過去の雑感シリーズ

2001年

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省庁再編
関東学院大学 
本間 英夫
 
 年初からスタートした省庁再編(1府21省庁から1府12省庁に)、スリム化、効率化、大きな政府から小さな政府、中央集権から地方分権、色々キーワードがあるが、兎に角、構造改革が始まった。為政者の指導力、国家公務員の公僕としての責任と自信が強く望まれるところである。 

特に今回の再編で内閣府を新たに設け、官僚主導から政治主導に切り替えるのがねらいの一つ、政治家を各省庁に送り込み、強力なリーダシップをとる事になっている。

 議員を選ぶ側の国民も選挙での一票。都心部では革新が有利、地方では保守が有利に。一個人としても保守的な考えと革新的な考えが錯綜しているのに、意思表示としては、余りにも偏りすぎるし、軽すぎる。

 省庁のスリム化に着手したのだから、議員数の思い切った削減、地方分権化を強力に推し進めればいいものを、いつも中途半端な足して2で割る方式である。

 国レベルでは大枠を論議し決定し、地方に権限を委譲する。この種の論議はかなり前からなされてきたことであろうが、いろんな利権や思惑が働き、遅々として改善がなされていない。利権やエゴで政治がなされてはならないと皆、総論として了解しているのに。

 しかし、今まさに構造改革が進められている。地方でも改革が進んでいるとみていいのか?

 東京都と長野県がマスコミ受けする顕著な例か?最近のマスコミは大衆受けするように、どれをとっても同じ論調、同じ報道、かろうじてまともなのは経済を中心とした新聞と雑誌か? 

 
金融制度および税制改革


 兎に角、政府部門の構造改革は緊急課題であり、昨年、当時の内閣では構造改革は出来ないと交代を一時期迫ったが、政争の具にしている余裕など無いはずである。課題を先送りしたり、放置していては傷口が広がるばかりである。

 総理が元旦に、将来の人口の急減に備え、女性の労働市場への進出促進の施策を発表しており、IT改革、教育改革〔教育基本法は1947年の制定以来一度も改正されていない〕と共に目玉としたい意向である。

 IT改革に関しては、インフラ整備が最重要課題であり、大晦日で起こったインパクがパンクするようでは心もとない。さらには国際化に対応した金融改革は焦眉の急である。

 国の借金にあたる国債残高は、昨年末で389兆円、これに地方自治体の借金を合わせると666兆円、国民一人あたりにすると520万円の負債を抱えたことになる。すでに国民の総貯蓄額1400兆円の約半分近くを、財政が借金している勘定だ。

 景気浮揚策として、これだけ莫大な財政出動がなされてもその効果は小さく、日本の経済システム全体を抜本的に改革されねばならない。

 そのアクションやアピール効果が小さいので、すでに外国の投資家は日本株を大幅に売り越し、日本全体の評価が低下し、大げさな言い方をすれば、これまでの財政出動は、まるでブラックホールの中に、お金を注ぎ込んでいるような状態になっている。

 4月になると郵貯、年金積立金の全額自主運用が開始になる。したがって、当然、資金供給を受けていた不採算法人の大幅整理が進行する。郵貯、年金積立金の残金は約400兆円で本年度は120兆円以上自主運用されるとのことである。運用先は国内外の債券や株式、特に株式市場は期待が大きい。

また、昨年論議された2001年度の税制改正の中で、株式譲渡課税に対する申告分離への一本化が株価の低迷で2年間見送られた。

 昨年大発会から大納会で日経平均株価でおよそ5000円、率にして25パーセント以上下げたことになる。この背景には上述した日本の借金体質に対する海外投資家の嫌気、民間企業や金融機関は株の持ち合い解消、利益の出ている株からどんどん売られた。

 また、いわゆるアメリカを中心としたIT推進役のドットコムの理想買いで、一時は株価が10倍以上に急騰、その後7、8ヶ月で行って来い相場、日本でも同じくこのセクターの株は総じて10分の一から中には50分の一になったものまである。

 シリコンサイクルで第4四半期での過剰生産、それに伴う部品、機械、半導体メーカーの凋落振りはすさまじかった。

 したがって、株価は総じて悲観材料のオンパレード。昨年の暮れで銀行の含み益が大きく減少し、いわゆる国際的なBIS規制をクリアーできたのは数行である。米のナスダック指数と日経平均の連動性は極めて高かった。

 このような状況の中で、申告分離へ一本化することによる手続きの煩雑さ、重税感から投資家が市場から離れ、さらに株価が下がることを避けるために取られた措置である。

 一先ず、証券会社を初めとして市場参加者は、一息ついたようだが、2年間見送られただけで、他の金融商品と比較して魅力ある対策が講じられなければ、また、同じ問題が出てくることになる。

 さらには、いわゆる日本版401K〔確定拠出年金〕、企業年金、ペイオフなど改革が目白押しである。

 2002年4月にスタートするペイオフでは、すでに皆様ご承知のように、これまで全額保証されていた預貯金が、預け入れ金融機関が破綻した場合には1千万円しか保証されなくなる。

 先ごろ発表になった1384兆円の個人金融資産、今年の暮れから来春にかけて通帳の分割、金融機関の選別が起こることが予想される。

 これからは待った無しの一年、色々なデマ、金融再編でパニック状態にならないことを願う。


最近の技術の話題から


自動車電池技術


 究極の低燃費、低公害車として注目を浴びているのが、水素と酸素の化学反応で電気を起こす、いわゆる燃料電池を搭載した車である。各社が2003年から5年を目処に実用化の一歩手前の段階に入っている。次世代の環境対応型としてハイブリット車が先行しているが、燃料電池車に関して技術的に大きく進展してきているようである。

 燃料として何を使うか、純水素のボンベを搭載するのか、水素吸蔵合金を用いて一旦水素を貯めておくのか、メタノールを用いて水素と酸素を作るのか、各社がエネルギー業界と連携しながら開発が進んでいる。いずれにしても燃料を貯蔵するシステムをいかに小型、軽量化するか乗用車搭載をターゲットに各社が競っている。

 1997年、12月にトヨタからプリウスが発売されたが、石油エネルギーと電池を組み合わせたハイブリッド型で利益を度外視した価格を設定し当時、確か一台売れるたびに100万円の損失ではなかったかと思う。搭載されている電池はニッケル水素電池で、当初は円筒形であったが現在は角型に改良され体積も当初のものと比較して40%コンパクトになり、しかもエネルギー密度も大幅に改善されているとのことである。

 現在開発品として公表されているものを列挙してみると、トヨタの開発品は出力70Kw体積65リットル重量75Kg、ホンダはメタノール改質型の燃料電池を開発しており出力60Kw、また同社ではカナダのバラード社の純水素型の燃料電池を使ったものも開発しておりこれも同じく出力60Kwである。その他マツダ、三菱、ダイハツ、日産など乗用車を前提とした開発にしのぎを削っている。


電池のもう一つの話題


 移動通信端末、ノートPC、デジタルビデオ、デジタルカメラ、など電子機器の需要が好調でリチウムイオン電池およびニッケル水素電池の生産額は大幅にアップしている。高性能を追求する領域ではリチウムが、またコストパフォーマンス性からはニッケル水素がアジアを中心に拡大している。この電池が小型二次電池と呼ばれているものである。携帯電子機器の性能やダウンサイジングに無くてはならないエネルギー源である。

 電池には一次電池と二次電池があり一次電池とはいわゆる乾電池で化学エネルギーを電気エネルギーに変換しているのであるが、一旦放電させると充電によって再生できない使い捨て型の電池である。

 一方、二次電池は外部電源から得た電気的エネルギーを化学エネルギーの形に変化させ、蓄えておき必要に応じて電気を取り出す電池である。この小型の二次電池は現在日本がほぼ独占的に供給している。

 大手の3社が7割以上のシェアーを持っており、リチウムとニッケル水素電池を合わせると、すでに生産額は5千億円程度に達しているのではないだろうか。ほとんどの人が何らかの形で、この電池を使用している。

 一つ大切なことをアドバイスしておく。充電に関することであるが、私も含め、せっかちな人は完全に電池がなくなる前に充電したくなる。これは絶対に避けるべきである。

 電池の容量が落ちてしまう。メーカーの取扱説明書には、このあたりのことを書いていない。完全に電池がなくなる前に充放電を繰り返すと、電池がそれを記憶し、いわゆるメモリー効果により容量が低下してしまうのである。リチウムイオン電池は、このメモリー効果は少ないので安心されたい。

 これから、ますます情報端末や次世代自動車の電子制御、およびクリーンエネルギーの蓄積などの観点から、この種の電池の需要の急拡大が期待される。


 半導体実装技術


 携帯端末の需要拡大、ますます高性能化、多機能化、ダウンサイジングが進む原動力は半導体自身の微細加工技術、それを担う半導体パッケージの実装技術の革新である。

 初期に採用されていたDIP(Dual Inline Package)いわゆる端子挿入型に始まりQFP(Quad Flat Package)という半導体のパッケージ周辺にリードを取る方式が採用されてから半導体の表面実装が進んできた。しかしながら、ピンの数が増大する(多ピン化)につれて限界に達し、90年代後半からリードを無くし、パッケージの下にグリッド状の接続部を配置したBGA(Ball Grid Array)、さらには半導体のチップと同じ面積にまで接続ピッチを狭めたCSP(Chip Size Package)が採用されるようになり、電子機器の小型高性能化に大きく貢献してきた。

 たとえば、ビデオカメラがパスポートサイズにまで、さらにはもっと小型化した背景にはCSPの採用がある。現在、BGAは多ピン化対応で大型化し、また、プラスチックBGAが小型化に、テープBGAが薄型化にと類別されるようになって来た。今後ますます電子機器の高速化、新機能付与、カラー化、インテリジェント化が進む。

 さらにはITCに代表されるように自動車の情報化はこれからすさまじい勢いで進展するであろう。したがって、自動車搭載用の制御機器の高性能化にあいまって、小型パッケージの需要は一段と高まるであろう。

 私が所属するエレクトロニクス実装学会で半導体パッケージやプリント基板のロードマップ作りを一昨年から進めてきたが、2005年には従来から使用されているDIPやQFP(現在80%)がかなりの比率で、新しいパッケージ方式に変わると予測している。

通信量の増大に伴う光ファイバー網の構築を


 ゴア前副大統領の提唱のもとに、米国のインターネットの普及率は約40%に達したといわれている。日本でもようやく政府がIT(情報技術)を前面に打ち出して本腰を入れるようになってきた。

 現在のところ日本では、個人ベースでのチャットに代表される携帯電話の普及は、Iモードの導入に伴い、ピーク時には、一日5万台の新規加入者があったとのこと。

 少し古い話になるが、昨年7月の中旬だったか、余りの普及率に基地局が追いつかず、新しい基地局を横浜に作ったが、それでもトラブルが発生とのこと。若者を中心としたこの種の携帯端末としての利用は、今後未だ伸びるであろう。

 しかしながら、さらに大切なのは次世代のための音声とデータ通信量の増大に対して、デジタル回線やケーブルIV回線を利用したネットワークの高速化と大容量化に対する対応である。これを可能にするには基幹線自身を大容量化しなければならない。

 アメリカでは、この基幹線には光ファイバーが中心になっている。光ファイバーの伝送量はWDM(Wavelength Division Multiplexing)波長分割多重と日本語に訳されているが、波長変換、波長の多重(一度に沢山の波長を分割して送る)、波長の分離を高速、高精度、大容量にするものである。これを可能にするには高速、高精度のレーザー発振素子、光ファイバー増幅器、光を波長ごとに分ける分光部品である。

 日本は光ファイバー構築では、アメリカに大きく遅れをとっているが、これら、もろもろの光部品関連産業がテークオフの段階に入ってきた。

 このWDM装置を光ファイバーの両端につければ、一本のファイバーでいろいろな波長を多重に使うことにより伝送容量が従来の数百倍に向上させることが可能となる。

 このWDM技術はDWDMへと進展している。(DはDense 高密度)現在はアメリカでも通信業者間での互換性が未だ取られていない。これからは購入単価の低下、互換性を持たさねば普及のネックになる。また、送信した情報を途中で分岐する(光分岐挿入装置)、複数箇所との情報のクロス接続OXC(光クロスコネクト装置)が必要となってくるが、これらは未だ試作段階である。光ネットワークは多重化ネットワークになるであろう。

 そこで一般の消費者は、ラストワンマイルが光ファイバーになれば安価で大容量で、超高速で、世界全体に情報伝達が出来、経済効果は計り知れない。まだまだ構想段階で実用化に至っていない領域が多いが、いずれにしても莫大な産業になる。


 IT革命は始まったばかり


 いわゆるドットコム関連の株価は、次世代の花形産業と、従来の株価算定評価で使われてきた指標抜きにして一時大暴騰したのもこの夢を買ったのである。現実はそれほど利益がでず、米国ではドットコム産業の496社が4万人以上を解雇し、また91社が破綻吸収された。

 将来は、ネット社会になることは確実でIT革命が始まったばかりである。

 長期的には強気で臨んだほうがいい。

 日本での代表格のソフトバンクは、昨年の暮れ4000円を割るまで大暴落したが、今が買いのラストチャンスかもしれない。

 それよりも日本の企業は、次世代に向かった戦略に長けていないようである。一昨年の上半期のデータによると世界全体のM&Aは円換算で60兆以上、日本の企業がかかわったM&Aは、僅かの一兆五千億程度とのこと。

これらの中で、大型のM&AはITや通信ネットワークに関するものであり、しばしばソフトバンクやソニー、NTTなどがM&Aで話題に上がっているが、世界的に見ると、日本は完全に立ち遅れたと言われている。
 

高速インターネット整備
関東学院大学 
本間英夫
 
 政府の諮問機関であるIT戦略会議が、高速インターネット網の整備の遅れから、このままでは国際競争力の点で、大きく先進諸国に遅れをとると指摘した。IT国家となるためには、超高速のネットワークの整備が最重点課題であると。

 日本のインターネット利用人口は、新聞やテレビなどの報道によると、3000万人くらいであるといわれている。データの取り方にもよるが、どれくらいの頻度で利用しているか、厳密にデータを取ってみる必要があるだろう。

 真に、インターネットを利用している人口は、国民の25パーセントにまでは、到底到達しているとは思えない。先ごろのインパク開会時に、一斉にアクセスがあり回線が繋がらなかった。

 1時間に10万回線、それが一度に1時間に150万くらいのアクセスがあったとのこと。150万人がいっせいにアクセスしたと捉えるのは間違いだと思う。

 私も新しいものにはすぐ飛びつくほうでアクセスしてみた。繋がらない。再度回線を繋いで見る、やはり繋がらない。

 このように、常識として一度繋がらないから、それであきらめる人はいないだろう。特に新規なものには、上手くいかなければ、心理的に、これでもかと、しつこくトライするものだ。

 したがって、おそらく多く見積もって、数十万人の人が大晦日に自分の部屋から、一斉にアクセスしたのであろう。立ち上げ時はしょうがない、定常時は10万回線もあれば十分であろう。

しかしながら、緊急時や何かの出来事で、一斉に情報を取りたいことは必ず起きる。そのためにも政府がITを標榜するならば、容量を上げておかねばならない。

 少し時間がたってから、再度インパクにアクセスしてみた。そのホームページは政府主催であるので、格調高く、且つ、ITを理解させるために分かりやすく作られているものと思っていたが、開いてみて多少がっくりした。

 この種のホームページを構築しているのは、委託を受けた会社の20代から30代の人たちであろう。我々から見ると、どうもついていけない。漫画が多すぎる。

 内容と背景がちぐはぐ、漫画文化に育った人たちからみると、これが当たり前なのだろうか。アメリカのホームページでこんなふざけたような漫画の多いホームページは余り見ない。

 何だか学会のプレゼンテーションでプロジェクターやOHPの背景にばかり凝って、中身が無いのとダブってしまう。それに電話回線からでは通信速度が余りにも遅すぎる。だからこそ、IT革命でインフラ整備が緊急課題なのである。



