関東学院大学 材料・表面工学研究所

所長 本間 英夫
研究員 梅田 泰

関東学院大学 材料・表面工学研究所では7名の教授、4名の研究員、16名の大学院後期課程、1名の前期課程、6名の学部生、そして常に10名以上の企業からの研修生が湿式プロセスにこだわり、開発を続けている。
開発はともすると優秀な頭脳だけでなく、プロセスや素材に対し、直向きに挑戦することで良き結果を得られることが多いように日々感じている。なかなか良い結果が出ない研究でも、続けているうちに思わぬ解決策を思いつく。この場面に遭遇するたびに心が躍り、体が熱くなり、さらなる新しい開発へと意欲が燃えてくる。
そんな日々の中で開発されている内容を紹介したい。

開発案件①

AFMによるガラス上めっきの表面分析

 ガラス上への新規めっき法として、ゾルゲル法を用いた触媒層形成プロセスについて検討を進めている。これまでの実験結果では、ホウ珪酸ガラスに対して0.3 kN/m程度の密着強度が得られることが判明した。そこで、本実験では、密着メカニズム解明の一端として、AFMによる表面分析を行った。
 ガラス基板には、ホウ珪酸ガラス(Shoot製Tempaxフロート50mm×50 mm×0.7 mmt)を用いた。コーティング液をスピンコーターでコーティング後、乾燥、焼成を行い、触媒層を形成した。
サンプルへのめっき工程は、水素化ホウ素ナトリウム溶液(2 g/L 50℃ pH 10.5)により2分間還元処理を行い、水洗後、無電解銅めっき浴に10分間浸漬し、0.1 um程度めっきした。無電解めっき後、120℃で10分間乾燥後、電気銅めっきにより15 umまで厚膜化し、乾燥、350℃1時間の熱処理後、ピール試験を行った。
AFMによる表面分析

未処理ガラスおよびゾルゲル法により、コーティングを行ったガラス基板、電気銅めっきピール試験後の3サンプルの表面状態をAFMにより観察を行い、表面形態観察と平均面粗さ(Ra)測定を行った。
 未処理ガラス基板に対して、コーティング後の表面は、粗さが増し、微小な孔が確認できる。
ピール試験を行ったサンプルの表面形態は、斑になっており表面粗さはもっとも大きくなった。ピール試験後の、サンプル面内の高低差の測定を行った結果、高低差は約13nmの値を示した。この値は、TEMにより観察したコーティング膜の膜厚と近い値であることから、コーティング膜はピール後、ガラス基板から剥離していると考えられる。

開発案件②

湿式法による微細金属パターンの形成

近年、タッチパネルディスプレイやソーラーパネルなどには、透明導電膜としてITOが用いられている。しかし、ITOは電気抵抗や作製コストが高いなどの問題があるため,代替材料として電気伝導性の高い金属パターンを、目に違和感がない程度に微細形成する研究が行われている。
そこで、経済的に効率の良いめっき法を用い、微細金属パターンを ガラス上に作製する方法、樹脂に転写する方法、樹脂上に形成する方法の三手法の検討を行った。

ガラス上の微細金属パターン作製

チタンを含む感光性金属錯体溶液をガラス上にスピンコーティングし乾燥後、フォトマスク(線幅:5 um,ピッチ:100 um)を用いてフォトリソ法により微細パターン形成を行った。パターニングした感光性金属錯体膜を焼成し,酸化チタンセラミックスへ変化させ,選択的に銅めっきを施した。

微細金属パターンの樹脂への転写

微細金属パターンを作製したガラス上に、液状の樹脂(COP、PI、PMMA、PDMS)を塗布・硬化し、ガラスから引き剥がすことで、ガラス上の微細金属パターンを樹脂上へ転写した。

