関東学院大学 材料・表面工学研究所

山下嗣人

社長としての抱負―新たな展望

 歴史ある(株)ハイテクノ代表取締役の重責を担うことになりました。私は今まで大学に勤務し、教育・研究に携わってきたので、社長職など考えたことはありませんでしたが、斉藤先生から懇切丁重なご推薦をいただいたこと、ハイテクノの主たる事業が「教育講座」であることから決断し、微力ながらお引き受けすることにしました。
 これまでに、学会の事業・セミナー・編集・分科会の各委員長、関東支部長など務め、研究会の開催や特集号企画などの経験を積んできました。現在でも学会の副会長、研究会会長として、最新情報を提供しています。学会・業界で実績と人脈をもち、実行力のある委員に企画案をお願いし、自らも積極的に参画して会の活性化と会員数の増大を実現しています。
表面技術協会の関東支部(一都九県)は、会員数の五十%を占めていますが、支部活動は低調でした。そこで、各県の公設機関・めっき組合との共催、若手研究者による最先端の研究動向、電解・無電解めっきの実習セミナーなどを開催してきました。実習
セミナーは神奈川表面技術研究会でも毎年実施しており、業界からも期待されています。日本材料科学会では、新しい研究会の立ち上げに参画して、会員増強に貢献しました。これらの経験をハイテクノの新たな展開に活かしたいと考えています。
上級表面処理技術講座受講生の約半数は非会員が占めています。学会や講演会への会員の参加費は非会員のそれよりも安く設定されていることが普通です。ハイテクノの授業料は会員・非会員ともに同額で、入学金の数万円が免除されているだけです。年会費を納めてくださる会員よりも非会員の方が安価な経費で受講できるのです。任意制とはいえ、早急な課題としての対応を考えたいと思います。
私は、上級表面処理講座で、「めっきのための基礎電気化学」と「金属の腐食・防食」の講義を担当していますが、学生時代に電気化学を修めた受講生であっても、表面処理分野の講義は初めての人が大半であり、特に文系出身者には理解し難いようです。ネルンストの式、ターフェルの式、電気二重層、拡散層、分極現象、錯体浴の電気化学、電位-pH図など、すべてが難解です。他の科目でも同様なケースがあると思われるので、演習問題を課した短期の講習会を少人数制で開講し、講師と受講生が質疑応答方式で論議しながら進めることが必要と思います。
理工系の学習は、講義・演習・実験の三本柱から成り立っています。電気化学の簡単な実験、たとえば、電極電位、分極曲線を解析することにより、電気化学の基本がある程度理解できますし、また、数々の情報を得ることも可能です。若き頃に頭脳と身体(実験操作)を使って知り得た知識は生涯忘れません。電極電位から、反応の定性や表面特性の評価が、電流値からは反応速度と反応量が求められる。この電位と電流の関係から、反応の律速過程、添加剤・光沢剤の評価、電析皮膜の構造を推測することもできます。鉄は希硝酸には溶解しますが、濃硝酸には溶けません。この現象が化学的不動態であることを、中学の理科で学びますが、鉄アノードの溶解反応と硝酸イオンのカソード還元反応の局部分極曲線を解析することにより、その理由が明快に説明できるのです。電気化学測定を体験して、「考える力」を養ってほしいと思います。腐食反応における解析法を無電解めっきに適用し、混成電位論として世界で最初に発表したのが前社長の斉藤先生です。
表面処理を専門とする技術者にとって、一級および二級めっき技能士は必須の資格と思います。 実技に関する講習会は東京都や横浜市で行われているので、教科の講習会を開催して、傾向と対策について解説し、仮想問題を解いて確実に合格できるカリキュラムの構築を進めています。
団塊世代の定年に伴う技術伝承が十分になされず、工場での事故が多発しています。現場の知恵と経験を活かしてのトラブル対策や対応の仕方、安全管理に関する講座も検討中です。
新たな事業を展開して、表面処理業界の発展に努める所存です。ハイテクノの活動にご理解と一層のご支援をいただきますようお願いいたします。