 私の研究室に現在、ドクターから学部生まで22名いるが、全員どこかのプロバイダーに入っている。

 皆、電話回線を用いているので、ネットサーフィンしようと思っても、遅くていらいらしてしまう。回線使用量も学生にとっては苦痛であり、従って、深夜の11時過ぎからのテレホーダイを使っている。

 オタッキーな学生は、いつも研究室にいるときは眠そうで覇気が無い。夜になるとキラッと目が輝き夜型人間になってしまっている。



 IT戦略会議では、5年以内に世界最先端のIT国家となるための重要施策として、ネットワークのインフラ整備を提案している。具体的には、この一年以内にインターネットへ常時安価な接続を可能にし、2005年までに、3000万世帯が高速インターネット、また、1000万世帯が超高速インターネットアクセス網に常時接続可能環境を整備する、いわゆるブロードバンドの整備を実現するというものだ。

ブロードバンドに対する説明は後にして、先ずインターネットの普及に対するネット人口について取り上げてみたい。


 ネット人口


 昨年11月、民間の調査会社2社が、ネット人口は4人に一人と調査結果を発表している。日経新聞によると、エーシーニルソン社とネットレイティング社の2社が、毎月無作為抽出で数千世帯を対象に、電話でインターネット利用率の聞き取り調査した結果、昨年の11月でパソコンでインターネットに接続した推定人口は、2474万人であったと報じている。しかも、昨年の1月の調査から、1.5倍に増えたとのこと。

 これらの調査結果に基づいて、ITを今後どのように進めるか、国家レベルでのIT革命の戦略が練られ、また、民間では、E‐コマースやE‐ビジネスの戦略が練られるのであろう。しかし、先にも触れたが、この4人に一人がネット人口であると早合点してはいけない。利用頻度が重要である。

 どこの大学でも学生は授業で一度は必ず触れている。全国の小中高等学校でも、正規科目として採用しているか定かでないが、何らかの形で教えているはずである。したがってこのことからも、千数百万人は数回接続しただけということにもなりかねない。

 卑近な例だが、確かに小生の研究室の学生は、何度も大学でインターネットに接続している。利用の方法は人それぞれであるが、有効に利用している学生は22人中5名程度である。

 授業で化学科全体の学生に、パソコンを持っているか、インターネットに接続した経験はあるか、メールのやり取りはしているか、この数年、必ず新学期になると聞くことにしている。3、4年前は、100人中数名しかパソコンを持っていなかった。現在では5割程度になった。学生にレポートはインターネットで送ってもいいと、これも数年前から言っているが、実行した学生は今のところ、総勢400名中10人にも満たない。

また、私の講義に対するコメントを遠慮なくメールで知らせてもいいよと言っているが、今年は60名中10名程度コメントしてきた。このように未だ多くの学生はインターネットを有効に利用していないようだ。

 工学系の学生の中でも、特に電気電子を専攻している学生の意識は高いと思うが、いずれ電気科の先生にこれらの件について聞いてみたいと思っている。

 さて、体連の学生はどうだろうか?

サッカー部の学生が今現在40数名いるが、彼らにはサッカー以外に、もう一つ、自信の持てるものを今のうちから探せと、いつも言い聞かせている。

 また、卒業までに必ずパソコンが使えるようにならないと、どこにも就職が無いぞと意識付けしているが、一向にその気が無い。それでも、しつこく彼らに説いているのだが、最近やっと2人の学生からパソコンを買いました、とメールで連絡を入れてきた。

 このように自分の身の回りを見ても、利用率は決して高くは無い。

 まだ、魅力的なコンテンツが少ない、単にけばけばした?入れ物があるだけ。また通信速度も大きな律速で利用率が上ってない。


ネット社会は何時頃やってくるか?


 各世代に応じた魅力のあるコンテンツ、ビジネスへの有効利用を真剣に考えないと、単に器だけを作ったことになりかねない。

 今のところ、ネット社会のキーワードが一人歩きし、夢を追いすぎ、実は余り期待したほどの大きなビジネスにはなっていないのではないだろうか。

 最近、あちこちのネット販売のホームページを開いてみたが、かなり小さな個人商店でも、おそらく業界ぐるみなのか、街ぐるみなのか、定かでないが、ここまで上手くホームページを作ったなと感心する。これだけ作るのに、かなりのコストがかかっただろうな、でも作った割にはアクセスも少なく、余り商売にならないだろうなと。

皆、同じようにインターネット販売をやるためのホームページを作れば、ぜんぜん差別化できないし、この種の情報が多くなると、情報自体が拡散し希薄化されてしまい、意味がなくなる。

まー・・・、結局は本業に余禄として少し注文がくる位か。

 現在、ホームページを作るビジネスは注文の殺到で大忙しであろう。しかし、実際の効果のほうは、となると今ひとつということになりかねない。

 個人商店の場合は、やはりベースは地域社会密着型で、サービス向上の一貫として、どのようにインターネットを活用するか、考えねばならないだろう。

 我々の業界はどうだろうか。ホームページを構築したことにより、今までよりもビジネスが大幅に増えたという企業はどれくらいあるだろうか。どのビジネスでも同じだが、魅力のある技術を持っていても、何らかの形で宣伝しなければならない。ホームページにその魅力のある技術を上手く紹介できれば、自然にアクセスが増えてくるだろう。そのためには如何に上手くネットを張るか、如何に技術を紹介するか、一度ヒットすれば、もうそのホームページには必ず訪れたくなるような、仕掛けを作ることが大切である。

 今のところ、物流の効率化には効果抜群であろう。迅速化、効率化にはもってこいである。

 すでに、肥大化した物流拠点を整理し、電子化を促進することで、物流コストを大幅に削減しているところが出てきている。今後ますます中間の業者はいらなくなってくる。

また、役所への届け出、申請、銀行や郵便局での支払い、ホームバンキングなどサービス向上にはこれまで以上に役立つであろう。選挙のやり方も、いずれは投票場に出向くやり方から直接電子投票になることも考えられる。

 インフラを整備し、また、全ての人が簡単に安価に利用出来るようになれば確実にネット社会は訪れるであろう。

 アメリカでは一昨年まではドットコムと名が付けば内容はともかくとして株価が一斉に上がった。しかしながら昨年の春頃から、虚業だ、思ったような利益が出ない、赤字続きだと急にドットコム産業が失望売りにさらされ、夢から醒め、設備投資意欲も急激に冷え込んできている。しかしながら、今まさに夢から現実へと選別が始まり、IT革命が緒についたばかりなのである。


インフラ整備としてのブロードバンドとは


このように、今、ブロードバンド時代をまさに迎えようとしており、新聞や雑誌は最近この話題にはこと欠かない。

 ブロードバンドとは、直訳すると「broad」(=幅の広い)、「band」(=帯域)、すなわち、高速なインターネット接続環境を指している。今まさに、ブロードバンドによって、インターネットが本格的に使えるようになり、インターネットビジネスが大きく現実のものとなる。ADSL、CATV、FTTHなどを利用した高速通信のことを指しており、NTTが提供してきたISDNはブロードバンドではない。

ISDNではCDを一枚ダウンロードするのに約10分、2時間くらいの映画の場合は100時間もかかる。この速度では音楽配信をはじめゲームを楽しむことが出来ないし、企業間取引(Bto B)もできない。そこでISDNに替わる高速なアクセス網の整備が求められてきたわけである。

 2000年9月、NTTは、家庭向け光ファイバー網による超高速インターネットサービスを、2002年度までにすべての政令指定都市に、また2005年度までに全国の県庁所在地でスタートするとしている。これは、当初の計画を前倒し、さらに時期を早めたものとして注目され、具体的サービス計画では、料金は月1万~1万3千円を予定している。 

 ホーム分野ではBSデジタル放送が正式に2000年末よりスタート、モバイル分野では、IMT-2000が2001年よりスタート、これらに加え、ADSL、CATV、無線によるインターネットサービスが大きく動きはじめようとしており、さらには、光ファイバーによる大容量通信サービスも2005年を目処に計画進行している。

 ADSLに関しては、3月から本格的に導入されるとのことだが、このサービスは、既存の電話線ケーブル(メタリックケーブル)を介して、高速なデジタル通信と、アナログ音声通信とを同時に実現できるものである。データ通信速度は、下り方向(局→加入者)が最大で6メガビット/秒程度、上り方向(加入者→局)が 1メガビット/秒の伝送速度で、ISDNの8から23倍の速度である。

CATVの光ファイバーを利用したインターネット接続もCATVの普及に伴い利用者が多くなってきている。私の住んでいるところも敷設されたので早速入会した。

このADSLおよびCATVは、光ファイバー網への過渡期である。CATVは、集合住宅への対応が難しく、ADSLは、その仕組み上、電話局から2km程度の距離しか利用できない。人口密集地帯でなければ採算が合わない。多様化するインターネット接続では、敷設資金に比べ、その利益率は低いと云われている。

 まだ先の話になるが、この光ファイバー網の開発競争はT(テラ)ビット/秒単位の伝送速度まで達している。昨年12月、米長距離通信大手のワールドコムが始めた広域ネットワーク基盤の実証実験「テラビット・チャレンジ」に富士通の光波長分割多重(WDM)装置が採用された。WDMは1本の光ファイバーに多数の光波長をまとめて効率的に伝送する技術。既存の光ファイバー利用が可能なため、低コストで大容量化できるとのこと。このように、無限に近い情報量拡大へのニーズは、とどまることを知らない。

テラの次に、いずれP(ペタ)ビット/秒の通信網が求められる時代を想定し、WDMと全く違う方式での情報伝送システムが研究開発されている。極めて短い時間に高エネルギーの光パルスを出すフェムト秒レーザーを光源に用い、複数の波長を合成してできるフェムト秒パルスを回折格子に通して複数の波長に分解し時間軸を延長、それぞれの波長に光信号を乗せてから逆変換するそうだ。

 このような技術開発に対して、日本企業が先行しているにもかかわらず、日本のマーケティングは動きが鈍い。これでは外資通信企業に先を越されてしまう。

グローバリゼーションと共に、数十年来続いた経営体制の構造改革も必要である。真のIT化は、技術開発段階からトップダウンではなくn対nの複雑な体系になり、これらが相互に影響し、ユニークな意見交換が可能となる。

このようにIT化には、インフラ整備のみならず、経営体制の変革も重要なのである。

現在のところ製造業のプロセスに対するIT化に関して、あまり紹介されていないが、まさにこれから重要なのは製造プロセスのIT化であり、我々の研究室では、マイクロな化学センサーの開発に本格的に着手する。
 

学生は大学の財産か
関東学院大学
本間 英夫 
 
 産業界向けの新聞のコラム欄に、「学生は大学の財産」と研究実績をあげるには、もっと学生を活用すべきであるとのコメントが出ていた。学生を道具扱いするような書き方であったので反論したくなってきた。

 産業界の人の意見であったと思うが、ともすれば効率の追求にのみ力点を置いてきた人達にとっては、大学の研究に対して、歯がゆい思いがあるのかもしれない。しかしながら、大学は教育と研究の場であることを忘れてはならない。

 折に触れて、雑感シリーズに学生のことを書いているが、指導する立場の人間は愛情を持って接するようにしなければならない。自分の考えを強引に押し付ける手法には限度があり、発展性が無い。

 学生は3年生の終わり頃、1月の下旬から2月上旬に研究室の配属が決まり、卒業研究(卒論)を中心とした最も充実した学生生活を送ることになる。実力をつけ、自信を持って社会に出て行くには、若干期間が短いが、1年間で主体性を持たせ、自ら考えることが出来るように養成するのである。

 卒研生はドクター、マスターらの学生と実験を通して、研究の進め方や考え方を学ぶ。また同期の学生とも議論する。このようにして、実験を中心とした生活から、それぞれの分野での工学的な考え方を身につけ、自らが考えることによって成長していく。

1年後には、社会に巣立っていくが、そのぎりぎりの時点で、もう少し学びたかったと感想を述べる学生が多くなってきている。

 特に最近は、どこの大学でも大学院への進学率が急上昇し、産業界側も大学院修了者の採用にシフトしてきている、したがって、彼ら自身もう少し実力をつけて、社会に出て行かねばならないと思うようになってきた。

 以前にも書いたが、我々の大学では大学院の進学率が未だ20パーセント程度である。したがって、各研究室で大学院に残る学生は平均2名、その学生と大学院の2年生が主体になり、毎年2月から3月にかけて新4年生に引継ぎが行われる。

 3年間、遊び呆けてきた?学生がいっせいに、今まで経験したことの無い研究に着手することになるので、緊張でどーっと疲れるようであり、緊張感がほぐれ、自分で内容がある程度理解できるまでに約1ヶ月を要する。

 昨年から、進捗報告会を2週間に一度テスト的に実施したが、この方法の有効性が極めて高いことが産業界の方々との技術交流会、他大学との報告会で確認された。今年〔4月からの〕も、必ず2週間に一度、半年間くらいは報告会を持つことにした。

 また、私を含めて大学院生と卒研生との信頼関係は極めて大事であり、相互に報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を行なうよう指示している。

 実験で面白い結果が出ても、話し合う事がなければ、その後の広がりを得られない。当初の目的とは異なった結果からも、話し合う事で新たな発見が得られるかもしれない。意思の疎通が大切なのである。

 昨年の暮れから、私の提案でアイディアミーティングを、昼休み時にとる事にした。来年は、もう少し積極的に実行するつもりである。

 先日、長野県の善光寺に出かけた際、参道で仏心鬼語と言う言葉が目にとまった。仏の心を持って、厳しく育てるのだ。

 社会に出るまでの、短期間であっても尊い時間であったと思えるように、勇気と自信と愛情を持って巣立っていけるように、学生のうちにできるだけ多くの事を学び、体験してほしいのである。

 指導者が学生を道具や手足のように扱い、大した説明もせずデータ取りだけを行なわせ、成果だけを期待するようなやり方では、学生を成長させ自信を付けさせる事はできないし、愛情ある教育だとは到底言えない。

 また、研究に限らず、政治経済・時事問題などを、普段から学生との会話の中に盛り込み、また、自らの経験や事例を織り交ぜながら話すことにしている。学生に広く深く物を考える事ができるように、知識が偏りをおこさぬように、話して聞かせることも教育の一つであろう。


罪を憎んで人を憎まず


 先日、ある先生の授業で課題を提出したはずなのに、成績が不可なのは納得がいかないと、私の元へ学生がやって来た。レポートを提出したと言う学生と、それを受理していないと言う先生との水掛論である。埒(らち)があかないので私の元へ来たらしい。その先生に聞いてみると、以前、定期試験で不正疑惑があった学生であり、信用できないと言うのである。

 教師が学生を信用できなくなったら、おしまいである。騙されている可能性があるとしても、疑うべきではない。私はその先生に言った。騙されても騙すなと。また、例え不正を行なった学生に対しても、挽回できる機会を与えるのが教師ではないだろうかと。


日本の文化


 先日、学生との昼食のミーティングの際、博物館や美術館、N響ホールのクラシックなど、行ったことがあるか聞いてみた。

大多数の学生は行ったことが無いという。興味が無いという。

 なぜ行かないか。なぜ興味が持てないのか。

 それは、今の教育体制や家庭教育が、おおいに関係している。私が小学生の頃〔昭和20年代後半〕日本は貧乏であったが、小中学生の時は教室でクラシックを聞かされた。中学から高校生になった頃は、N饗の地方講演にはわざわざ1時間以上かけて出掛けたし、心のゆとりが今よりもあった様に思う。

 今、ゆとり教育が論議され実行に移されているが、そのゆとりが文化に親しむ時間に当てられるのではなく、実際は受験塾の時間に当てられている。街では滅多に子供を見なくなってしまった。

 さらには、日本人よりも外国人のほうが日本の文化に対して理解している場合が多い。そういえば、この春から我々の大学に親鸞を研究したイギリス人が教養科目教室に専任として赴任することが決まっている。

先日、外国の人にお節介にも、ある寺院でその歴史的背景について説明したら、当人のほうがよっぽど深く知っており、恥じ入ってしまった。日本の四季、すばらしい自然、伝統文化、芸術など、私も含めて学生と散策したり、鑑賞するゆとりを持ちたいものである。


食生活の変化


 野菜に含まれるミネラルやビタミンなどが昔と較べて、大幅に減少しているようだ。トマトやキャベツを初めとして野菜類は本来の味がない。素材自体で、充分に旨かったはずだが。

 以前は『成人病』と呼ばれていた病気が、若年齢化を起こして『生活習慣病』と呼ばれるようになった。これについても食生活の変化が起因している。成人病と呼ばれるぐらいだから、ほとんどが大人になって発症するものであった。「高血圧」「糖尿病」「動脈硬化による心臓病や脳卒中」そして「がん」などである。これらの病気は、食生活、運動、休養、喫煙、アルコールなどに密接な関わりがある。

 若年齢化を起こしたのは子供たちの生活習慣が昔と変わったためであろう。疲れるからと運動をせずにテレビゲームで遊び、塾や習い事で忙しくなり、テスト勉強などで夜遅くまで起きている事による睡眠不足、コンビニエンスストアやファーストフードなどでバランスの悪い食事を取る。

 中には親も黙認しているのか喫煙、アルコールで体はぼろぼろ。不規則な生活から体調不良になるのは当然と言える。

 我々の子供の頃は、皆お腹の中に寄生虫を飼っていた?

