雑感シリーズ (8月号)

           関東学院大学 山下 嗣人



神奈川表面技術研究会

 昭和40年代、神奈川県には「神奈川県めっき技術研究会」がありました。私が研究者としてスタートした昭和45年頃、東北大学金属工学科の著名な先生の講演を拝聴する機会がありました。金属の組織や腐食防食専門の理論的な内容でしたが、杉田の旧神奈川工業試験所の薄暗い3人掛けの教室は聴講者で満席でありました。早く行かないと座る席がなかったと、長老の社長から聞いたことがありました。当時としては貴重な情報源だったのでしょう。このような組織は他県になく、研究会で得た情報や技術をもって、神奈川県は表面処理技術レベルの最も高い県と評価されていたそうです。

研究会は昭和50年に閉会しましたが、表面処理技術、ニーズの多様化に対応するための情報交換、技術向上および研究開発などを目的として、昭和58年11月に「神奈川表面技術研究会」として、研究者、技術者、専業者、材料・設備メーカーなどの会員82名をもって発足しました。翌年5月の第1回総会後の研究会では、中村先生が「めっき工業の将来と研究会のあり方」と題して、将来の動向を見据えた示唆に富む基調講演をされました。

以来、年5回の研究会と1回の見学会を基本とし、その企画は十数名からなる理事・委員が担当して、会員の事業・専門性を考慮し、かつ、時代に合致したテーマが取り上げられてきました。最近では、環境や法規制に関する実務的内容が多かったように思いますが、2009年6月、私が会長に就任したのを機会に、アカデミックな内容、すなわち、表面処理技術の基礎(理論・原理・測定・分析・解析・評価)と応用、将来展望や最先端のめっき技術、電解液およびめっき皮膜の構造解析と機能化などの広範囲な分野への展開を考えているところです。

2010年度総会後の研究会では、本間先生に「ハイテクを支える最先端の表面技術」と題する基調講演をしていただきました。関東学院大学が世界に先駆けて開発した「プラめっき」の誕生から、「紫外線を用いた画期的な環境調和型前処理法」の開発に至るまで、エレクトロニクス産業を支える様々なハイテク分野の成果を含めてお聞ききすることができ、聴講者に「夢と希望」、さらには「勇気と元気」を与えてくださり、いつまでも余韻が残りました。

研究会発足時の目的の一つである「研究開発」を実現するために、神奈川県産業技術センター、横浜市工業技術支援センターならびに関東学院大学との連携を図り、初心者や高度技術者を対象とした実習セミナーを共催開講することも検討中です。

昨年末、横浜市工業技術支援センター、横浜金沢産業連絡協議会と関東学院大学が、地域の産業振興および中小製造業の人材育成を目的として、産学官連携推進、産業連携推進の協定を、それぞれ締結しました。中村先生、本間先生のご業績により、国内外で高く評価されている「表面工学分野」との連携が、特に期待されています。神奈川表面技術研究会も、地域企業や神奈川めっき組合との連携を積極的に図り、存在価値を高めたいと考えています。

本研究会の事務局は設立以来、横浜市工業技術支援センター内にありましたが、諸般の事情により、2010年度から、私の研究室(関東学院大学工学部物質生命科学科応用電気化学研究室)に移転しました。横浜市工業技術支援センターの前身は、中村先生が最初にお勤めされた「横浜市立輸出工芸指導所」であり、神奈川表面技術研究会の初代会長は、私の横浜国立大学工学部助手時代の指導教授鶴岡先生でした。両先生の名声に恥じないよう、本研究会を発展させなければと責務を果たすべき、新たに歩み始めているところです。現在の会員数は63名である。

 

表面技術協会関東支部

 表面技術協会には、北海道・東北・関東・中部・関西・九州の六支部があります。支部の目的は、地域の活性化を図り、会員増強に協力することにある。関東支部は一都九県(東京・神奈川・千葉・埼玉・山梨・新潟・長野・群馬・栃木・茨城)から構成されており、全会員数の52パーセントを占めています。協会の会員数はピーク時の4000人から、約70%にまで減少していますので、支部活動を活性化し、魅力ある協会にしなければなりません。会員の半数を占める関東支部の責任は重大なのです。

年間の事業は、主査と幹事が企画し、支部単独の講演会、実習セミナーの他、他研究部会との共催による講演会や見学会などを通して、教育啓蒙活動を行っています。関東支部は地域が広いので、二分割することが話題に取り上げられたこと、活動が低調であるとの噂を耳にしていたので、私が支部長となった2009年度は他支部に負けない活動を、東京、神奈川、千葉、栃木および長野地区などで展開しました。第120回講演大会(2009年9月)は、関東支部の担当でサーテック2009と同時に幕張メッセで開催をしました。景気の悪さが懸念されましたが、参加者は例年の秋季大会よりも多く、安堵しました。

