電子回路へのめっきの応用技術

関東学院大学
本間 英夫

〈電子回路の要素技術〉
 ビルドアップ工法についての要素技術の話を次にさせていただきます。
皆さんご承知のように、これからはどんどんファイン化して、五〇ミクロンを切るところまでいきます。いわゆるマルチ・チップ・モジュールからチップ・サイズ・パッケージのところまでいくといわれてます。
 これも全部めっきの技術が絡んできますから、めっきもそこまでいく。それは何も怖いことではなく、先報にも述べたように〇・一ミクロンぐらいはめっきでやれます。
 マイクロ接続、異方性導電微粒子、バイアホール、これらをキーワードにして、私の所でいろいろな研究をやっています。今は半導体を実装する時のマイクロバンプ(図1)はだいたい五〇ミクロンぐらいを使っているようですが、私の所は三年前に、もう二〇ミクロンぐらいで、非常にストレートなものをつくっています。

図1.マイクロバンプ

 それから、異方性導電微粒子は、企業でもいろいろやっています。LCD(リキッド・クリスタル・ディスプレー)いわゆるフラットパネル・ディスプレーは、ガラス、ITO膜でできています。そのITO膜の上にはんだのかわりに、異方性導電微粒子としてプラスチックの微粒子にめっきが施されています(図2)。

図2.異方性導電微粒子

次に層間接続に関してですが、今は回路も穴径もファインになっていますから、それを埋めたほうがいいわけです。なんでかというと、必ず、レイアー・バイ・レイアー構造にしていくわけですから、一つのレイアーを形成したら穴を開けて、めっきを壁面に付けて、パターンを付けて、またその上にレイアーを形成して、また穴を開けてということで、層を重ねていくと表面の凹凸が多くなります。その場合、半導体の場合もそうですが、平坦化技術とかプレナリー技術ということで、平坦にするために研磨しなければなりません。この時、PR電解法(周期反転法)をやれば埋まるということがわかりました(図3)。しかし、これはめっきのことがわかってないとできませんから、そこにもまたビジネスチャンスがあります。「導体膜形成のポイント」として、まず、絶縁樹脂の問題があります。絶縁樹脂はエポキシのコアの上に回路形成したあとに絶縁層を付けます。絶縁層というのは光で感光するフォトビア用のレジンをコーティングするというのがだいたい主流でした。しかし、絶縁層を付けると、導体層を付けるときに絶縁層との密着性が問題になります。そこでキーになってくるのがめっきの技術です。

図3.ビアフィリング


 フォトビア用のレジンを使うとき、通常、エッチングするのに過マンガン酸のデスミア液を使う。今までのようにビア径が一〇〇ミクロンとか五〇ミクロンだったら何てことないかもわからないけど、これから二〇ミクロンとか一〇ミクロンの穴になると、そこで回路が出来るかどうかという問題になっていくでしょう。
 その絶縁層の中にいろんなフィラーとかいろんな粒子をブレンドして入れて密着性を上げていますが、この粒子を入れることに関しても、いろいろ問題があります。密着を上げるために一〇ミクロン位の穴を形成させてそこに回路形成したって、密着性だって、絶縁性だって良くないでしょう。樹脂のマトリックス自体を選択的にエッチングして、より小さなエッチングホールを形成するようにして、非常にうまくできるようになってきています。このように、いろいろ材料側のほうからもいろんな研究が今進んでます。
導体層の上に絶縁層を付ける時の密着をどうするか。黒化処理です。ところが、黒化処理膜というのは、酸化第一銅とか酸化第二銅からできているので、すぐに酸で侵されて溶解します。それで、ビアフィリングの手法でやるといろいろ問題があるということで、それを還元する。一回、酸化第一銅とか酸化第二銅でデンドリックにしておいて、その形状を残しながらそれを還元して銅のマトリックスだけ残して、デンドライドの状態を形成するのが今の主流です。我々は、エッチングや無電解めっきでギザギザになっている表面をめっきでつくってやろうしたんです。この場合はマトリックが強固ですから、ものすごく密着いいものになりました(図4)。
それに対して、そういうことをいろいろ条件変えてめっきを開発した時に、フラットで穴の開いているめっきも二年ぐらい前に出来たんです(図5)。これはいろいろ使い方ありますよ。これは、ものすごく密着がいいんですよ。

図4.針状析出
図5.ポーラス構造

   


 また、無電解めっきをやるには、高速浴でも一時間に二ミクロンから三ミクロンぐらいといわれていますから、三〇ミクロンとか四〇ミクロンの絶縁層の厚みにするには、一〇時間以上めっきしなければなりません。学生に実験させたら、三時間か四時間やったら飽きて、私には内緒で「ええい、もう面倒くさい。ちょっとpHを上げてやれ。ちょっと温度の上限変えてやれ、ちょっと濃度を上げてやれ」とやったんです。そしたら、びっくりしたことに、物性に優れた銅で完全に埋まるということがわかったわけです。
 高速めっき浴を二、三ミクロンに抑えなきゃいけないと言われていたのは、あくまでも制御が難しいからであって、制御さえできれば、時間当たり七~八ミクロンの析出が可能であることを実証したわけです。
 物性の問題、制御の問題からセミアディティブとかアディティブという方式が下火になったことがありますけど、ビルドアップができると、そういう手法がまた復活するようになるかもわかりません。その時に、ただ、物を買ってやるだけじゃなくて、自分の所にそういうものをやれるような力を持ってなきゃいけないということですね。