当然、小生のお腹の中にもいたと思われる。しかし、学校で一斉に出されたあのサントニンと言ったと記憶しているが、海藻の煎じたような虫下しは、飲めたものではなかった。

 優等生は先生を意識して、素直に飲んでいたが、私のような悪がき連中は、アルミの容器にいっぱい注がれていた海藻をそーっと流しに捨てたものである。アルミの器で思い出したが、給食時のスキムミルクも飲めたものではなかった。

 話を元に戻そう。

最近の野菜や食品には、殺虫剤、添加剤が付着又は吸着しているので虫がつかない。したがって寄生虫はいなくなったが、今までに考えられなかったような病気が我々の体を蝕んでいる。



以上、今回ここに書かれている文は、日頃学生が小生の話を聞いて、それをまとめたものである。

 多忙なので、誰かゴーストライターになってくれないかと、昼食時にお願いしたことがある。

 ある大学院の学生、ここでは名前を伏せるが、高等学校から大学時代に至るまで、運動部に所属し、ほとんど勉強をしたことが無かった学生が、私の日ごろの雑談からいくつかピックアップし書いてくれたものを少し手直しをした。

 おそらくこの数年間の間に卒業していった連中は、彼がここまで延びたことに、驚きを感じるであろう。卒業研究の1年間と大学院の2年間で、他の学生や先輩と論理的に話が出来るようになったし、口頭発表も自分でこなす。学会への投稿論文も2編書いた。長足の進歩である。
 

エレクトロニクス実装学会を終えて
関東学院大学
本間 英夫
 
3月21日から23日までの3日間、我々の大学でエレクトロニクス実装学会の学術講演大会が開催された。候補として挙げられたのはちょうど1年前である。多くの大学、特に私学では大学の宣伝になると学会やシンポジムの開催を歓迎している。
 2年前にも、表面技術協会の春の学術講演大会を引き受けたが、その時は何か自信と誇りのようなものを感じていた。というのは、表面技術では本校が老舗?であり、表面処理産業にかかわっている人であれば我が大学を知らない人はいない。すでに500名以上のOBがこの産業界に携わり活躍しているからである。
 したがって、講演大会の参加人数はある程度予測できたし、参加者に納得いただけるであろう自信もあった。準備期間をいれて3年前から学長、学部長、事務方に遺漏のない様に色々、事細かにお願いをした。結果は参加者をはじめ、協会の役員からも不満は無く満足して頂いたようであった。
 さて、今回は同じ中堅学会ではあるが(表協は会員数約4000名、実装学会は約3000名)エレクトロニクス実装に関する学会であり領域が広い。
 我が研究室で注力している表面処理(特にめっき)は、この領域では要素技術として、ほんの一分野にしか過ぎない。この学会の研究分野は配線板製造技術、材料技術、半導体パッケージ技術、回路実装設計技術、信頼性解析技術、電磁波特性技術、環境調和型実装技術、光回路実装技術、マイクロメカトロニクスなど分野が多岐にわたっている。まだ新しい学会であり、今までは都心に近い大学で講演大会が行われてきた。都心から、かなり離れたところで開催するのは今回が始めてである。
 設立当初からこの学会のお手伝いをしてきたので、1年前に事務局から講演大会の開催依頼があったときは、若干の不安はあったが是非成功させねばとの思いがあった。事務局が依頼しても、学会の理事会での承認を得なければこちらも正式に動けない。
 5月に理事会で正式に本学で開催することが決まり、それから直ぐに大学に対して要請書を学会から作成してもらい準備に入った。
 今回は、小生が学会の庶務理事をやっていた関係で、学会の役職者が講演大会の実行委員長を兼務するのはどうも筋が通らないということで、同僚の山下先生に実行委員長をお願いした。
 山下先生には、今後、伸びる領域だからと、数年前にこの学会に入会していただき、本学会に関連する研究テーマもみつけていただいたし、前回の横浜国立大学で行われた時も実行委員として活躍して頂いた。現在では我々の研究室と共同研究も一部行っている。同じ大学の中で、共同研究を行うことは極まれであるが、これからは従来の蛸壺?研究ではなく、お互い協力して新しい領域ににじみ出ることが、我々研究者に必要なことだと常々思っていた。
 我が大学には、光化学を専門とされている新進気鋭の教授もおられるし、また有機材料を専門としている助教授もいる。これらの方々にも是非、本学会に入会していただき活躍の場を広げていってもらいたいと願っている。
 さて、学内の事務方との折衝は、山下先生と小生で昨年の8月頃から始めた。どちらかと言うと、せっかちでオッチョコチョイの小生と、じっくり綿密に計画をする山下先生、いいコンビだったと思う。大学の役職者、事務方には小生のほうから渡りを先ずつけることにした。
 小生のほうが少し山下先生よりも先輩なので、事は上手く運んだ。前回の表面技術協会の時は、大学からの寄付を頂いていた。冒頭にも触れたように、ほとんどの私学では学会を開催するにあたっては、少なからず援助している。
 今回は、大学も冬の時代に突入して、無理にお願いするのもとの思いから、当初は援助のお願いは考えていなかった。しかしながら開催数ヶ月前になって、これから頻繁に開催される大会運営上の打ち合わせ、会期中の会場整備、受け付け、進行係りの動員等、色々イメージしてみた。
 特にこの学会は、産業界からの参加者が多く、テーマによっては一つの会場に400名以上ドット押し寄せることが多い。過去の例では何度も会場を変更していた。その際は間髪をいれず会場変更の案内、設営を迅速に行わねばならない。今回も同じ事が生ずることが予測された。援助して頂ければ、アルバイトの学生も動員しやすくなるので、結局は今回もお願いすることにした。
 さて、講演の申し込み締め切りは12月の末であった。申し込みが始まって、例年から見ると出足が悪かったらしく、事務局から講演申し込みが少ないようですと連絡があった。
 大体この種の申し込みは、大学の入学試験の願書や手続き締め切りとほぼ同じで、締切直前にどーっと押し寄せるものである。それでも事務局が心配しているし、折角、我々の大学で開催されるのに、発表件数も少なく貧弱な内容になってはいけないと、初めての試みであるが、思い切って、研究室から13件まとめて講演をすることにした。
 今年の3月までは、ドクターが4名、マスターが5名そして学部生が12名であったので、何とか質を落とさないで発表できるであろうと踏んだ。山下先生の研究室からも1件発表することになった。
 なんと締め切りが終わってみると、発表件数が約180件で新記録だという。うれしい悲鳴というか、これだったら我々の研究室の発表はいつも通り4、5件にしておけばよかったのにと少々悔やまれた。13件も発表することにしたのだから、これからの2ヶ月は恥ずかしくない発表をするための努力をしなければいけないと新年早々決意した。
 さらに今回は、小生が特別講演をやることに決定したので、関東学院大学として発表する件数は14件にもなる。
 実装の最先端を担っている技術者の多くが参加する学会で、果たして我々の発表が、また特別講演が通用するのだろうか?満足いただける内容になるだろうかと正直、不安な気持ちであった。
 1月の中旬から、プログラム編成が始まった。小生は、実行委員のメンバーではないので、全てプログラムはお任せするしかなかった。印刷にまわる前のプログラムを見せてもらったが、初日、朝の10時過ぎから小生の研究室の発表がずらーっと5件も並んでいる。昼食時間1時間の後、1時から小生の特別講演。関東学院オンパレードだ。
 もしも、小生が実行委員のメンバーになっていれば、小生の研究室の発表は、キャンセルがあったときの穴埋めや、朝一番、または一番最後の発表にして、バッファーの役割に使うのもいいのではないかと思っていたのであるが。
 プログラム編成の結果、コアタイムに連続の発表になっているので、学生の発表は見向きもされず、他の2つの会場が満杯になるのではないかと、逆に心配になった。また小生の特別講演も魅力が無く、参加者は昼食の延長で、休憩時間として利用するのではないかと、これまた不安。もし最悪その様になったら少し恥ずかしいなとの思いがあった。
 まー、現実にその様な状態になっても、学生の発表も、小生の講演も、聴講された皆さんに満足していただけるように努力しなければと、学生の発表と小生の講演内容をいつもよりも吟味した。
 さて、いよいよ大会当日がスタート。
講演が始まる5分位前、200人以上入る会場が未だ半分も埋まっていない。どの学会でも朝一番はこれが当たり前だが、最初の発表は企業の発表であり、しかも配線板の専門領域ではリーダー的存在の方々の発表である。もう少し集まってもいいのだがと不安になる。
 講演が始まって5分過ぎから、ふーふー汗をかきながら受付に来る人が増える。京浜急行で事故があり、電車が15分くらいすべてストップしたとのこと。講演を遅らせるわけには行かず粛々と進める。最初の講演の終わり頃になると会場はほぼ満席になってきた。
 いよいよ、我が研究室の学生の発表がはじまる。小生も気になるので、本部からその会場の様子を見に行っていた。最初の発表が終わった直後に会場から、どれくらいの人が、他の会場に移るか心配である。誰も移らない。逆にどんどん増えだした。小生は安堵し、本部に戻る。
しばらくして、学生が本部に詰めている小生の下に小走りで駆け込んできた。会場を変更したほうがいいのではと。
 直ぐに小生がその会場に走り、様子を見る。確かに立っている人の数が多くなっている。学生の発表を、こんなに沢山の方々に聞いていただいて、学生も自信になるし、小生自身が内心ほっとした。
 3会場同時平行で講演が進められているが、もう一つの会場で実装の関係のテーマが進められていたので、少しくらい立ち席があっても参加者はテーマ毎に動くだろうと、その場は会場変更をしなかった。
 本部に小生が詰めていたので、学生の発表はほとんど聞けなかったし、いつもは質問で学生が回答に困ったら、小生が回答をするようにしていた。今回は全て学生に任せなければならなかった。逆にこれが学生のとってはいい経験になった。昼の発表が終了するまで学生が発表した会場は満席であった。
 昼休みに入る。どーっと3つの会場から堰を切ったように人が溢れ出し、皆、食堂へと向かう。総勢で500名を越えている。実はメインの食堂が改装中で、今回は軽食を販売している館を使用するしか手が無かった。
 案の定、長蛇の列、メインの食堂の改築が終わっていればと悔やまれる。1時から小生の特別特別講演が始まるが気が気でない。時間通りに始めねばならないので司会の先生が、1時きっかりに小生の紹介に入った。
 400人入る部屋で6割程度の聴衆、テーマはマイクロファーブリケーションとめっき 副題をプラめっきから半導体のめっきまでとした。
 先ず大学の歴史から話を紐解き、すでに50年近く前に、現在注目されている技術のルーツは本学であると話を始めた。その話を始める頃には、ほぼ満席状態になっていた。
講演の内容を次号で紹介することにする。
 3日間の会期で延べ人数が1600名を越え、事務局の話では過去最高を記録したとの事。
研究室の学生を総動員した。卒業式を間近に控えているというのに、学生は不平一つ言わず、よく手伝ってくれた。彼らにとてもいい経験になったと思う。
とりあえずほっとした。

エレクトロニクス実装学会での特別講演
関東学院大学
本間 英夫
 
 
 特別講演は、その道の権威か、または主催校の著名な先生にお願いするのが一般的である。さてー困った。誰が主催校として目玉になるだろうか。なかなかいいアイデアが浮かばない。えーい、面倒だ。いっそのこと、もし、その道の権威が人選できない場合は当て馬として、小生がやってもいいと事務局に話したのが学術講演大会の2ヶ月くらい前だった。 案の定、実行委員会でいい案が浮かばず、小生が講演をすることになってしまった。 講演時間は50分で、一般講演よりは長いが、今まで引き受けてきた依頼講演や招待講演と比較すると、少し時間が短い。そこで当学会で5、6年前に小生がネーミング提案したマイクロファーブリケーション研究会に対する思い入れがあること、また現在さらに微細化してナノファーブリケーションが話題になっていることから、タイトルはマイクロファーブリケーションとめっき技術、副題を「プラめっきから半導体のめっきまで」とした。 当初の構想では、講演の冒頭で、35年位前にプラめっきを世界に先駆けて工業化した大学であるとアピールするつもりでいた。 たまたま、関東化成で3月中旬に学会のリハーサルをする計画があったので、学生ともども出かけた。いつもは気にしないのであるが、図書室で皆と歓談しながら昼食をしていた。そのとき、中村先生の学位論文が目にとまった。この学位論文は小生の部屋にも、一部保管してあったのであるが紛失し、もう30年以上になる。 おそらく学生が自宅に持ち帰り、そのままになってしまって、返せなくなったのであろう。その他にも、現在絶版となっている貴重な、いくつかの本が無くなったままだ。 一度OB会の席上で、諸君の部屋の片隅に返却するのを忘れて、眠っている研究室の蔵書があれば、何時でもいいからソーッと、小生の研究室の書架に返しておいてくれないかと、お願いしたことがある。 学生にとっては、それほど貴重に感ぜず、今となっては返却できないのだろう。もうすでに廃棄してしまっているかもしれない。 話を戻すが、中村先生の学位論文の公聴会に配られた小冊子は研究室に2部くらい残っているが、オリジナルの学位論文を実際見たのは、左記の理由でもう30年位前である。このオリジナルがなくなる前に、当時の卒業生が青色の湿式コピーをしたのを記憶していた。 小生は15年位前にそのことを思い出し、それをまたコピーしたものを研究室に保管していたのである。 したがって写真は細部がボケているし、今回の偶然の発見は、昔の恋人に再会したような、うきうきした気持ちにさせてくれた。現在、関東化成の技術のトップになっている小生の研究室の豊田君に、しばらく先生の学位論文を借りる旨伝え、研究室に持ち帰った。 おそらく、最近は全く閲覧されていなかったのであろう。手書きの分厚い論文である。

今注目されているビアフィルが!

