで口元を覆う「咳エチケット」は周囲に感染させない重要な予防対策である。

マスク装着の人の数は増えてきており、この9月末に本学の大学院入試が行われた際、ある学科の教員はすべてマスクを着けて、インタビューに臨んだという。また、大学の構内および我々の研究所の入り口にはスプレー式の消毒液が置かれている。マスクは基本的には使い捨てと考え、外出から自宅に戻ったら、廃棄が安全だ。自分は眼鏡を常時かけているので眼鏡が曇ってしまうのでマスクは付けない。したがってマスクをしている人より罹患率は大幅に上昇するのであろうが、逆に弱毒性のうちに、感染しておけばその時点で抗体ができるのではと楽観している。

 インフルエンザウイルス感染の意外な経路が、目などからの感染だという。たとえばドア取っ手などを通じてウイルスの付着した手で無意識に目をこすったり、鼻や口を触ると、粘膜や結膜を通じて感染することがある。これを防ぐには、もちろんマスクが有効。目であれば、ゴーグルやメガネなどの着用で、無意識の行動を防ぎやすくなる。弱毒性である今回のウイルスに関しては、先のように対応することで、ある程度被害を軽減することができるだろう。

もちろん、今後、強毒化したり、タミフルに対する耐性を持ったウイルスに変異する危険性があるので、その時は万全の対策を講じなければならない。数年前の鳥インフルエンザウイルスの危険性について振り返ってみよう。鳥インフルエンザウイルスは、全身感染を引き起こす強毒性のウイルスであり、人間に感染したときの致死率は60%にも達した。数年前から、人間に対する感染性を獲得して「次の新型インフルエンザ」になる可能性を全世界が恐れていたわけだ。

いつ何時、鳥インフルエンザが人間に本格的にとりつくかもしれない。そのとき、今回の弱毒性ウイルス同様、マスクをつけなくても大丈夫だと見くびってしまうと、もっとも危険だ。 もし、鳥インフルエンザが人間に対する感染性を獲得して新型インフルエンザに変異したら、厳重な対策が必要になる。それは国レベルも個人レベルも同じだ。その意味で、今回のウイルスで慣れてしまうのではなく、侮らずにいい予行演習ができていると考えればいい。パンデミック(大流行)が起きたらどうすべきか、新聞やTVなどでは対策に関しては、記事になりにくいのか多くは、事実の報告が主で、対策に関してはあまり語られない。いずれの企業においてもこの種の健康管理をはじめとして事故に関しては万全の危機管理が肝要である。

「事故や災害は忘れたころにやってくる 」予期しないまさかというようなことが起こる場合がある。そのようなことが残念ながら起こったら、隠蔽せず迅速に対応すべきである。いつも言っているが「悪い報告は速く、いい報告はゆっくりと」、事故に関しては、色々な事例に耳を傾け、よくよく注意せねばならない。