雑感シリーズ (10 月号)



荏原ユージライト株式会社  

代表取締役兼CEO  粕谷 佳允



来年世界経済の大氷河期が来ると杞憂する



今年の九月十一日にアメリカの同時多発テロから十年、日本の大震災・大津波の被害から半年が経とうとしています。

アメリカのこの十年は失われた十年という人がいますが、本当にアメリカの一国支配力の低下と簡単には片付けられない程アメリカの政治影響力とドルをはじめとする金融支配力を喪失させてしまったのです。その原因はイラクやアフガン戦争によるドルと人命の浪費とリーマンショックに見られるような金融政策の大失敗にあると思います。その間ドル紙幣を乱発し続けた結果、アメリカ経済は現在恐慌寸前にあると思います。アメリカの金融危機がギリシアやイタリアなどヨーロッパ各国に津波のように押し寄せていると私は思います。したがって、ドルへの不信感からユーロ通貨も相対的にその信用を失いつつあるのです。

日本の異常な円高は何も日本が強い立場にいるからではなく、海外資産の蓄積と貿易依存度が案外世界レベルから見れば低いことに起因していると聞いているのです。また、デフレの中で考えれば金利がアメリカやEU諸国より比較的に高いことが円買いを促進させている要因だと専門家から聞いています。

一方で最近中国各地を訪問して感じたことは、中国の経済活動は金融の大幅引き締めにあって食料品と石油の異常な値上がりと相まって相当苦しくなっている様子でありました。この傾向は来年も続くことを今から覚悟しておいたほうがよいと考えています。韓国のサムスン、LGも来年の見通しは全くたたないため、リストラや投資を相次いでキャンセルしていると聞いています。中国も韓国も結局のところ、アメリカ依存度が大きく、ドル安とアメリカ経済の停滞に大きく影響されているのだと私は考えています。要するに、世界はアメリカの方向を一極主義で見ていてはだめで、アメリカ離れ、ドル離れしないとやってゆけなくなっているのでしょう。来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、二〇一二年(辰年)はかつて私たちが経験したことのない世界経済の大氷河期となるのであろうか。私は自分の会社の将来のこと、増税の雰囲気の日本経済の危うさなど、取り越し苦労であってほしいと一方では、思うのであります。

また、来年はアメリカ、ロシア、中国、フランスなど、世界の大国のトップ交代の時期と重なっています。これも世界が安定しない要因となっているのです。

野田新首相は東日本の大震災と大津波の復興や原発問題、及び西日本の大豪雨による大変な被害の復旧という二重、三重の困難に早くも対応しなければならず、大変な重責を負うことになり、気の毒なぐらいです。円高対策を含め経済的、外交的課題も合わせて処理しなければ日本の将来はないと思います。いずれにしても資金がなければ問題の解決策がとれないことは誰の目にも明らかなのです。消費税の10%アップと建設国債の発行が一番よい施策だと断言しております。所得税と法人税の増税は愚か者の考え方です。

今年のような大地震や大洪水で日本各地が大きな被害を受けたのは、今回が初めてではありません。推古天皇の御代即ち聖徳太子が活躍された時期にそのような国難とも云えるべき出来事がありました。その時、聖徳太子は大胆な政策をとって国民を救いました。その時全国の朝廷の倉は勿論、全国各地の国守の倉も開かせ、悲田院を開き、施薬院を設けました。公共事業として全国に橋や寺を創設して仏教の普及と社会資本の整備に奔走したと聞いております。後世、光明皇后も聖徳太子に習って、悲田院と施薬院を開設し、飢餓と疫病に苦しむ国民を救済したのです。

大阪の四天王寺などは、外国の使節を出迎えるためにわざと堂々とした建造物として作られたものです。復興のために遣隋使を派遣し、新しい技術や知識の導入にも力を入れたため、多くの外国人を難波津に上陸させ、日本の力量を誇示したからです。内政とは別に、外交交渉にも十分気を配っているのです。新しい国作りに着手し、先進国だった中国に学びました。野田新首相も新しい国作りをするぐらいの大きな気持ちでリーダーシップを発揮して成功すれば、一〇〇年後、二百年後、聖徳太子同様紙幣の顔となるかもしれません。

天智天皇の後、大友皇子を大津で破って飛鳥浄御原に新しい朝廷を開いた天武天皇は、毎年のごとくその余震ともいうべき大小の地震に16回も見舞われていました。天武十三年十月十四日(DC684年十一月二十九日)白鳳大地震という現在の云うところの東南海、南海、東海連続型大地震に見舞われたと「日本書紀」にも記載されています。白鳳大地震については、色々な地震の大家が研究されているので興味があれば読んでください。今の土佐湾はその時大陥没してできたといわれています。20m近い大津波に襲われ、土佐の3分の1が水没したらしいのです。

天武天皇以降大和朝廷の財政は大変だったろうし、情報伝達機関の未発達を考えれば大変な死者や行方不明者も出たであろうと思うと、今回の東日本大震災より悲劇的状況であったろうと思わざるを得ません。従って、最近大小の地震が頻発するなか、東南海、南海、東海連続大地震の可能性も否定できないのです。あらゆる意味で国民が一致団結してこれらの国難を克服していかなければならないですが、野田新首相には、三党合意などといった妥協的なものではなく、本当の意味の超法規的な決断力をもってできる限り早く今回の復旧復興を済ませて、中国やロシアが狙う国土の保全のための大胆な施策をしてもらいたいです。特に、海軍力の強化のため空母をはじめ多くの艦艇や攻撃機の国産化などに踏み切らねばならないと思います。これは国土防衛のためであり、アメリカの軍事力依存から脱却し、本当の意味の自前の軍事力の強化が必要です。何という勇ましい保守的な考え方の持ち主かと揶揄されようとも、私は自分の国は自分達で守る気概が今の日本人には欠けていると思うのです。国土を守るということは子孫に対する私たちの責任です。

私は平和主義者ですが、東京の下町で3月10日の東京大空襲で一夜にして10万人の人が焼死した戦争の痛ましさや不幸を子どもの頃いやというほど身を以って体験したからなおさらです。世界不況後必ず大戦がある。これは人間が動物だからです。企業も生き残るための戦略を真剣に考え直さねばなりません。経済がグローバル化し、国境がなくなったため、企業間の戦いはもっと苛烈となると覚悟しています。

私は経営者の一人として、来年こそ自分の見識が問われると思い、一極集中型ではなく、新分野をはじめとする多極分散型の経営を目指す考え方です。色々な国々の企業との協力関係の構築と大学や研究機関との連携を含めた事業の多角化に生き残りを図ろうと考えて、社員一同団結して社業の発展に努力邁進いたします。



今月号の雑感シリーズでは、ハイテクノ維持会員である荏原ユージライト株式会社代表取締役粕谷佳允様にお願いし、会社のHPに九月十三日付で掲載された経営者メッセージを特別寄稿として転載させていただいた。

(関東学院大学 本間 英夫)