 緒言、実験方法とページを開いていくと、セピア色になった写真がでてきた。実は先生が50年近く前にレベリングを調べる際に、どうやってV字溝を切っていたのか、以前から知りたかった。すでに当時から精巧なV字カットの試験機があったとは! しかもそのセピア色の写真から小生は愕然とした。

今から35年位前、関東化成が事業部時代に使っていた大学の実験準備室が、小生の居室になっていた。そこには埃と油にまみれ、大きさが小型のクーラーボックスくらいで、ものすごく重い、なんに使われたのか分からない機械が置かれていた。付属品があれば判断できたかもしれないが、オリジナルの先生の論文を見ていなかったので、当時の学生と廃棄処分の日に他の使えなくなった器具類と一緒に捨ててしまった。装置の写真と、それを用いて当時先生が研究しておられた光沢青化銅めっきの研究結果を示すが、なんと今まさに実装関係の最大で、しかも緊急のテーマになっているビアフィルに類似する研究が、すでに50年近く前に行われていたのである。4、5年前からミクロンオーダーの穴に電気めっきや無電解めっきで銅を埋める実験をやっている。穴が埋まったかどうか判断するには、そのサンプルを透明な樹脂の中に埋め込み、そのミクロンの穴の場所を研磨しながら探る。ちょうど穴の中心のところまで精密に研磨しその断面を観察するのである。大変な忍耐と緻密性を要する実験である。それを研究室の学生は毎日のようにサンプルを作成し観察しているのである。もう少し簡単に観察出来ないか、V字のレコード針を用いて出来ないか、一度検討したが余り上手くいかなかったので、従来通り穴を観察することにしていた。頭の片隅には、中村先生の学位論文の中のV字の溝をどのようにして作成されていたのか知りたかったのである。 


講演のストーリーの再構築

 よーし、講演ではプラめっきから話すのではなく光沢青化銅めっきから話さねばならないと。現在、まさにビアフィルや半導体の銅配線いわゆるダマシンプロセスのルーツが50年前になされていたのである。 先生の論文を見ると、引用文献にはドイツの貴金属研究所の創始者であるラウブ博士の論文が引用されていた。 JAMFの海外研修で、20年位前に晩年のラウブ博士にお会いして感激した記憶がよみがえる。おそらく同時期にドイツでも同じ研究が進められていたのであろう。 講演では、先ず本学が産学協同のルーツであること。ビアフィルやダマシンで検討されている添加剤や、パルスめっきが50年も前にすでに検討されていたこと、次いで間髪をいれずプラめっきの開発へとつながり、しかも世界に先駆けて工業化したこと。無電解めっきのセオリーである混成電位論は兄弟子のドクター斉藤が提案したのであると。その後、小生がその伝統を継承し、すでに20年以上前に1ミクロンのマイクロパターンを無電解めっきで形成したことへと話を続けることにした。 おそらく聴衆のほとんどは、関東学院大学と表面処理の関係について、うっすらと了解しておられたであろうが、こんなに歴史があるとはご存じなかったと思う。いい機会を与えて頂いたと感謝している。 さて、このように産学協同のルーツを枕に語った後は、小生の研究室での最近の成果を中心に話した。次号では、その内容を紹介する。  
 

見込み違い
関東学院大学
本間英夫

 
 携帯電話は世界の需要2億8千万台が7億台に増えるとの予測から、昨年電子部品メーカーは、こぞって膨大な設備投資をした。

発注が従来の3倍にもなると言うんだから、いずれの企業でも建物の増築や設備投資を積極的にやってきた。ところが、昨年の9月から10月頃にかけてどうも様子が一変した。相次ぐ注文のキャンセル。それもゼロの数字である。なぜ!経営者はじめ責任者は積極的に設備投資を進めてきたのに自分の目を耳を疑ったであろう。

発注は、携帯電話4億台分で、その内1億台分は売れ残り在庫となってしまった。したがって、2千万台しか増えなかった勘定だ。需要予測が大きく外れたことになる。

携帯メーカーは膨大な売れ残り携帯電話在庫を抱えて、膨大な赤字発生となってしまった。部品生産能力を3倍に上げた各部品メーカーは結果として、稼働率を上げて部品を値下げし、生き残りを賭けた競争に入っていかねばならず、ますますデフレスパイラルの泥沼にはまり込んでいく。

関連の装置、薬品メーカーも痛手が大きい。

4月下旬大手電機メーカーの昨年度の決算が発表になった。ほとんどが増収増益、しかしながらその利益の大半は昨年の上期に集中し、下期は半導体を初めとしてエレクトロニクス関連企業は需要停滞により利益を上げていない。1999年後半から始まったDRAM好況は僅か1年で変調をきたした。インテルの業績見通しが下方修正され、その後ハイテク株が軒並み大幅にダウン。

いわゆる「インテルショック」である。したがって、今年は各社とも相当厳しい年となりそうだ。


予測は難しい


携帯端末機器、当然部品は限りなく小さく軽量に高密度になっていく。当然これらの製品に関連する製造業では微細加工の占める割合が多くなる。しかも、そうなってくると今までの設備はどうなるか。

当然陳腐化し、新しい設備を導入しなければならない。勇猛果敢に攻めの経営とばかりに設備を更新し、さてこれからと準備が整った段階で、その仕事はありません。東南アジアにて生産することになりました。あるいは、もうその部品は使いません。他の方法にします。エレクトロニクスメーカーも部品供給メーカーもグローバルな視点を持っていないと大変なことになる。今回の携帯電話は、この種の技術競争というよりも、需要予測の完全なる思惑外れ。

 もう一つ卑近な例としてハードディスク。パソコンの需要拡大と共に数年前まで、アルミのハードディスクは、生産が追いつかないくらいの需要拡大期にあった。それが、その後のパソコンの需要一巡で、生産量が停滞から下方に向かってきた。アルミのハードディスクはご承知のようにめっきが使われている。

 磁性膜をアルミ上につける前に、20ミクロン程度の無電解ニッケルめっきが被覆される。もう10年以上前になるが、めっき業界で積極的な経営者はこの仕事を取り込もうと動いた。しかし、これは大型の設備を要するし、また、めっき工程はディスク製造のキーになる要素技術ではあるが、一工程に過ぎない事から参入しなかった。これは正解だった。

 結局は、数社の大手のアルミメーカーが下地のニッケルめっきをやることで毎年増産が続いた。設備メーカーも薬品メーカーも拡大基調であった。しかし、パソコンの需要一巡でそのテンポは急激に落ちこんだ。

 実はそれだけではないのである。ディスクの記録密度を向上させるには、書き込んだり読み取るためのヘッドを小さくしなければならない。そのヘッドは、10年前200ミクロン程度の大きさのコイルから作られていた。このコイルにもめっきが使われている。それが5年前には百数十ミクロンで、それほど小さくはなっていなかった。

99年には100ミクロン前後の大きさで、95年以降の5年間は、あまり微細化が進んでいなかった。しかしこの間に、着々と研究が進められていたのである。なんと99年から2000年の1年間で、ヘッドのコアの大きさが10分の一の10ミクロンになったのである。

 ということは、同じ大きさのディスクに今までよりも、何十倍の記録が出来る。または性能を同じにするのであれば、アルミディスクを何十分の1かに小さく出来ることになる。したがって、アルミを用いなくても、これ位密度を上げれるのであれば、ガラスの小さなディスクでもいいことになる。パソコンに使われるディスクは、このようにして、今までの5インチくらいのものが、コイン大の大きさで同じ記録が出来るようになった。実際にかなりアルミがガラスに変わったのである。

 さて、設備投資を積極的に展開してきた会社はどうしようもない。設備はやむなく廃棄しなければならない。この種の需要予測、判断のミスは命取りになってしまう。エレクトロニクスの領域では体力がないと、また利益をサーッとだし回収を早くしないと、大変なことになる。一つ判断を誤ったら一巻の終わりである。

 現在、日本全体が土地、金融を初めとして不良債権で大変な事態に追い込まれている。

 このような事態になることに対して警鐘を鳴らしていた専門家は多かった。国の間違った舵取りが、この事態を生んだと後講釈しても仕方が無い。

 中村先生は7、8年位前だったか、いつもこれから大変だぞ、俺は先は長くないから関係ないがな、と口をすっぱく言われていた。

トレンディにもその事が書かれている。

 話を戻すが、アルミディスクに関しては予測できなかったのか?受身の経営をやっていたから予測できなかったのであろう。技術に関しては、常に5年から10年のスパンで、先を予測して開発をするグループを置いておかねばならない。

 自社内で開発をきちっとやり、グローバルにウオッチし技術関連のシンポジウム、国際会議、学術講演大会、その関連領域の大学とのコンタクトを通して、予測は出来るはずなのだ。

 余り大局的には判断できないような私でさえ、いつも講演のイントロで、まさに、このコイルを例に上げ、また回路のロードマップを例にあげ、先を予見する事の重要性を説いてきた。

なぜそれでは大手の企業で知識や情報をもちながら、こんな大きな失敗をするのか?

それはいつに物まね社会であったことに起因しているのではないだろうか。自ら積極的に開発投資をやってこなかったので人材が育っていない。いつも外国崇拝主義で企業内での開発をおろそかにしてきた付けが回ってきている。ちなみに、リーダー的な企業は常に新しい創造に向かっているので、逆にこの種のリスクは余り無いだろう。彼らの多くは国際的な視野に立ち、日本で発表する前に国際会議で発表しトップ集団と情報を交換している。基礎的なところでは大学との関係はきちっと連繋しながら。

 今まさに大変革が各企業ですさまじい勢いで行われている。この表面処理業界においても、まさに21世紀を担える企業作りを着々と進めている会社が、実はいくつかある。今までの下請け、受身のイメージを払拭し、自ら表面処理の重要性をアピールし、それが現実に機能してきている。


身近な需要予測 e‐ラーメン


 半年くらい前、水を注いで後は電子レンジでチン。e‐ラーメンの発売間近と、日経産業新聞に小さな記事が載っていた。学生に発売日、いろんな種類のe‐ラーメンを買ってくるように言っておいた。さて当日学生5、6人と何種類かのラーメンを電子レンジで調理?試食してみた。味はそんなに悪くは無い。

 しかし、今までのインスタントラーメンと比較して、電子レンジで過熱する時間が少々長い。これではインスタントではない。また価格が20%くらい高いらしい。これも需要予測の読み違えであろう。スーパーでも、余り大きくブースを確保していないようだ。インスタントのラーメンに関しては、各社熾烈な戦いをやっている。テレビの特集番組で報道されたことがある。

 商品開発の企画部が新しいコンセプトの元に、このe‐ラーメンも考え出されたのであろう。勿論当然ながら、主婦や若者のモニターからの意見も参考にしながら発売に踏み切ったのであろう。

 モニターは、おそらく有料でアルバイトのような形式を取っているのであろう。とすれば、データは会社よりになってしまう。e‐ラーメンといえば時代にマッチし、新鮮さと清潔感がイメージされる。包装もなかなかしゃれている。だけど食品だからイメージだけでは駄目で味で勝負だ。時間がかかり、味も今までのものと比べて変わりがないとすれば、私のように何でも新しいものに飛びつく連中が、一度購入したらそれでおしまい。

 その後、下宿している学生からこの話は全く聞かないし、我が家の食事担当者はまずe‐ラーメンの意味が分からないだろう。実際、販売半年になるが、夜食やちょっと腹ごしらえにと台所の隅にボックスが置いてあるのだが、一度もこのラーメンは入っていない。

研究室でも、学生が時々インスタントラーメンを買ってくるのが、私と試食した後は、e‐ラーメンは全く研究室では不評のようである。

 担当者はおそらく、かなり期待して自信を持って発売したのであろうが。需要予測はなかなか難しい。

 一方、マスコミによる選挙予測は、かなり確実である。事前のヒアリングを初めとして、ノウハウが蓄積されている。

 来月の参議院選挙はどうなるだろうか?マスコミの取り上げ方で、票が一気にいずれかの方向に振れる。今回の自民党総裁選は、結果としてマスコミを上手く利用した形になった。4人の候補者は誰一人欠席者は無く、ほとんど全てのテレビ局にはせ参じ、自民党をアピール。他の政党もマスコミの有効性を認識しているので、焦りからか、テレビジャックと批判。国民から遊離していた永田町の論理から国民世論へ。

 小泉総裁選出の経緯は、明らかに新しい胎動を感じる。小泉氏が総理総裁となった場合、短期的には株価は低迷するが、抜本的な改革をすれば長期的に株価が上昇するとするのが一般的な見方。国民的な人気が一気に上昇している。

 ヤフーのサイトに小泉新総裁は何点かというのがあった。確か80点以上が投票総数の80%を占めていた(その後新聞に新総裁の支持率80%と出ていた)。

 この人気をバックに、参議院選挙は一転自民党が有利に展開するのではないだろうか。いままでは、発足時に高い支持率を得た政権は短命に終わっている。

 しかし、党内各派閥の従来のしがらみを国民的な人気で打ち破り、不良債権処理、構造改革を積極的に実施すれば、長期政権の可能性大である。抜本的な改革の推進は一部では大きな痛みを伴い、日本経済に一時的に打撃を与えるが、その後は健全な日本が復活する。

果して、シナリオ通りに展開するだろうか?
 

日本型システムの転換期か?
関東学院大学
本間英夫
 
 「相談があるんですが」卒業生からの、このフレーズから始まる電話、私は用件を聞く前にすかさず「辞めるのか?」と切り返す。ほとんどが会社に対する不満、同僚や先輩との人間関係から嫌になって転職したいというのである。

 この種の相談は滅多に無く、数年に一度くらいであった。今までは事情を聞いて余程のことが無い限りは、今は凌ぎの時、とやかく文句を言う前にしっかり能力をつけるようにと諭(さと)してきたものだ。

 しかし、この数ヶ月、辞めたいとの電話やメールが続いている。今までの理由とはかなり違う。仕事が極端に少なくなり残業カット、ボーナスカット、配置転換、能力給を重視した年俸制の導入、先行きに対して不安を感じている。

 だけど、辞めてどこへ行こうというのか?同じ業界にて転職しようとしても、どこも同じ状況だぞ。現実は多くの大量生産型の仕事は、海外の賃金の安いところにシフトしている。今までの大量生産を中心としたシステムが大きく変わろうとしている。

 君が今後とも、技術をベースに生きていくには、今、耐えることが大切。今までの生活を2割くらいカットして生き抜けないか。

 日本全体の経済状況を見てみなよ。当人にとってこのような話は、どこまで通用するのかわからない。今までは凌げと慰留に努め、ほとんどそれで上手くいっていた。

 しかし、今回は社会全体のシステムが大きく変わろうとしている。通用しなくなってきているのかもしれない。



最悪期をどう乗り切るのか?



 失業者が120万人増え、失業率は7%台へ、企業倒産は過去最悪を更新。6月初め、サラリーマンに対するアンケート調査をニュースで知ったが、4人に一人が失業の不安を感じているという。経済構造改革、不良債権の最終処理の痛みか。景気回復を図りながらの構造改革は所詮無理なのであろうか。

最終処理の対象となる大手銀行の不良債権は約13兆円といわれている。また、地銀、第二地銀も同じように最終処理を迫られ、24兆円といわれている。

24兆円のうちゼネコン・不動産、ノンバンク、流通が主で特に半分以上はゼネコン向けである。

中村先生がよく言われていた、こうなったら借金の棒引きしかないよ!

