雑感シリーズ(5月号)

関東学院大学  本間 英夫

これからの製造業

戦後先進工業国へ追いつき追い越せで、日本の製造業は西欧から多くのことを学び、歴史上まれにみる急速な経済発展を遂げ、世界第二位の経済大国となった。しかしながら、今回の世界的な大不況によって、これからの製造業は変化していくことを余儀なくされている。

しかも、日本は少子化に向かっており、労働人口が減ってくる。したがって、当然日本のGDPの順位はどんどん下がるが、日本の国民の知的レベルは高いし、高度な産業技術を持っているので、成熟期を迎えて量よりも質を重視する、豊かな社会を作るように軌道を修正しなければならないだろう。
 過去20年くらいにわたって、2年に一度くらいの割合で西欧や北欧を訪れてきたが、GDPは大きくないし、人口も少ないのに、生活は豊かである。日本のように、うわべだけの膨れ上がったGDPでは真の意味での豊かさは得られない。社会構造においても、格差がますます増大してきている。また、これまでのようにアメリカを中心としたマネーゲームに翻弄され世界全体で五千万人の雇用が失われたといわれている。ウォール街を中心としたマネー資本主義、なぜ誰も阻止できなかったのだろうか。

拝金主義による、すさまじい所得格差。過去に何度も経験してきている金融危機に対する学習効果は全く機能しなかった。日本の輸出産業はこれまでのアメリカ依存から、実需を伴うアジア圏でのビジネス展開が中心になっていかねばならない。

そのためには、知的財産権をきちっと遵守したビジネスができるような、国際的に通じる商習慣にアジアの国々が変わらなければならない。日本には最先端の技術力や、質の高い文化があり、国民には品性があり、心も豊かである。アジアの中でリスペクトされる国づくりが必要である。

これまで、日本において世界トップクラスの生産システムが導入されてきた。とりわけ、リーン生産方式に関して読者は周知していることであるが、1980年代にMITで日本の自動車産業、特にトヨタ生産方式の研究がなされ、贅肉のとれたスリムな生産活動を行うことを目指す生産方式として構築された。

「贅肉のとれた」の意でのLIEN(リーン)を用いてリーン生産方式と命名された。日本において1992 年以降の景気後退に対応すべく生産の効率化に対してトヨタ生産システムとともに、このリーン生産方式が何らかの形で採用されて、国際的にみた生産性は高いとされてきた。しかしながら、現在、各企業で取られている低価格での売上増大、市場シェア拡大という量的増大の追求は、日本の企業にとって豊かさを約束してくれる訳ではない。

21世紀は、量ではなく質的向上つまり収益性の向上によってもたらされねばならない。日本企業の国際比較における収益性の低さは特徴的であり、設備投資中心の生産性向上で、収益性を犠牲にして、自社優位を狙う姿勢は反省されるべきである。日本製造業の生産性水準は、その意味では、先進国に比較して低い。絞りに絞った日本の製造業には、大きな生産性向上の余地はもうほとんど残っていない。ぎりぎりのところまで改善改良がおこなわれてきており、限界だ。さらには、定額商品、付加価値の低い製品での生産性の向上は、その生産活動の厳しさに比較して、収益性は低い。バブル崩壊後の長期不況にみまわれた日本の実態は、今更ながら日本の強さとは何であったのかと問いかけられている。これまでは、拡大経済の下での量的増大であり、質的成長ではなかった。日本の製造業の創出する付加価値は、GDPの約2割で、国内および海外に対して付加価値の高い製品を生産してきている。製造業は裾野が広く、雇用者数についても、約1千万人以上であり、物作り大国としての位置付けはこれからも極めて重要である。国内の製造業の企業数は約46万社であり、そのうち99%以上が中小企業で、日本のモノ作りのコアになっている。また中小企業の従業員数は、約560万人に上り、中小製造業が雇用創出に果たしている役割は大きい。

ところが、世界的な大不況により基幹を担ってきたこれらの企業のほとんどは、生産量が急激に落ち込み4月時点で50%以上のダウン、電気製品及び自動車関連では70%もダウンしている企業もあり、景気回復はいつになるのかと我慢し、凌いでいる状態である。

この原稿を書いている4月後半時点で自動車メーカーの減産が緩和され、三休四勤から通常勤務に変わろうとしている。又、まだら模様であるが、幾つかの分野で在庫の整理が進み、増産体制になりつつあるようだ。とくに中国が五十兆円にも及ぶ内需喚起から液晶テレビ、携帯電話などの電気製品の増産による特需などから、V字回復に近い企業も出てきているようだ。    景気動向を示す先行指標である株式市場の移動平均線も4月半ばころから上昇に転じてきており株価は底を打ったとみられる。数年前から中小企業庁のモノ作り基盤技術関連の臨時委員の役に就いているが、めっき技術は高度な技術水準を実現しており、これらの企業が、多様化する消費者ニーズをとらえた最終製品を製造する企業と緊密に連携して、付加価値の高い製品を企画・設計・製造し、競争力の源泉の1つとなっていると説いている。

また、めっきを中心とした技術は、様々な最終製品や部品の製造工程において広範に活用され、多くの産業の競争力を支えている。製造の担い手である中小企業では、より技術力を高めると同時に、同一技術間で協調することにより、発注企業の要望に迅速かつ柔軟に対応し、また、異なる技術間で連携することにより、1つの技術では実現できない付加価値の高い部品や部材等を提供せねばならない。