樹脂上の微細金属パターン

UV照射装置により生じたUV光を、フォトマスクを通して樹脂(PET、PEN)へ照射することで、樹脂表面を選択的に改質した。さらに、異常析出を抑制する前処理を併用し選択的に銅めっきを施すことで、微細金属パターンを形成した。 チタンを含む感光性錯体溶液を用い。ガラス上に微細金属パターンを形成可能であり、さらに、各種樹脂上へ微細金属パターンを転写できる事を確認した。また、UV照射により樹脂を改質する事で、選択めっきにより直接微細銅パターンを形成した。これらの手法により、基板の透明性を有したまま、ITO膜に比べ著しく低い電気抵抗度を示す透明導電膜を作製した。 本手法を用いたガラスおよび各種樹脂材料上へのめっき法による微細金属パターンの形成により、高透明度・低電気抵抗度を示す材料の作製が可能であることを明らかとした。

開発案件③

UV改質法を用いたアルミニウムとポリイミド混在基板への選択めっき

回路基板上に半導体を実装する方法として、電極パッドと基板を電気的に接続するワイヤーボンディング法が利用されている。しかし、近年の小型軽量化を進める上でワイヤーのスペースが障害となっている。そのため、新たな実装方法としてワイヤーを使わずにダイレクトに実装するフリップチップ法が注目されている。
フリップチップ法を採用するにあたり、チップ回路形成を行うための処理として、電極および有機絶縁膜上にスパッタを用いたドライプロセスが用いられているが、コスト面での課題が上げられている。
電極材料の多くはアルミニウムが使われている。一般的にアルミニウム上へのめっきにはダブル亜鉛置換法が用いられている。しかし、亜鉛置換浴は強アルカリ性・強酸性であるため、アルミニウムのエッチングロスや有機絶縁膜へのダメージが問題になっている。
そこで本研究では、アルミニウムに対してジンケートレスでめっきを行い、有機絶縁膜に対してはUV光を部分照射することで部分改質し、選択的にめっきを行う技術を組み合わせた湿式法によるめっき工程の検討を行った。
本実験で使用したサンプルは、12インチのシリコンウェハ上にアルミニウムをスパッタし、有機絶縁膜としてポリイミドを塗布後、電極としてアルミニウムをパット状に開口したものを10×10mm2のサイズにカットして使用した。まず、ジンケートレスでアルミニウム電極部に無電解ニッケルめっきを行った。
その後、散乱光で処理を行う主波長184.9nm,253.7nmの小型紫外線表面処理装置および疑似平行光で処理を行う主波長310nm,365nmのUV照射装置を使用して、素材とUV光の間に石英マスクパターンを介し、選択的に表面改質を行い、改質部へ選択的に触媒を付与しめっきを行うことで絶縁層への再配線加工を行った。
ジンケートプロセスを使用せずに、パット部分に密着性の高い無電解ニッケルめっき加工を行うことができた。UV照射によるパターン改質をすることでレジストを使用せず、再配線部に無電解ニッケルめっき2um厚に加工することができた。
また、UV照射による部分改質を行う際、散乱光で処理を行った場合では約50umのパターンまでしか形成できなかったが、平行光で処理を行った場合では約10umのパターンを作製することが可能であり、平行光を用いることでより微細なパターンを形成できることが分かった。
密着強度は散乱光で処理した場合では約0.7kN/mに対し、平行光で処理した場合では約0.3kN/mの低い密着強度となった。この原因としてはUV光の強度が平行光の方が低いため、改質に差があるのが原因だと考えられる。
ジンケートを使用しないことで絶縁膜へのダメージを抑制、且つ、レジストを使用せず10umパターンに2um厚の再配線を形成出来たことは、今後の半導体パッケージにおけるインフラコスト及びプロセスコストの削減に大きく貢献できると考えられる。
以上の三件について紹介をさせて頂いたが、どの技術もこれからの半導体開発に欠かせないもので、ガラスインターポウザーや超低コストのフリップチップの製造に寄与するものと期待している。これからも常に新しい技術に直向きに、飽きずに挑戦を続けて行きたい。