ゼネコンは債権放棄で生きながらえてきており、それが逆に、業界全体が過当競争の構造不況に陥って、このままでは共倒れだと、淘汰を望む声が大きくなってきている。

 問題企業を生き長らえさせることは、従来の手法と同じく問題の先送り。小泉内閣は構造改革を旗印にハードランディング路線を取るのだろう。昨年の企業倒産件数は、約2万件で過去最悪。今年はさらに3万件近くに達するといわれている。

 24兆円の不良債権が切り捨てられるとなると、さらに120万人が失業することになり、現在の350万人から470万人に増加すると試算されている。

このように構造改革は痛みを伴ない日本経済を悪化させるのは確実だが、新内閣は改革と回復の両立を目指すという。

 財政再建を強調する小泉首相は失業者のセイフティーネットに2兆円から3兆円使うといっている。都市整備やIT関連に予算を配分し、景気を下支えしながら、構造改革と景気回復の両立をしていくという。

しかし、多くのエコノミストは、これまでの問題先送りを続けてきたツケは想像以上に大きく、しかも、12兆7000億円分を直接処理しても、問題企業向け債権が151兆円もあることが判明した。銀行保有株取得機構、証券税制改革、土地流動化策と対策がとられようとしているが、日本経済の起死回生にはつながらない。景気回復との両立など不可能だと。

 一度、落ちるとこまで落ちてみないと、日本経済の再生などあり得ないとコメントしている。これも良く中村先生が言っていましたね。工学の用語の中にサイバネチックスってあるが知っているか?産業界にも当てはまるぞ。徹底的に落ちるところまで落ちないと分からないものだよと。



21世紀型の新しい経営の模索



戦後、日本は「追いつき追い越せ」を合言葉にがむしゃらに働き1987年にはアメリカをGDPやGNPで追い抜いた。これまでは大量生産で物をどんどん作り、国内を初め世界に向けてジャンジャン売れば、経済成長間違いなしであった。

 表面処理の産業に限ってみても、生産を重視し、思い切って設備投資を重ね、薬品メーカーからそれに見合った薬品を購入すれば、どんどんその企業は成長した。しかしながら、大量生産型のほとんどが海外に移り、国内には、かなり高度な技術を必要とする領域しか残っていないという。最先端の技術も日本の頭を超えて中国本土に生産拠点が移っているという。

90年代に入ってからは、いわゆる失われた10年といわれるよう土地神話の上に建てた砂上の楼閣がドサドサと崩れさっている。

 ユニクロ現象に見られるように、ネット社会は情報スピードが速くなり、地域格差はなくなり、グローバル経済化が一層進む。すべての製品に今までに無い競争原理が働き、利潤はどんどん低下していく。最後に残るのは最も付加価値の高いサービスなのだろうか。頭脳だけを使った最もエネルギー効率の高いソフト技術が残るのか。

 物質的な価値より考え方とかソフトサービスのほうが価値が高い。

生産手段が途上国に提供されればされるほど、日本では付加価値の高い大量生産が困難である。

 高い知識、ノウハウを持っていなければ出来ないような、技術や物作りしか生き残れないのか。たとえば実装関連で言えば、板厚が6ミリ以上穴径0.3ミリ程度すなわちアスペクト比が20以上の基板が国内のメーカーを回っているという。これをこなせる企業は10社もないという。

 また、新しい技術に挑戦している企業が多くなってきたようであり、Eメールや電話で技術的な質問が多くなってきた。海外からもメールで多くの質問が入ってくる。中には直接的で浴の組成を全て教えろという。これは論外として、なかなかチャレンジングな内容が多くなってきているので協力するようにしている。

 しかし、前にも研究所の設立の緊急性を問いたが、これからは今までとは違ったやり方、すなわち、研究に対する大学としての権利を守り、再投資の原資を稼ぎながら、研究をしていかねばならない時期が到来した。

 他大学と同じ事を、しかも後追いでやっていても、これからはどんどんジリ貧になることは確実である。一点豪華主義とまでいかなくても50年以上前の大学の事業部をルーツとした表面工学、それを発展させたエレクトロ二クス実装の産業界に確実に我が大学を卒業した連中が活躍してくれている。

 文部科学省は国立大学の再編、統合、効率化を各大学に求め、予算の大幅削減、独立法人化を具体的に進めている。その内容を紹介すると国立大学に民間的発想の経営手法の導入、再編、統合の大幅推進、早期独立法人化。第三者評価を導入等である。

 さらに、国立、私立大学の中で評価の高い30大学に資金を重点配分するという。小泉内閣の「骨太の改革大学バージョン」ということになる。したがって、我々の大学への国からの補助金は益々削減されることになる。

 大学は研究型、研究教育型、教育型に区分され、大きな変革期を迎えている。

 蛙は熱い湯の中に入れるとびっくりして飛び出すが、ぬるま湯から徐々に温度を上げていくと死んでしまうという。

我々の大学は、まだまだぬるま湯体質から抜けきれていない。このままでは蛙と同じ運命をたどることになる。
 

小泉内閣メールマガジン
関東学院大学
本間 英夫
 
6月14日に小泉内閣メールマガジンの創刊号が配信された。その時点での登録者は約130万人、一週間後の21日時点では180万人、28日時点で200万人突破、第4回目の7月5日時点では211万人と、関心が高まってきているという。この4点の数値をプロットしてみるまでもなく、そろそろ定常状態に達しているといえる。7月12日、第5回目に配信されたメールマガジンには、次のようにこのデータを分析していた。以下に配信された文を要約した。


 我が国のパソコンによるインターネット利用人口を3,723万人とすると、そのうち5.7%、また、全人口1億2,692万人の1.7%の方が登録している。

(年齢別の登録者数)

10代 9万人(4%)

20代 52万人(26%)

30代 63万人(31%)

40代 43万人(21%)

50代 24万人(12%)

60代 9万人(5%)

70代以上 2万人(1%)

不明 9万人

合計 211万人


(職業別の登録者数)

会社員 93万人(46%)

会社経営・役員 13万人(7%)

自営業 17万人(8%)

公務員 13万人(7%)

その他の職業 20万人(10%)

学生 21万人(11%)

無職 24万人(12%)

不明 10万人

合計 211万人


(都道府県別の登録者数)

1 東京都 34.4万人(17.3%)

2 神奈川県 21.2万人(10.7%)

3 大阪府 14.8万人(7.5%)

4 埼玉県 12.3万人(6.2%)

5 千葉県 11.6万人(5.9%)

6 愛知県 11.5万人(5.8%)

7 兵庫県 9.0万人(4.5%)

8 福岡県 6.4万人(3.2%)

9 北海道 6.4万人(3.2%)

10 静岡県 5.1万人(2.5%)

なお、海外にも2.6万人


このデータに基づいて、小生なりの感想を以下に示す。

まず、インターネット利用者が3,723万人としているが、この数値は3月号に書いた時よりも1,000万人以上増加したことになる。3月の時点で5人に一人の利用者、それがたったの4ヵ月で、日本人の3人に一人がインターネットを利用していることになる。何かこの数字には、計算の根拠で間違いがありそうだと3月号でも指摘したが、ともかく、この利用者の急激な増加は、おそらく携帯電話でのインターネットへのアクセスが増えたからであろう。メルマガの登録はパソコンからしか出来ないとしたら、登録者が211万人はかなりの人気である。

これを契機に、パソコン通信をやりたいと、新しくパソコンを購入した人もいるようであるが、今までの5回のマガジンの配信を見ると初めはものめずらしさも手伝って、全部をくまなく読んだ。首相や厚生大臣の人間味のある話題には心打たれた。

しかし、その後はどうもトーンが同じで魅力が低下してきた。すこしマンネリ化してきた。万人受けを狙っているので致し方ないと思うが。メルマガ構築にあたり、5億円の予算を取ったとのことだが、もう少し編集担当者は魅力作りに腐心してもらいたいものだ。

 登録者の分布を見ると、都心部に集中している。当然、インフラの整備との関係があり、高速ブロードバンドが未だほんの一部の地域でしか利用できない現状で、この数値は高いと見たほうがいい。また、年齢別登録者を見ると30代に山があり、年齢の増加に伴なって、急激に登録者は低下している。日本がITでは先進諸国の中で遅れをとっているが、この曲線が嵩上げされ、しかもプラトー(高原)になって、ブロードなバンドになって、初めて本物になる。

そのためにも、情報ハイウエーを一日も早く構築されねばならないのである。従来型の公共投資のように、ゆったり継ぎはぎでやっているようではいけない。5年後に世界一を標榜するならば、今すぐ政府が民間とともに素早く着手しなければならない。この種のインフラの整備には政府と民間の協力がぜひとも必要である。

 米国のIT関連企業の業績が期待したより上がらなかったことで、関連企業の株価は値を下げ、いわゆるITバブル。この一年くらいの間、日本でも同じように失望売りで、関連の株価が大きく下げている。半導体の設備投資額は2割減、半導体製造工場も生産縮小、牽引役であったIT産業が大きくスローダウンしている。

 インフラ整備が進まない限り、また、その間は設備投資が先行するので、業績には反映しないのは当たり前である。

半導体をはじめとして、エレクトロニクス産業はいずれも業績は、本年度に入ってほとんど土砂降りといわれている。

それにしてもこれからのグローバル化の社会の中で、日本の思い切った舵取りを政府は進めていかねばならない。21世紀最初の国政選挙、参議院選挙結果は小泉人気で自民の圧勝に終わった。これからが本格的な聖域無き構造改革、痛みが当然伴なうであろうが、国民が納得するセーフティネットをきっちり張り改革を断行されたい。守旧派もここで考え方を変えないと、自民分裂政党再編に繋がることも視野に入ってくる。


デフレスパイラル


製品価格は、毎月、前月比で下がっていると言う。販売の数量は増えているが、販売金額は下がっている日本のGDP500兆円に占める、個人消費は300兆円。

スーパーに足を運び価格を見てみると、どの製品も値下がりしている。

パソコン、デジカメ、携帯、DVDなどいずれも高機能、低価格。7月中旬の新聞によると、デジタル家電製品を各社軒並み15から30%値下げするという。売上がピーク時の7分の1の一万台とか。したがって、生産拠点をアジアに移管せざるをえないという。車も最近では部品の共通化で、低価格車にも機能の高い部品が使用されている。土地も住宅も下がり続けている。値上がりしたものは見当たらない。

有楽町のそごうのデパートにビックカメラがオープンした。ものすごい人気のようだ。学生によると、ユニクロでは品質の高い衣料品を低価格で販売しているという。

四季報を見てみると、4000億円の売上げでに対して、1000億円の利益を上げている。

徹底的に高品質製品を低価格で提供している。その秘密は中国での生産である。人件費を徹底的に抑え、高品質のもの作りのノウハウを中国に持ちこみ大成功だ。今までは繊維製品は日本のお家芸であったのだが。

 このように低価格化製品がジャンジャン売れるとともに、高級ブランドは最近は売れないのかと思っていたら、高級車は予約でいっぱいだという。また、女性好みのエルメスとかルイヴィトンとかという、高級ブランド製品のメーカーがデパートの中に進出し、しかもそれが大人気であるという。イタリアやフランスの本店に行こうと誘われたことがあるが、買い漁っているのは日本人だけ。

物質文化から精神文化へといわれているが、戦後の全て失った中から、GDPで世界2位まで駆け上ってきた、背景には精神的なものより物質的なものへの渇望から、がむしゃらに働いてきた、そのつけが今、日本に襲ってきているのか。世界地図を眺めてみると、こんなちっぽけな国が世界2位まで上りつめたこと自体がそもそも間違っていたのではないか。

 これからは国際協力の中で、日本の特徴を出していかねばならない。その大きな特徴の一つは電子立国であったと思う。日本は一流になれるはずだ。

しかし、最近ではほとんどタイムラグ無しに、アジアで同じ品質の製品ができるようになってきた。日本はこれから何を特徴にすればいいのか。8年後に中国でのオリンピックの開催が決定した。中国では国際化に向けて、これまで以上に工業化に着手するであろう。日本GDPはこのままずるずる下がり続けるのであろうか。

これからの日本製造業はどう変わらねばならないか、真剣に考える必要がある。


研究開発費について


最近、新聞やテレビで国立大学の独立法人化、TLO、大学からのベンチャー発信、産学協同などの言葉が多く耳にしたり目にしたりするであろう。今までも、この雑感シリーズでこれらをキーワードにして話題を提供してきた。ある国立大学の学長が以前に、「日本は研究開発バブルに陥っている。」と語ったことがある。

 これからの社会を考え、大型のプロジェクトに研究費をどんどんだす。また、政府も金さえ出しておけば成果が上がると、かなり思い切った研究費の補助を行ってきている。

 極端な場合は、はやりのテーマで申請すると、どーんとお金が出て、その使い道で頭を悩ますという、ばかげた現実があるという。無理にその設備を導入し、一度、使ったらそれで終わり、後は見学者用に全く有効利用されないまま、埃がかぶった状態になる場合が多いという。

 本年度、小生の研究室に小額の助成が決まったが、直ぐに業者が駆けつけてきた。小生が知る前から業者が知っているとは、どのようなシステムになっているのか。本年の科学技術白書によると99年度の研究開発費の総額は、16兆円で米国の29兆円に次いで世界第2位。3位は6兆円のドイツだという。GDP比で3.1%で先進5ヶ国中でトップとのこと。それに見合った成果は?

 科学技術に関しては、あまり性急にその成果を期待するべきものではないだろうが、それにしても北欧、米国などと比較すると、いつもトップではなく2番手、あるいはそれよりもずーと遅れをとっている。

 日本の大手の企業は、多額の研究寄付金や助成金を日本の大学ではなく、北欧や米国の大学に出している。それにはやはり魅力があるから、また、成果が現実に出るから出資するのであり、日本ではお付き合いで出しているようにも見受けられてしまう。

 有識者が色々論議した結果だろうと思うが、2ケ月くらい前にトップ30大学、研究費の重点配分するとの記事が出た。本年度から第2期の科学技術基本計画がスタートし、5年間で24兆円の研究開発投資を行うとのこと。

 多額の研究開発費を出せば成果が上がるというものではない。資金が無ければ創造型の研究開発が出来ないわけではない。小生にとっては、犬の遠吠えのようなものだが、自分の領域であまり投資をしなくても、効率良く、創造型の研究をこれからもやるしかない。
 

どう変わる製造業
関東学院大学
本間 英夫
 
 中国生産シェア急拡大、携帯電話アジアで首位、DVDプレーヤー世界の4割弱、日本後退目立つ、世界の工場にまで成長等、新聞の見出しにも現れているように、今や日本の製造業は大きな転機にさしかかっている。中国では、白物やAV機器等のこれまでの成熟製品の製造から今や最先端デジタル機器の生産が急増している。

 日米欧の部品メーカーが中国での生産を拡大、それに伴って組み立てメーカーも工場を中国に移す、いわゆる生産期間の短縮を計るサプライチェーンマネージメントがその背景にある。何しろ労働コストが日本の30分の一だから、この流れには抗しきれない。

 中国の世界貿易機関(WTO)加盟、オリンピックの開催に伴い、巨大な市場(内需)から今後ますます生産のシフトが加速するであろう。

 今、この原稿を書いているところにメールがいくつか入ってきた。その中の一つ、台湾からのメール、LCDのバンプに関する技術的な問い合わせである。

 Eメールが一般化して現在では世界のあちこちから、技術的な問い合わせが頻繁に入るようになってきた。

 今まではこの種の問い合わせに対して、ある程度、丁寧に回答していた。中には常識を疑うような、平気で素性も語らず、単刀直入にこの技術、あの技術について教えてくれ、組成と条件を全て教えてくれといってくる。

 基本的には大学は中立の立場にあり、すでに論文に発表していること、更には大学のモットーが「人になれ奉仕せよ」であり、これを実践しなければと面識が無くても問い合わせにも、答えてきた。

 中村先生がよく、おまえは人が良すぎると言われていたものだ。

しかし、先月号にも書いたが、これからは知的財産の防衛、再生産を意識していかなければならない。その知的財産の防衛および再生産の手段の一つが特許であろう。


特許について


 初めて特許というものに触れたのは、今から約35年前の大学院に入った頃、まさにその当時、大学の事業部でプラスチックスのめっきの研究が行われている時であった。

 事業部の研究員と大学の実験助手を兼務されていた先輩が、プラスチックス上のめっきに関する触媒の研究を手伝ってくれという。その際に手渡されたのがアメリカの特許2件のコピーであった。

 大学の卒業研究は、神奈川県の工業試験所でシアンの酸化分解に関して実験をしていたが、そのときは文献も特許も調査せず、単に与えられた実験をこなしているだけであった。

 したがって、これからが本来の研究が出来るのだろうと意気込んだものだ。その特許の一字一句を理解しながら読破し(ただし、特許独特の表現で理解するにはかなり骨が折れた。)その内容に応じて実験をしてみた。