 昨年9月初旬、斉藤先生、本間先生のご協力を得て、関東学院大学金沢八景キャンパスにて、「電解めっき薄膜の作製と構造解析―ウエットプロセスの基礎および最先端の講義と実習セミナー」を開講しました。初日は、電気めっきの基礎と応用(斉藤先生)、ハイテクを支える最先端のめっき(本間先生)、電気化学的手法による薄膜作製と解析(山下)の講義を、二日目は、分極・インピーダンス測定と解析、電解によるめっき皮膜の作製と構造解析などの実習を行いました。さらに、最新機器のXPS(X線光電子分光)、AES(オージェ分光)、SECM(走査型電気化学顕微鏡)などのデモ実験と研究施設の見学も行い、好評でした。

2010年度は、10月26日(火)~27日(水)に関東学院大学金沢八景キャンパスで、「電気化学測定法の表面技術への応用―添加剤作用機構の電気化学的および構造学的解析」と題する実習セミナーを、また、12月16日(木)~17日(金)には関東学院大学表面工学研究所を会場として、初心者向けの講義と実習からなる「めっき基礎実習講座」を開講する予定です。これらの詳細につきましては、表面技術誌9月・10月号の会告に掲載されますので、ご覧下さい。 

関東学院大学には、ハイテク・リサーチ・センター整備事業で設置した最新の解析機器がありますので、これらを使用しての実習セミナーは、研究者や技術者の教育に大いに役立つものと確信しております。

関東支部では、10月15日(金)に栃木県産業技術センターで、11月26日には都内での若手研究者による魅力ある講演会が予定されています。また、表面技術協会第123回講演大会は2011年3月17日(木)~18日(金)に関東学院大学で開催されます。ハイテクノ会員方々のご参加をお待ちしています。

外で遊ぶ子どもほど探究心が育つ

 子ども時代の自然体験は人生の財産という。自然に触れたり、子ども同士で遊んだりした体験が豊かなほど物事への関心や意欲が強く、高学歴・高収入となる調査結果を(独法)国立青少年教育振興機構が発表している。調査に携わった千葉大学明石教授の分析によると、「遊び」は仲間うちのルールづくりなどを通じて、人とつき合う力や意思決定力を育てる。自然に触れて驚くと、「なぜ」という疑問が生まれ、探究心や好奇心を育てる。こうした体験が学力などに結びついているのではないかと結論している。

調査は、「海や川で泳ぐ」、「かくれんぼやカンけりで遊ぶ」、「弱い者いじめやケンカを注意したり、やめさせたりする」といった子ども時代の体験について、20~60代の方々へのアンケートを基に点数化して分析された結果である。点数の上位層は大学・大学院卒が過半数を占め、年収は700万円以上と高いことが示されている。ただし、私達の頃の大学進学率は10%以下であり、生活環境も異なるので、年代層によっては、必ずしも一致しないと思われる。

 長野県佐久市に生まれ育った私の小学生時代にはプールがなく、千曲川で泳いだものです。真夏といっても上流域の水は冷たく、冷えた体を土手の石垣で温め、太陽の有難さを肌で感じて幸せに思いました。冬の一時限は毎日のように田んぼでのスケートを楽しみました。チャンバラごっこもしたが、暗黙のルールが守られていたのであろう、怪我をすることはなく、友達と楽しい時間を共有したものです。上級生から下級生へと、命令系統が自然に決められ、それを疑うこともなく、素直に受け入れたものです。遊びの中にも秩序なるものができていたようです。

中学時代の職業家庭科の時間、男子は校内の草花の手入れ、2~3kmも離れた田畑へ鍬を担いで出かけ、田植えや稲刈りもしました。教育の一環として、当然のことと思って行動したものであり、教育目標や指導方針が重要であることを示している。「人が人を教育する」という、教育の偉大さ、無限の可能性に感銘を受け、高校教師を目指した頃には考えてもみなかったことでした。

 小学生の1月下旬には寒中休み、6月初旬には田植え休み、10月初旬には稲刈り休みがありました。子どもたちは、率先して手伝いをし、働く喜びや仕事の大切さを体得したものです。手伝いや外遊びの体験に乏しい最近の学生には、「何のために働くのか」理解できず、また、社会人に必要な「コミュニケーション」も図れないようです。

収穫の秋には、全校生徒による落穂拾いや校庭に実った胡桃取りなど、今でも楽しい思い出として心に残っています。野山や千曲川を歩いての昆虫採集や草花採取(理科)、野外写生(図工)遠足など、四季折々の行事と情景に触れての生活の中から、自然を敬う心を学びました。

 子ども時代には、いろいろなことにチャレンジし、その体験を活かして、探究心、広い心、穏健中庸、さらには正しい判断力を養い、わが国の発展を担う貴重な人材として、成長してほしいものである。