雑感シリーズ

デジタル人間 

2019.10.2更新
関東学院大学 材料・表面工学研究所
盧 柱亨

 いつ頃からなのか記憶していないが、家内と娘から「パソコンじーじ」と呼ばれるようになった。よーく考えてみると、娘には、幼い頃から「あなた一人だけに勉強をさせているのではなく、親たちも常に勉強をしてるぞ!」と見本を見せるため、隣で雑誌や新聞などを読む姿を見せていた。しかし、いつの間にか、雑誌や新聞を捨てて、情報検索の万能の道具であるパソコンやタブレットを手放さなくなっているからと思う。
 「もし、あなたは起床時間が遅れてしまい、慌てて家を出てから5分ほどの距離でスマホを忘れたことに気づいた時にどうするのか?」と聞かれたら、「予定時間がギリギリになってもスマホを取りに家に帰る」と当たり前のように答えるほど「スマホの奴隷」になってしまった。しかし、このようなことは、私に限ったことではなく、我々の日常において万能の道具として使っているパソコンやスマホなどの「情報端末」が手放せなくなり、今は、「情報端末に束縛」された人が増えつつある。
 少し飛躍し過ぎかも知れないが、これはまさに、あらゆるものがインターネットによって繋がっている、IoT (Internet of Things) が我々の生活において当たり前のようになってきた証拠でもある。
 ドイツのメルケル首相が2020年を目標に推進している技術戦略、繋がる工場による「Industry 4.0」は、IoTによって第4産業革命が実現したのではないかと思う。しかし、アメリカは、IoTにIndustrialの概念を追加し、IIoT (Industrial Internet of things)とインターネットを社会に大幅に取り入れた改革を意図している。Apple やGoogleのように巨大な企業が具体例を作ったデファクト・スタンダードを世界に広げていく政策を推進している。
一方、日本では、上記両国の質的な成長と量の拡大のバランスを取り「超スマート社会・Society 5.0」の政策を進めており、AIやIoT、ロボット、ビッグデータなどの⾰新技術をあらゆる産業や社会に取り⼊れることによりする実現する新たな未来社会を目指している。

図1.人類文明の発展と社会の姿



人類の文明史をさかのぼっていくと、図1のように、自然と共生する狩猟社会(Society 1.0)、道具の発明により自給自足が可能となった農耕社会(Society 2.0)から蒸気機関の発明により大量生産が可能となった産業革命により⼯業社会(Society 3.0)が実現された。その後、パソコンの発明により情報社会(Society4.0)が加速され、⼈類社会発展の歴史における5番目の新しい社会の姿を超スマート社会(Society5.0)と予測される。
この未来社会では、ビッグデータを機械学習したAI(Artificial Intelligence)を積極活用し、一部の先進国だけではなく、世界のあらゆるところで誰もが、健康・医療、農業・⾷料、環境・気候変動、エネルギー、安全・防災、⼈やジェンダーの平等などの様々な社会的課題の解決とともに、国や⼈種、年齢、性別を越えて、必要な⼈に、必要なモノ・サービスが、必要なだけ届く快適な暮らしを快適で活⼒に満ちた質の⾼い⽣活を送ることができる新たな⼈間中⼼の社会の実現を目指すものである。
 そのためには、IoTやAIやロボット、ビッグデータなどの⾰新技術を最⼤限活⽤し、社会全体の最適化を図っていくことが不可⽋であると思う。
しかし、単なる⾰新技術を使⽤しただけでは達成できず、競合他社や他業界、⼤学や研究機関や地域社会など多様なステークホルダーが連携し、オープンイノベーションを図っていくことが鍵となる。
即ち、全てのことは、人間がAIを構築し、様々な情報を学習させて得られた結果を人間の幸せのために活用するので、その中心にあるのは人間である。
このように我々人間も考え方から全てがデジタル化されていくと「デジタル人間」と呼ばれるのではないかと思い、インターネットでその意味を検索しているうちに「デジタル人間 VS アナログ人間 診断」を見つけ、面白さ半分でやってみたら、「あなたはズバリ、デジタル人間」との結果になった。
「あなたは、論理的思考や計画的な作業が得意なデジタル人間。フローチャート作成や中長期のプラン策定もお手のもの。ただ、中途半端や曖昧なことが嫌いで、つい人の気持ちを傷つけてしまう場面もあるのでは? 仕事は1入でするよりも、みんなの力で成し遂げた方が、やりがいや成果も大きいもの。あなたの論理的判断や知恵を、もっと周囲にも分け与えてあげてください。」
 この診断結果を見て「凄い! 200%当たっている!」と興奮している家内には反抗もできず、全部が正解とは思えない……と心の中で否定をしながらも、いくつか痛いところを突かれたようなところもあった。生まれつきの情や融通を持つアナログ人間と現代文明により変わってきたデジタル人間……上手いこと融和させてSociety 5.0 が実現されたらいいなぁ……と考えながらもパソコンやスマホから離れられない週末であった。