 ところが全く上手くことが運ばない。特許の請求範囲が広く、実験をするための因子が多すぎる。その中のどこかに最適条件があるのであろうが、キーになるところは伏せてあるのか。

 この初めての特許との出会いが、こと化学に関しては、組成やその条件を請求するものが多いので、単に新しいアイデアを紹介しているものと理解するようになった。したがってそれ以来、積極的に自ら特許を検索することは全く無かった。

 研究を続けている中で、また、企業の方とのディスカッションを通して、新規なアイデアが出てきたり、新しいプロセスが思いつく。間髪をいれずに5年位前までは自分で先ず実験をやり、辺りをつけたものだ。

 今までに無い、面白いアイデアや結果が出てくると、わくわくするものだ。

 実際、従来の技術で出来なかったことが、ちょっとしたアイデアで、それが上手く出来るようになる。これが大きな知的財産になるらしい。従来は、大学ではよっぽど大きな発明でない限り、どちらかと言うと特許を取るより、研究論文を投稿することが先であった。

 それでも、この35年間で私の名前が発明人として名を連ねている特許が30件以上あるのではなかろうか。

 無責任な言い方だが、自分で申請したことが無いので、何件申請したのかあまり興味が無かった。中村先生の指導のもとに研究をしていた頃、特に中村先生が、大学の事業部の部長と教授を兼務されていた頃は、先ずプラめっきを世界に先駆けて工業化したにも関わらず、特許を取得していなかった。それは当時の学院長である坂田佑先生の教え「人になれ奉仕せよ」に基づいていた。

 なぜ、当時大学として特許をとらなかったかと、残念がる先生方が多かったが、そのようなコメントに対していつも私は大学の思想に沿ったものであり、また、パイが大きいものには特許で縛りをつけると世の中に広まるものも広まらなくなると、いい続けてきた。

 その後、中村先生が大学を離れ自分で業界に尽くすとコンサルタント業務にタッチされてからは、すこし特許に関する考えが変わったようであったが、基本的には、ほとんどが防衛特許で特許をとったから資金が入ってくるものではなかった。

 完全に私が研究室を任されてからも、研究を委託された関連企業が、私の名前と担当した学生の名前を発明人に入れるだけで、何の恩恵も無く、全ての権利を委譲する形をとることがほとんどであった。

 これでは何にもならない。大学が特許をとり、その権利を主張するようになればならないと考えていたが、当時の事務方は面倒だと相手にしてくれなかった。

そのようなわけで、現在までのところ、大学には特許を積極的に運用しようとの機運は出ていない。

 昨年暮れから提案してきた研究所設立構想がそろそろ具体化してきた。そうなると今度は、積極的にキラットしたアイデアは、先ず特許で権利を確保し、それから学会に発表するスタンスで臨むように考え方に切り替える。

 大学の設備、水光熱費と実験費を使っているのであるから、本来ならば大学の研究成果を、単に産業界や学会に広めるだけでなく、権利を確保し、そのアイデアを積極的に再投資に回せるような仕掛けを構築しておかねばならないのである。

 日本の産業界の状況を見るにつけ、果たしてこれまでの強みであった製造業が危うくなっている中で、我々もこれまでの考えを軌道修正することを余儀なくされている。

 これからの表面処理産業界は、ますますファインな技術力の粋を集積したもの作りが、主体になっていくであろう。

 その一環として掲載がのびのびになっていた3月の特別講演を掲載する。


講演要旨


 近年の携帯電話、パーソナルコンピューターに代表される電子機器の小型化、高性能化、高機能化に伴い、電子機器の中心的な役割を果たす半導体関連技術と、半導体素子を搭載するプリント配線板の製造技術および半導体素子を搭載するための実装技術に注目が集まっている。

これらのキーテクノロジーとして、各種金属による成膜技術が重要になっている。特に、1997年9月にIBMが発表した、硫酸銅めっきとCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を組み合わせたダマシンプロセスを用いた銅配線デバイスの発表を境に全世界の半導体業界に技術革新が起こり、これまでの乾式法による金属成膜技術が主流であった業界内に湿式法を取り入れる大きな契機となった。

 また、IT産業に代表される、光ファイバーによる超高速・大容量通信網構築に関しても、大きな役割を演じるのが金属成膜技術である。特に、光ファイバー同士の接続や各種光学部品との接合に、金属薄膜成膜技術は必要不可欠となっている。この場合も、湿式法による成膜技術は注目を集めている。

講演では湿式成膜法、いわゆるめっき技術の、エレクトロニクス分野における応用について、半導体配線形成技術、プリント配線板製造技術、実装技術および光ファイバー上への金属成膜についてそれぞれ解説した。


半導体配線形成におけるめっき技術の応用


 電子機器の頭脳的役割を担う半導体は、近年になってさらなる高密度化が要求されており、現在、半導体のデザインルールはサブミクロンオーダーにまで達している。従来、半導体配線はアルミニウム合金を乾式法のスパッタリングによって作製していた。

しかし、前述のIBMの発表を契機に半導体の微細回路の形成に、アルミニウムに比べて抵抗率が低く、エレクトロマイグレーション耐性に優れる銅を用いたデュアルダマシンプロセスが注目されるようになってきた。この技術は、硫酸銅による電気銅めっきとCMPを組み合わせた方法であり、めっき技術が重要な役割を担っている。

通常、電気銅めっきで微細回路を形成した場合、トレンチ内にしばしばボイドやシームを生じ、接続信頼性の点で問題となる。そこで、プリント配線板製造技術における、電気銅めっきによるビアフィリングを参考にして、硫酸銅めっき浴中に添加剤を添加することにより、埋め込み性の向上を図っている。また、トレンチ上にしばしば過剰析出が起こる、いわゆるオーバープレート現象も大きな問題となっている。この場合も、適当な添加剤を添加して制御することにより、埋め込み性が良好で平滑な銅皮膜が得られている。

 また、半導体デザインルールの微細化にともない、VLK(Very Low-k)膜と銅配線の組み合わせが重要になってきている。一般に、SiN膜は周囲の絶縁膜に比べて誘電率はK=7、8と非常に高いため、SiN膜中で銅のエレクトロマイグレーションが起こり、接続信頼性の低下を招く。

 そこで、エレクトロマイグレーション防止策として、独立化した微細銅パターン上に対してめっき技術を適用したところ、50nm程度のニッケル合金皮膜を選択的に成膜することが可能となっている。


プリント配線板製造におけるめっき技術の応用


プリント配線板もまた半導体製造技術と同様に高密度化、多層化が進んでおり、従来のスルーホール多層プリント配線板では対応が困難になってきている。そこで、さらなるファイン化に対応するためビルドアップ工法が注目されている。

 ビルドアップ工法では、絶縁層と導体層を交互に積層するため、層間接続としてビアホールを用いている。従来、無電解銅めっきによりビアホールを導電化した後、コンフォーマルに電気銅めっきを行ってきた。そして、絶縁樹脂や導電性ペーストを用いてビアホール内部を充填してきた。

 しかし、ビアホール内部でボイドや表面にくぼみができるといった問題が生じる。この場合、接続信頼性や配線の高密度化、高速化への対応といった点で問題となる。したがって、配線のさらなるファイン化、高速化に対応するため、ビアホール内部を完全に金属銅で充填するビアフィリング、さらにはビアの上にビアを形成するビアオンビアの層間接続が有効である。

 これまで、めっき技術を用いて、無電解めっき、直流電解法、パルス電解法、PR(Periodical Reverse)電解法によるビアフィリングについて検討したところ、無電解めっきおよびPR電解法によりフィリングが可能であった。

 しかし、無電解めっきにおいては、浴が強アルカリ性であるため、材料の侵食が起こる。また、めっき時間が長いという問題がある。一方、PR電解法では、析出皮膜の表面状態が粗く、めっき時間が長いという問題がある。

 そこで、直流電解法を用いて、一般にスルーホールめっきに用いる銅イオン濃度の低いハイスロー浴や装飾めっき用で銅イオン濃度の高い一般浴を用いた場合、添加剤(ブライトナー系、湿潤剤系、レベラー系)を制御することにより、ビア内部を銅で完全に充填することが可能であった。


実装技術におけるめっき技術の応用


 半導体素子をプリント配線板に実装するための実装技術もまた、より高密度な実装が要求されている。近年の半導体配線の小型化、高密度化に対応すべく、狭ピッチ化、多ピン化が要求されるようになり、従来からのリードフレームやワイヤーボンディング法に代わり、リード線を用いないTAB法(Tape Automated Bonding)、マイクロバンプ(突起状電極)を用いるフリップチップ法、および異方性導電微粒子を用いるマイクロメカニカル接続が用いられてきている。

さらに、最近の高密度実装技術の中で、CSP(Chip Size Package)技術として、1つのパッケージ内に複数のチップを実装するスタックドCSPの出現により、マイクロバンプの重要性がさらに高まっている。

 半導体の電極材料であるアルミニウム合金上にバンプを形成する際、密着性向上のために、クロムやチタン等のバリアメタルをスパッタ法により形成し、タングステン、銅、ニッケル等のバリアメタルを金属拡散防止層として形成している。そして、湿式法である電気めっきによってバンプが形成されている。

 また、直接無電解めっきでニッケルバンプを形成する方法として、一般的にジンケート処理を行う方法が知られている。しかし、ジンケート浴は高アルカリ性であるため材料の腐食や、レジストの使用が制限されるといった問題が生じる。一方、置換めっきを行わず、直接アルミニウム上にニッケルめっきを行う、直接めっき法によっても、均一性に優れたバンプが形成できることを見いだしている。


光ファイバー上へのめっき技術の応用


 IT産業の発展に伴い、光ファイバーを用いた超高速・大容量通信網によるインフラ整備が徐々に整ってきつつある。光ファイバー通信網構築には、光ファイバー同士の接続や各種光学部品との接合がキーテクノロジーとなる。

 この接合には、フェルールと呼ばれる精密円筒缶に光ファイバをを接着固定して用いられる。この際、接着剤として熱硬化型と光硬化型接着剤が用いられている。一方、光学接着剤を用いない方法として、はんだ接合法が注目を集めている。

 しかし、光ファイバーのクラッド層やプラスチックコーティングされた部分は、はんだ濡れ性に劣るため、はんだ濡れ性を向上させるための方法として、金属成膜法がある。

めっき技術を用いて、光ファイバーのクラッド層上にニッケル/金層を形成する場合、光ファイバーの前処理工程が重要となる。また、実験環境も大きな因子となる。特定の前処理を施して、ファイバー表面を清浄化し、めっき浴中の溶存酸素および微粒子数を制御することにより、均一で、密着性に優れた皮膜を作成することが可能であった。

 また、最近注目を集めている近接場光学顕微鏡に使用される光ファイバープローブ上へのめっき技術の適用として、微小開口部の形成を行ったところ、浴組成およびめっき条件を制御することにより、ナノオーダーの微小開口部を有する光ファイバープローブの作製が可能となっている。

 このように、めっき技術を用いた微細加工技術は、エレクトロニクス分野以外においても幅広く応用されている。


 おわりに


 エレクトロニクス分野におけるめっき技術の応用について解説した。これまで、エレクトロニクス分野における金属成膜法は乾式法が中心であったが、湿式法によるめっき技術が、これからのエレクトロニクス分野における技術革新において重要なキーテクノロジーとなることが期待されている。
 

世界を震撼させたテロ事件
関東学院大学
本間英夫
 
9月の9日から2週間の予定で、ヨーロッパ各地の企業、大学および公的な研究機関の視察に出掛けた。まず、最初にドイツから視察を開始したが、あの忌まわしい世界を恐怖に陥れた事件が11日に勃発した。

 事件そのものに関しては世界同時、時々刻々とその状況が流されていたので、ここで敢えて語るまでもない。                              

 毎朝毎晩、視察からホテルに帰るとテレビにかじりついていたが、ヨーロッパ諸国の全面的な支援や、協力体制が即座に取られ、その状況が刻々とニュースで流されていた。それとは対照的に日本の支援体制や行動に関しては、全くと言って良いくらいCNNをはじめとするニュースには、取り上げられなかった。

 単に、株式に関する東京市場の状況や、さらには真珠湾攻撃や神風との関連としてのみ、日本が紹介されただけで、何か気恥ずかしい感じさえ抱いた。自衛隊の後方支援に至っては、帰りの飛行機の中で二週間振りに接した日本語の新聞からの情報のみであった。

日本の危機管理体制、他国との協力体制、特に戦争を想起させる事件に関しては、慎重に論議しなければならないのだろうが、遅滞したアクションは何の意味も持たない。いつも言われているように、お金だけでの協力では、信頼できる協力体制は組めないことは、これまで痛いほど経験しているはずである。

 また、この種の事件に対するヨーロッパの一般市民の痛みが随所で感じ取れた。我々が訪れた企業では、まず視察をする前に皆で黙祷し、犠牲者の冥福を祈った。事件勃発から3、4日くらいだったか、社旗や国旗は半旗で喪に服し痛みを分かち合っていた。

我々一行はまず、ドイツから視察を始め、スペインから英国をまわり、またドイツのハイテク工場や研究機関を視察した。入出国に際してのチェックインが、普段より2時間くらい早くするとの要請が航空会社からなされ、また手荷物のチェックも厳しく、普段の3倍以上の時間を要し、フライトは全て定刻から大幅に遅れた。従って、当初予定していた企業の訪問も一社、取りやめざるをえなかった。視察の主立った内容、特に環境対策や研究機関の産学との協同の内容に関して、次号で触れることにする。


国際共通語としての英語


小泉首相が24日に訪米し、早速ニューヨークの攻撃を受けた貿易センター跡地を訪れた後、記者会見。日本の首相が原稿を見ないで英語で哀悼の意を現すと共に、日本も断固テロと戦うとコメントした。80ヶ国にも上る人達が犠牲者になっている中で、もう少し早く日本の首相が対応すべきであるとのある日本のテレビ局のコメントもあったが、とにかく日本が資金援助だけではなく、目に見える対応をすることは、国際化社会の中で当然の行動である。

 今回の事件も間もないのに不謹慎かも知れないが、読者の方々も今後経験するかも知れない珍事を紹介する。まず入出国に当たって一人一人が係官に入国の目的や荷物のことに関して色々聞かれる。これくらいのことの内容を理解し、英語で答えられるようになりたいものだ。

旅行者の添乗員は英語の出来ない人のために、入国に際して目的を聞かれたら、観光と答えるように言えば良いという。英語の分からない人にとっては致し方ないのだろうが、自分達は観光できているのではなく、視察で来ているのだから、ちゃんと自分の目的くらいは答えるようにならねばならない。

滞在期間、どこに宿泊するかくらいしか聞かれないのだから、これくらいは受け答えが出来ないと、ビジネスマンとして失格だ。これだけグローバル化している中で英語を道具として使えねば、日本は益々世界の先進国から取り残されていってしまう。

ちなみに、今回の行き帰りの飛行機は日本の航空会社であったので、フライトアテンダントに失礼かも知れないが、トーイックの点数を聞いてみた。一人は610点で、一人は580点だという。年間4回試験が義務づけられているという。また今回参加した団員の3分の一は英語が堪能であった。問題なのはいくら英語が話せても、技術の話になるとちんぷんかんぷんという人がほとんど。

表面処理関連業界で技術に関して、パーフェクトに対応出来るのは、小生の知る限りでは吉野電化の社長しかいない。現在、表面技術協会の国際委員長をやっているが産業界では彼以上の適任者はいないと思う。

 日本の表面処理の業界にとって、次代を担う技術に長けた英語がフルに出来るコーディネーターや、リーダーの養成が急務である。英語に関してのコメントはこれくらいにして次の話題。


セキュリティ


 今回はセキュリティが厳しかったので、我々の持ち物でエックス線で少しでも凶器に見える物は、中を開けて説明をしなければならなかった。

 一番傑作だったのは携帯用のウォシュレットを持参していた団員が、これは何だと聞かれた。本人はウォシュレットを英語だと思っていたようだが判るはずが無い。説明が面倒なのでジェスチュアで使用方法を係官の前で演技して、無事通過?また、お土産に持ち込んだクロイゾネの花瓶の形態が兵器の弾頭のように見えたらしい。せっかくの包装が全て開封されてしまった。

 エックス線像をチェックしている係官は、小さなナイフまで見落とさなかった。今回訪問したドイツの企業でお土産に頂いた、長さ4センチくらいの万能ナイフ、チェックインカウンターに戻って手続きをするか、または放棄するか尋ねられた。せっかく、お土産にもらったのにとも思ったが、またカウンターまで行くのも面倒なので、そこでサインし、放棄することにした。団員の中で3人引っかかった。25人中何人が機内持ち込みの手荷物の中に入れていたか分からないが、かなりの確率で疑わしい物品を見つけている。

 今回は、金属探知器の感度を最大にしているようであり、いつもは時計をはずしたり、コインや万年筆などはあまり気にしないで通過できたが、今回は上着は全部脱ぎ、ズボンの中に入っている金属は、全てトレイに入れ検査。一番厳しい体制であったのは、ドイツからスペインに行く便で、搭乗する直前に手荷物を全部開き、中身をチェックされた。また、そこまで徹底していない場合でも、団員の中で日本人離れしている人や挙動不審?の人は呼び止められ、中身をチェックされた空港もあった。


成田でトランクがでない


 大失敗が最後の最後に起こってしまった。成田に到着、入国手続きを済ませ皆、我先にと荷物のでる場所に移動。自分の荷物がでた人から、一人去り、また一人と税関を済ませ帰っていく。

 小生は、今回、関東化成の社長が車で行くというので同行させてもらっていた。社長と共に技術の現在トップをやっている、後輩の豊田君も視察に参加していたので、彼が小生の荷物が出てきたら、一緒にキャリアーに乗せてあげるという。

 たまたま前方を見ると、大学の同僚が同じ飛行機で帰ってきているのを発見。そこで、まさかこんな所で、しかも同じ飛行機に乗っていたなど夢にも思っていなかったので、声を掛けに行く。ほんの4,5分してから元の場所に戻ってみると、豊田君も社長もそこにはいない。小生の荷物が出てこないのに、なぜ先に出ていってしまったのか。

 まだトランクがでてこない。一人去り、また一人去り。そこで団員の一人に、もう豊田君が、おそらく出口で待っていると思うが、もう少し待つよう伝えた。それからさらに10分くらい経過した。全て機内の荷物はでたという。しかしながら、小生のトランク、それともう一人団員のトランク、学会からから帰ってきた同僚のトランクがでてこない。

 悪い予感、フランクフルトで出国する際に小生は滅多にお土産を買わないが、持っていたトランクを他の団員にあげ、頑丈なトランクを購入した。少し値が張るので、他のお土産と一緒にすると1万円以上税金分が戻って来るという。

 小生は手続きが面倒だから良いよと、何度も言ったが皆がもったいないという。あまりそこで我を張るのもいけないし、色々経験するのも良いだろうと現地の旅行業者と、沢山土産を購入しトランクに詰めてしまった4人と、税金の払い戻しの手続きをしに行く。その場合は荷物を出すところが、カウンターではなく地下の他の場所から出すことになる。そこからトランクを出した団員のうち、小生ともう一人の団員の荷物だけがでてこなかったことになる。

 確率5分の2だ。何故か色々考えた。我々の前後に同じように地下からトランクを出した外国人が数人にいた。ひょっとして、その人達の便に間違って配送されたのか?同僚の先生はフランクフルトから乗り込んだのではなく、他から乗り継いで来たので本人は積み残しだろうと、あまり気にしていないようであった。

 早速、荷物事故処理のブースに向かう。同じ便で帰ってきた人の中で、トランクがでてこなかった人が10人以上いた。少し安心する。自分だけであれば、不安が増幅するが、これだけ多くの人のトランクが出てこなかったということになると、おそらくパケットに入れて機内に入れるので遅れたのかも知れないと。

 それにしても、関東化成の社長や豊田君を出口で待たせるのは申し訳ないと気になった。もう40分以上経過している。ところが、小生の前に手続きしている40代のビジネスマンが、憤懣やるかたなしで、何でトランクがでてこないのか、トランクの中には土産が何十万円分も入っているという。どうしてくれるんだと怒っている。そんなこと係りの人に言っても、何にもならないのに感情的になっている。見苦しい。身体が疲れているので感情的になるのも分からないわけでもないが、少し見識を疑う。

 小生としては早く手続きをして、表で待っているであろう2人に会わねばならない。やっと自分の番が回ってきた。今までにトランクが届かなかったことはあるか係員に聞いたところ、滅多にそのようなことはないと言う。少し安心する。


大切な物は全て機内持ち込みに!


 小生のトランクには高価な物は入っていなが、唯一コンピューターが入っている。この視察中に大学への通信や原稿の作成に有効に使おうと持参したのだが、電池の容量が少なく、また通信が思うようにいかず、無用の長物であった。

 帰りの飛行時間は11時間近くで、機内での原稿作成には絶好の条件であるはずだったが、たったの30分もしないうちに電池切れになってしまうので、トランクに入れたのが運の尽き。

 機内で分かったことだが、5時間位使用出来るバッテリーを貸してくれるという。今度からは絶対に機内に持ち込むことにする。実はヨーロッパの各ホテルでメールのやり取りをしようと思ったが、五つ星のホテルは通信の整備が出来ているようだが、三つ星くらいになるともうダメ。団員の一人に国際用の携帯電話を借り大学にアクセスするという、何のための通信網か分からない、ばかげたことをやらねばならなかった。しかも50通以上メールがたまっていて、コンピューターのメッセージでもう取り出せませんとの表示がでる。

 この様なわけで2週間分のメールがたまったままなので、自宅に帰って、早速返信しなければと思っていた。それが出来なくなったので、機内に持ち込んでおけば良かったのにと後悔するし焦ってしまう。

 ドイツから電話で連絡した際に、緊急連絡も入っていると学生が言うし、研究論文の原稿やハイテクノの原稿も入っているのに悔やまれる。トランクなんかどうでも良い。荷物が届かない場合は、保証はしてくれるだろうが、今までの過去の知識や論文やスケジュールが入っている小生のように、コンピューター無しでは仕事にならない者にとっては、何者にも代え難い痛手である。

 早速、自宅に帰ってまず取りかかったことは、娘のコンピューターを借りて自宅に入ってきているメールだけは、読みとれるように息子に設定させた。ところが大学に入ってきているメールに関しては、パスワードが分からず読めない。

 今回は帰国後早々、大学に行かずにすぐに九州で学会に出席。従って、それまで大学でメールを開くのもお預け。手帳とコンピューターは小生にとっては、お金よりも大切な物である。夜になって寝ながら考えたがひょっとしたらセキュリティが厳しく、トランクが今までよりも綿密に検査されているのだろうと。

 新しく購入したトランクに詰め替える際、無造作に積めたので、コンピューターと変圧器のコードが付けっぱなし、しかもトランクの中でコードが蛇行して変圧器がひょっとしたら時限爆弾のように見えたのかも知れないと。従って、今回はセキュリティがきついので調べられて荷物が遅くなったのではないかと。何しろコンピューターだけが必要なのだ。航空会社からの見つかりましたとの返事を心待ちにしている。

 取りあえずいずれにしても、もう一台バッテリーの容量が大きい、しかも軽量なパソコンをこの機会に買おうと思う。クリスマスをねらった新製品にするか、その時になれば、旧型のパソコンの値段が一挙に下がるので、本当はもう少し待ってから購入するのが時期として良いのだが、そこまでは待てない。

 今までも、積み残しや目的地以外に、トランクが運ばれ、苦い思いを何度もしているので、いつも必ず機内持ち込みようの手荷物には、最低必要な衣類は用心のために入れているのだが、今回のように、最後の最後で出てこなかったのは初めての経験であった。いつ連絡があるやら。まだ時差の関係で身体が昼、夜逆転しているので帰る早々、一気に10月号を仕上げた。

先にも触れたが、今回の視察で得た環境事情や大学や研究機関の産学協同の内容を中心に、次号で紹介する。
 

バルセロナ工科大学での産学協同研究センターの設立
関東学院大学
本間 英夫

 
2年前に、北欧の実装関連の研究機関や大学の研究所の訪問に引き続き、本年9月にもヨーロッパの大学及び研究機関を視察した。本雑感シリーズで過去幾度となく、産学協同の重要性を訴えてきているが、本号では、ヨーロッパの産学協同の一部を紹介する。

今回訪問した、バルセロナ工科大学の研究センターは、大学と企業間の知識・ノウハウを共有し技術的、専門的知識の蓄積と利益還元を目的として4年前に設立された。

 資金は、大学、カタロニア銀行、スペイン文部省、カタロニア州等の行政機関からも援助を受けており、それを私的財団として運用している。

 補助機関として、特許を中心とした知的所有権部門を持ち、特許の管理および調査検索など研究者への支援業務を行っている。

 さらに、海外からの研究情報を的確に得、また研究成果を世界各国に配信するために、英語センターが設立されている。

 この研究所では、メディカルエンジニア(医薬)、バイオ関連をメインテーマと位置付けて、バイオセンサー、その他電子機器関連の共同研究を行っている。企業からの委託研究に関しては、研究開発を通して、知識・ノウハウを提供し、製造は企業にまかせて関与していない。

 現在、すでに2万㎡の新しい研究・管理棟が建築済みであるが、さらに現在バイオセンターを新築している。2006年までに6万㎡の研究所へと拡張の計画である。

我々に関係の深いエレクトロニクス領域の研究としては、電子関連材料、材料化学を扱うグループと、通信、機材、設備、ソフトを扱うグループの2グループに分けて研究が行われている。

 特に、マイクロエレクトロニクス領域の研究テーマは、プロセスからデバイスまでの研究、材料特性評価として、ラマン分光、STM、TEMを駆使してシュミレーションを行っている。又、高温化学に関して、高温ガスセンサー(300℃以上)の開発に注力。さらには、ナノオーダでの結晶を取り扱った研究でイオン注入によって合成したナノクリスタルを使った記憶、発光デバイス(LED)の研究もやっている。その他、微小なメカニカルセンサー、圧力センサー、磁気センサー、バイオセンサー、アクチュエータ(マイクロ域で駆動するセンサー)の研究開発が行われていた。

ガスセンサーとしては、センサーの材料からデバイスの作成までの研究を手掛け、酸化物(TiO2 , SnO2 , SrTiO3)の合成から厚膜化までの研究を行っている。薄膜技術としては、CO2 , NOX また O2センサーの組み立てと評価を行い、スピンオフカンパニーの設立を予定している。

また、カメラ用CMOSのデザイン、ピクセル解像度を上げる研究、インターフェイシングデザインを行っており、開発されたICは工場で生産される。さらには、アンテナのデザイン、シリコンを使った微小アンテナの開発、マイクロロボット、マイクロサテライトの研究に着手。

ガスセンサーの中でエレクトロニクスノーズと称して、コーヒー、タバコ等の臭いを認識する検出器を開発しており、実際にこの分野に関してスピンオフ会社が設立されている。また、スピンオフカンパニーとして、去年設立されたアドバンセルという会社が紹介された。その会社では、研究開発で得られた知識や応用技術を企業に売るビジネスを行っている。2001~2年の職員構成はマネージメント4名、博士5名、ラボアシスタント7名、シニアアドバイザー5名となっている。

主な研究テーマとして、遺伝子(発ガン物質)の遺伝子研究、人間から採取した腫瘍から遺伝子(発がん物質)染色体をペドロ皿上で培養し、顕微鏡下での研究である。依頼先より委託研究を請け負い、結論が出るまで研究を行うことにより資金を集めている。 大学の研究機関始発のベンチャー企業の好例である。日本でも国立大学を中心として、ベンチャー企業の育成に力を入れだしたが、まだまだここまでは育っていない。



研究施設を視察して



約2万㎡の建物は日本に比べて、非常にゆったりと配置され、研究環境は格段に恵まれている印象を受けた。

1000MHzと500MHzのNMRを始め、最新の解析装置が設備されている。また、バイオ関連の研究室も完成間近の段階で、多数の機器の搬入が行われていた。基本的には各研究室は、300㎡単位にセットアップされており、日本の研究室に比べると非常に広々としていた。またバイオ関連として、多数の小動物(ラット、マウス、ハムスター、ウサギ等)を飼育する施設も設置されているが、動物舎というよりは、むしろ完全滅菌で温度管理された病院に近く、徹底的な管理が行われている。いずれにしてもスケール的に圧倒される施設であった。これが2006年までに3倍に拡張されれば、ヨーロッパにおいてもかなり充実した研究機関となるであろう。

 日本の私立大学においては、収入源の約8割が学生からの授業料で占められ、安定財源とされてきた。従って、大学運営のため、多くの学生を集めることに注力されてきたので、卒業する学生と企業が求める学生との間には、大きなずれが生じている。

 近年の少子化傾向で、大学も冬の時代に入り、新たな収入源を見直す必要が出てきている。バルセロナ工科大学のサイエンスパークの試みは、将来の日本の私立大学における一つのモデルを提起している。

大学が企業のニーズに対応し、工業化に結びつく研究開発を行うことは、新たな収入源となる。また開発技術およびノウハウを産業界に還元し、産業の活性化に結びつけることが出来る。

一方、大学で学ぶ学生にとっても、その分野において独立、開業といった個人的成功をおさめるチャンスが与えられる。このように、企業、大学、学生それぞれに、メリットのある仕掛けを早急に日本の大学に作らねば、世界の中で取り残されるのではとの焦燥感にとらわれた。



フラウンフォファー研究所

 

 この研究所には20年位前にも訪れたことがあるが、そのときからすでに産学協同研究を積極的に行っていた。当時、研究拠点はドイツのバーデンブルグ州のシュトゥットガルドにあった。現在は、ドイツ国内に広がり、今回訪問したのはベルリン工科大学内の研究所であった。

現在56の研究部門で構成されており、その中のマイクロエレクトロニクス部門は7つの研究分野で構成、研究予算は1999年度で約60億円、その内、54%の32億円が企業からの委託によっている。研究員は1000名で、350社以上の顧客を有している。実装関連のパッケージ部門には182名の技術者、基礎研究から装置開発、そして製造までの一貫体制をとっている。



実装関連の研究内容



(1) 半導体パッケージング用薄膜処理 

この研究は、半導体上の各種微細バンプ形成を中心に研究を行い、さらにパッケージング技術の研究といった応用技術までと幅広い。

半導体の製造には、クリーンな環境が必要であるため、800㎡のクリーンルームを使用している。従来の200㎜シリコンウェハーから、300㎜ウェハーといった大型のウェハーを使用し、フォトレジスト技術、スパッタ技術および湿式めっき技術の研究を行っている。めっき技術においては、基板の電極に対する配置による影響(垂直型、カップ型)についても研究を行っている。

Pb

Au

Pb

Sn

Au

Sn

めっき技術を応用した、微細バンプ形成では、Au、Pb-Sn、Au-SnおよびPbフリーバンプの各種研究を行い、AMD , シーメンスAT , SECAP , UnaxisおよびSEMITOOLといった半導体関連会社と協力して研究を進めている。

各研究の応用例として、現在までに2㎝×2㎝の小型心臓ペースメーカーの開発、そして5μm幅の銅配線による誘導コイルの作製にも成功している。



(2) ポリイミド上への直接銅めっき技術 

通常、樹脂上へ銅めっきする際、過マンガン酸または、クロム酸等で表面をエッチングしてアンカー効果を持たせたり、接着剤を使用して密着力を高めている。しかし、この研究ではポリイミド上への銅めっきに通常使用される接着剤を使用せずに、柔軟性が高く、密着の良い銅皮膜を得ることを目的としている。

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プロセスとしては、プラズマを利用することにより、銅上にイミダゾール‐銅層の接着層を形成することにより、ピール強度10N/㎝という密着性の高い銅皮膜を得ることが可能となっている。すでに、このプロセスを用いて装置の開発が行われており、reel to reelで15m/min.で操作されている。真空雰囲気下でプラズマ処理を行い、ポリイミド表面に極性を生じさせた後、イミダゾールで銅との結合反応を起こさせ、さらに銅スパッタを行う。その後、直流電気銅めっきを定電流で行い、パルス銅めっきでの厚膜化工程へと続く。



(3) 半導体への無電解めっきの応用 

 この研究では、大きく分けて3つの検討を行っている。1つは、アルミパッド(電極)上またはダマシンプロセス後の銅パッド上への無電解ニッケルバンプ形成、2つ目は再配線形成そしてchip on polymerの検討である。

 本研究の特徴として挙げられるのは、全プロセスを湿式プロセスにより行えるために、低コストであり、ワイヤボンドおよびフリップチップへの適用が可能となることである。アルミパッド上へ無電解めっきによりバンプを形成するには、裏面をマスクした後、アルミ洗浄、ジンケート処理を経て無電解ニッケルめっき、そして無電解金めっきを行い、最終工程として裏面マスクの除去を行う。

 一方、ダマシンプロセス後の銅パッド上、つまり、電気銅めっきで半導体配線形成、そして、CMP(Chemical Mechanical Polishing)工程で平滑化した後の銅パッド上への無電解めっきによるバンプ形成は、銅洗浄、パラジウム触媒付与後、無電解ニッケルめっきを行う。

0.5

 以上の手法で、ニッケルバンプを0.5-5μm形成した後、金を0.1μmめっきしたバンプはアルミワイヤボンドおよびフリップチップに適用可能である。

 また、ニッケルバンプを同様に0.5-5μm形成し 0.5

た後、金を0.5μmめっきしたバンプは金ワイヤボ 0.5

ンド、TABおよびFPCに適用可能である。

 しかし、これらの手法でバンプを形成した場合、ニッケル-金界面においてリンの高濃度層が形成され、この層がボンディング性能に影響を与えることが知られている。この場合、ニッケル‐金層間にパラジウムを0.5-1μmめっきすることによ 0.5

り、アルミ、金ワイヤボンド、TABおよびFPCといった全ての接続に適用可能となる。

 また、本プロセスで開発した装置はすでに、IC interconnect (USA)、Seiko (Japan)、およびKSW (Germany)で実際使用されている。

 再配線形成においては、エッチング工程のないフルアディティブ法によりラインアンドスペース

=20μmがすでに達成されている。以上述べた3つのテーマーに関しては、我々の研究室でも狭隘な研究施設と乏しい研究費の中でも、ほぼ同じレベル、中にはこれらのレベル以上の研究を手掛けている。潤沢な資金が無くても、かなりのことがやれている自信は、大学の事業部時代からの多くのノウハウと、その後サポートしていだいた企業および学生と培ってきたからであると自負している。だからこそ今まさに速やかに研究所を設立しなければ、世界から取り残されていくとの焦燥感がつのるのである。



⑷ 内部接続技術への生体物質の適用

 この研究は、従来までめっき技術に応用されることのなかった生体材料(物質)をプリント配線板の内部接続技術へ適用するという、全く新しい試みであり、すでにこの技術は特許申請中となっている。

 方法としては、生体物質であるリポゾームをめっき反応の前駆体として使用し、そのアルカリまたは酸性領域で有する特異的な挙動を利用している。初めに、ナノオーダーサイズのリポゾームとパラジウムクラスターを基板上に形成し、光を照射した際の各pHにおけるニッケル析出状態を検討したところ、特定の領域でニッケル析出を確認している。現在はまだ開発段階あり、今後、ナノオーダー領域ヘの応用に期待がかかる。この研究もまた、ATOTECH、Max Planck Institute for Biochemistryといった企業と協力し、研究を進めている。

 このように、フラウンフォファー研究所の活動は、基礎研究から応用研究まで極めて活発であり、日本の企業からも委託研究を受けている。

 以上、研究所の研究動向に関して説明してきたが、今回の視察のもう一つの目的はヨーロッパにおける環境問題の取り組みであった。その中で、特に自動車の耐寿命性に関することに関して次号で解説する。
 

国際競争力大幅に低下
関東学院大学
本間 英夫
 
 日本の国際競争力は12、3年前世界のトップ、ところが本年10月中旬、アメリカのシンクタンクの調査発表によると、フィンランドがトップ、日本は21位。経済大国と評価されていた日本の短期間での凋落。バブルがはじけ不良債権が増大し、政府も色々な対策を行ってきたが、アクセルをかけながらブレーキをかけるような結果になり功を奏さなかった。さらに追い討ちをかけるように本年9月、あの忌まわしいテロ事件からアフガン戦争、炭疽菌事件と世界の同時不況はますます深刻化してきている。

 自民党圧勝のもとに小泉政権は2、3年を目途に不良債権の最終処理に着手し、整理回収機構も当面は強制的な債権回収を控え、経営再建を支援する方針。短期的な回収よりも、経営再建を待ったほうが、長期的には回収金額が多くなる。

 8月下旬、ハイテクを中心とした企業の業績がさらに悪化し、日経平均株価が最安値を更新した。その後、9月のあの事件で株価はさらに急落し、特にハイテクにウエイトをおいた投資家の懐は、4月の時点からすでに3分の1くらいになった勘定だ。世界同時不況で打つ手無しの状態か?


これからの雇用体制は?


 失業者は政府の見通しをはるかに超え、実際は400万人ともいわれている。

しかも、その対象者は高給の40代から50代。自殺者も3万人以上。新卒者の雇用に関しても門戸が狭く、フリーターになることを余儀なくされ、また、派遣社員としての就職が目立つようになってきた。しかも企業ではリストラの手段として、まずは派遣社員からきり始めている。ある学生がこの現実に対して、「しわ寄せは来ても、幸せは来ないですね。」と、うまく言ったものだ。

 先日、久しぶりに故郷(高岡)に帰ってみたが、高速道路は中途半端、新幹線もあちこちで工事が中断のまま。地元の産業を初めとして、いくつかの上場企業が大変な状況である。

 何千人の従業員の早期退職、ボーナスカット、昇給ストップ。インターネットでその企業の掲示板を見ると、元社員や現社員からの経営者に対する不平不満が目立つ。北陸一の工業県ですらこのような状態なのだから、もっと惨憺たる状況の地方が多いのではないだろうか。

 日本の終身雇用は瓦解しつつある。サラリーマンは終身雇用の下で、安心して中流意識を持って生活を築いてきた。働く人々が安定した生活を維持できるからこそ、日本人のモラルは高く、また企業に対する帰属意識の高さが、これまでの日本の成長を支えてきた。

 しかしながら、世界的な同時不況の中で、この雇用体制を維持できなくなってきている。

 また、この終身雇用制は、日本の犯罪社会化の抑止力になっていた。最近の犯罪件数を初めとして、犯罪の凶悪化は新聞やテレビで知るかぎり、社会の不安定化に伴い増え続けている。皮肉なことに、警備関連会社の株価は上昇傾向にある。

 国家の財政をはじめ、年金、銀行、生保、郵貯、簡易保険等、すべて大赤字。ただでさえ将来に不安を持つ高齢者が、更にこのような状況では購買意欲は冷え込んだまま。

年金財源はパンク状態で、年金積み立て額を大幅にアップしない限りは、年金の支給額は大幅に削減するか、または、年金の支給年齢を繰り上げるしか方策は無い。

 改革の骨子が、8月の初めだったか紹介されていたが、セーフティネットと称して、中年の人たちにも再就職のための勉強をしろという。今まで、長年にわたり公共事業に依存してきた建築関連や、一般企業の中高年の働き手が再教育だと、果たしてついていけるのか?再就職で、給料は下がるだろうし地位も下がるだろう。


オートメーションからオトメーション


 待った無しのグローバルスタンダードの名のもとに、生産拠点は海外、特に中国本土へどんどんシフトしている。

ますます微細化する電子部品の実装、たとえば、コンマ数ミリのチップのハンダ接続や基板への搭載を、視力3.0の女子がズラーッと並んで、顕微鏡または裸眼で作業しているという。そんなことは自動化すればいいと思われるだろうが、設備導入費用及びメンテナンス費用は莫大であり、しかも技術がドッグイヤーでどんどん変わっていくので自動化するよりも、賃金が日本の20分の1から30分の1の中国でまじめに労働する女子を、何万人も雇ってこの種の作業をやったほうが迅速、しかも歩留まりも高い。

オートメーションからオトメ(乙女)ーション。これには、日本がいくらハイテクの製造だけは守ろうといっても、人件費が世界一になってしまったので、この種の仕事も海外へシフトしてしまうだろう。



貯めるから使う


従来型の産業の空洞化と労働力余剰、終身雇用制度や金融システムの改変等、先進諸国から求められる要求を受け入れ、結果として雇用不安、土地の値下がり、株価の暴落、結局は日本の資産が大きく目減りした。

 国は完全なる破綻状態。個人の資産だけが中高年者を中心に停滞した状態である。タブーとされるような調整バブルとか調整インフレという言葉が最近聞かれるようになってきた。また、先日のNHKの経済討論会で財務担当大臣の発言として、インフレターゲットだったかターゲティングだったかという言葉が出てきた。このままでは、デフレスパイラルの渦の中に入り込んで抜け出られなくなる。したがって、インフレに軌道修正する必要があると経済学者は言っているが、インフレターゲットという用語に至っては、何のことやら解説も無く横文字が一人歩きをして、なんだか横文字を使うと心地よく聞こえるのか、言葉の遊びをしている余裕など無いはずだ。政府は迅速に的確なアクションを取らないといけない。

 個人消費が旺盛にならない限り、景気は上昇しない。なにしろGNPの60%以上が個人消費なのである。しかしながら、現在個人のお金は滞貨となって、通貨としての役割をなしていない。今までは堅実な投資や貯蓄の対象は銀行や郵貯であったが、10年位前までの高金利時代から、一貫して円高対策として公定歩合の引き下げ、規制緩和の改革が行われてきた。昨年までに、その高金利時代の償還が終了した。

 郵便局や銀行に定期で預けておくと、10年にはお金が倍になったのだから。しかし高齢者は何も買うものが無い。金利がほとんどゼロに近くなったのに、再度、郵便局に預けた人が半数以上になるという。お金が貯まっても、ちっとも消費には回ってこないのである。

 衣食住の食にだけは、生きるために老いも若きもお金を使わざるを得ない。デパートやスーパーの地下の食料品のフロアーだけは、いつも人であふれている。上の階にいくほど、だんだん人の数は減って、買い物袋も食料品だけ。

 上の階では、海外を生産拠点とし、安く高品位な衣料品と銘打ったコーナー、パソコンやゲームを中心とした若者のフロアー、それとレストランや喫茶のような場所だけが若干混雑している。

 よく言われているように、お金を持っていても高齢者は買うものがない。今までのライフサイクルから土地を購入して家を建てたり、スペースの広いマンションを購入できる年齢は30代後半から40代であり、しかも20年以上のローンを組んでの一生に一度の大型の買い物なのである。

 したがって60を過ぎてから、新しく何かを購入しようと思っても、もう老後のことを考えると、これで満足ということになる。


個人の住環境整備から


 先ず個人消費を喚起しようとするならば、土地の価格が安くなった今、大いに一般の消費者も巻き込んだ新都市計画、住みやすい地方都市、もう少し落ち着いた中高年向けのセカンドハウス構想等の波及効果は絶大であろう。

 平均寿命が世界一。戦後の廃墟からここまで豊かになったが、この戦後の55年間は今の中高年者ががむしゃらに働き人生を豊かに送る余裕など無かったのである。今こそ政府は不良債権対策、構造改革を的確に押し進めねばならない。従来の内需喚起イコール公共投資から、中高年者が老後の不安を取り除き、豊かに楽しめる仕掛け、中年に差し掛かった人たちも快適に過ごせる住環境整備を政府主導で構築すればいい。住環境が整備されれば、車、家庭電化製品等々、その波及効果は甚大である。携帯電話の安売りで、後は通話料で利益を上げるのとは訳が違う。

 日本列島改造の名のもとに、都市機能が全国に拡大し、土地神話、不動産バブルを生んだが、その間に行われてきた公共投資、特に新幹線網と高速道路網の整備は、その後大きな財政赤字を出すことになったが、ここで、全国の土地と交通網を有効に活用するには住宅政策が一番だ。

 また景気が停滞し、それに伴ない株価が下がり、各々の企業の資産価値は低下している。預貯金である個人財産も銀行や生保を初めとした機関投資家から、株と債券にまわっているのだから、当然、株価の底ばい状態を放っておくことは出来ない。株の持ち合い解消も株価低下の原因であるが、外人投資家にいいようにやられっぱなしである。

 株価を上げる手段として、政府は個人資産の参加を促進する方策を模索しているという。                   

ドイツは個人を株式市場に呼び込むことに成功したという。その方策は、たとえば、株式購入奨励金制度、株式売却代金課税制度、特に年齢が60歳を過ぎれば、株式売却代金を非課税にするアメリカ方式の導入、源泉分離課税の廃止など色々あるようだが、健全な個人投資家を育てる雰囲気を作らねばならない。日本はその意味では、まだまだ資本主義経済というよりも、社会主義経済である。決して資本主義経済が万能ではないし、これからは21世紀型のシステムを構築されねばならないのだが。



以下は先月号のヨーロッパ視察記続報



耐寿命性指導要項について



耐寿命性の指導要項は1975年に立法として生まれた。一緒に公害廃棄物におけるEU内のマネージメントの評点も出された。2000年9月18日 ポルトガル会議で議決された。2002年3月18日英国でも、そのために法律にしなければいけないことになった。内容的には複雑なので、ホームページ等で調査してほしい。耐寿命性指導要項を一言でいうと、毎年800万~900万トンの車が廃棄されているヨーロッパの規制のことで、英国では、自分で使えない車をわからない様に道路にでも捨てれば、その人の責任ではないという実態をなくすこと。その目的は3つあり、

1.廃棄物の量を減らす→捨て場がない

2.車の中に鉛とか6価クロムが入っているので、そういった危険物質の排除

3.車のリサイクルを進めていく→自動車に使われている原材料のリサイクル    

EU15の各国はリサイクルを含め車の寿命を延ばしていくことが、廃棄物を減少し環境に優しくなる。実際には2006年1月1日までに85%のものをリサイクル、残りの80%を取り外して再使用等の再利用をしなければならないし、2015年にはリサイクルを95%、再使用等を85%にしなければならない。また、2003年7月1日までには全ての鉛、6価クロム、カドミは全廃になるとのことであった。


6価クロムと車


 車1台、2gの6価クロムの使用量を認めている。6価クロムにおける規制の一番の問題は、クロメート処理にある。車一台に2gということは、使ってはいけないと同じと言える。黄色~黒色までのクロメート処理では6価クロムの含有量は高い。使用している部位はメタル類(鉄板類他)と固定する部位で、車一台に2gとなると実質的には使用禁止である。2003年モデルから6価クロムを使用しないグリーン調達に変えていく計画である。2003年1月1日以降の車には、2g迄は使って良いということだが実際には難しい。1999年にはフォードは2003年モデルから6価のクロメートは使用しないと発表。三菱も使用不可の指導をはじめた。6価の規制は、EUの立法が車以外にも出されている。2008年1月1日より電気製品には全て危険物を使用してはならない。

これらの規制が、サプライヤーに対してどのような影響を与えるのか。コストアップになる。下請は整理されるかもしれないし新しいサプライヤーを探すかもしれない。新しいめっきのプロセスを開発し、供給しなければならなくなるかもしれない。これがプラスとみるかマイナスとみるか。ここがビジネスチャンスとヨーロッパの薬品メーカーは戦略を立てた。地域社会に認められる商品ブランドのロイヤリティを高め、品質の保持もすでに確立されているようだ。