研究内容について
関東学院大学
本間英夫
八月号から研究の一端を紹介してきましたが、トピックスや小生の日頃考えている縦書きに戻って欲しいとの要望もありますので、本号で研究の紹介を一応終わりにします。従いまして本号は研究内容の残りの部分を紹介するとともに、後半は本来の縦書きの雑文を紹介します。
無電解でやっているものは、電気めっきのフィリングでできる。それが前述ののPR電解法です。さらに、波形制御でやるということもできます。
無電解で埋める場合はホールの底部だけを触媒化しておけばどんどん穴の中に埋まっていきます。ところが、初めから底部だけではなく側面も表面も導体膜がついていますと、全部活性化されていますから絶対埋まりません。たとえ無電解でやったとしても埋まりにくくシームが出来たりすると思います。
これを電気めっきでやってどういうふうに埋めるかということが今、最大のテーマです。パルスではうまくいかない、PRでやると、うまく埋まっていくと。 その他に、底部が二〇ミクロン上部四〇ミクロン高さ七五ミクロンのテーパー状のバンプを下から電気めっきで積み上げたのですが、レジストの残膜があって、ど んなふうになったかというと、給電部が五ミクロンの径しか開いていなかったのです。しかし、電気めっきで深さ六〇ミクロン近くのところで五ミクロンの穴からめっきがスーとついていくのです。
実際には(給電)する高さがなんと八〇ミクロンなんですよ。
そして、皆さんがボンディング法で困っておられるということですが、一番重要なのは、結晶性によってものすごくワイヤーボンディング性が変わってきます。結晶性のXRDを使って分析してみるとわかります。
あと、金めっきでは、今までシアン金がいろいろ使われていましたけど、シアン金から亜硫酸金というのが最近検討されています。なんでそんなのが検討されているかというと、シアンというのは非常にレジストをアタックしてしまうので、それを避けるために、導電性の良い金でバンプをつくらなくてはいけない。今まではだいたい金というのは、金めっきイコール、シアン金だったわけですね。
ところが、シアン金を使うとレジストがすぐアタックされます。そのアタックのされ方というのはどんなふうになるかと言いますと、膜減りを起こしたり、クラックが生じたり、液が中に浸透したりするんです。
ところが、亜硫酸金を使うときれいな、その開口部の所だけにめっきできるようになります。さらに無電解ニッケルめっきでアルミの上にダイレクトにバンプを形成する技術も検討しました。また、今まで回路の上に銅の回路があって、銅の回路上にニッケルめっき、ついで金めっきをするとします。ところが、銅の上で無電解のニッケルはつきません。電気めっきは付きますけれども。
今、独立回路のものとかファインなものになっているわけですから、これはもう電気めっきでは不可能です。どうしても無電解でやらなければいけない。銅の上に無電解ニッケルめっきをやる時、どうしているかというと、必ずと言っていいぐらい、非常に希薄なパラジウムの溶液を使って表面を活性化しています。
ところが、それを活性化している時にレジンの上は穴がいっぱいありますから、そこにパラジウムが吸着してしまいます。すると、極端な場合は、全部にめっきが付いてしまいます。本当は回路の所だけ付けなければならないのに、レジン側の所にもついてしまうということがおこるので、それを避けるためにパラジウムで処理しないで強い還元雰囲気状態にして選択的にパターンをつけることが出来ました。
さらに次に全く違う手法を紹介します。
導電性の微粒子をつくる時、普通の樹脂めっきの原理を使って、バンプとバンプ、あるいは接続点のコンタクトするエリアに圧力をかけてやりますと、そこに乗っている所だけが接触して、接触しない所は導電性があるということで異方性導電微粒子というふうに言っています。
これは機械的に接合することになり、従ってはんだ(鉛)を使わないので今年に入ってからすごくこの技術が用いられてるようになりました。そういうようなものも全部、めっきを使う技術です。これをやる時には、無電解めっきをやる時に、皆さんがやっているようなバッチタイプのものではできません。ものすごい表面積が大きいですから、すぐめっき液の組成が、変わってしまいます。
実際に、フィーダーポンプの容量の大きいものを使って、ニッケル、錯化剤、還元剤とかを大きな容器の中に入れてコントロールしながらやっているわけです。
あとは、液晶ディスプレイに関連するめっきについて紹介いたします。ITOというのは実は透明導電膜で、スズとインジウムの酸化物ですから、非常に抵抗が高くて、大画面化ができません。大画面化するためにはどうしたらいいか。電子が流れやすいようにするにはどうしたらいいかということになってきますと、結局、開口率を八〇%ぐらいにしておいて、壁面の所だけめっきしてやればいい。そうすると、透過性を損なうことなく電気が流れます。
このように私の研究室では色々な研究が進んでいます。皆さんの会社の中で「これがなきゃできない」、「あれがないからできない」という不平不満を言っている技術の人がいたら、それは大きな間違いです。なくてもやれます。そのために公的な機関があったり大学があったりするのですから。
海外に頻繁に出かけるビジネスマン注意しましょう!
私自身海外に出かけるときにこの様なことを考えたことは一度もありませんでした。又、この種の情報もあまり大きく報道されていないようです。ちなみにこれから紹介する内容を、先日電気化学の国際会議が開かれた際、アメリカ、イスラエル、ドイツ、ロシアなどの研究者に見せましたが、誰も知りませんでした。又、頻繁に海外に出かけられている幾人かの知人にも話しましたが、この情報をお持ちでなかったので、ここに紹介いたします。(この文を書いた後で学生に読ませましたところ、数年前にテレビの報道番組で取り上げられた事があったそうです。)
私が八月にアメリカに学会で出かけていたときのことですが、確かファイナンシャルタイムだったと記憶していますが、週末に旅行を計画している人に対しての呼びかけ、注意、警鐘のようなタイトル付きで次のような記事でした。ここに無造作に切り取ったスクラップがありますので、その記事を抜粋して紹介します。
血栓症についての記事です。血栓症の患者の五〇%は、症状が現れる前に四時間以上の空の旅をしているそうです。飛行機に乗って四日以内に一般的に徴候が現れます。又、三五%の患者に関しては、それまでに全くその病気にかかる素質を持っていなかったとのこと。以前から血栓症になる原因の一つに、長時間たとえば列車内で動かないでじーっとしていると、かかりやすいといわれていました。長時間座っていると、足の下部に小さな血栓の塊ができるそうです。特に飛行機で長旅をしますと、席も通路も狭いので体を自由に動かすことができません。それと決定的な要因は、乾燥している空気です。地上では相対湿度が六〇%位ですが、機内は約二%でこれが血液の粘度を上げてしまいます。当然、小さな血栓の塊が生じやすい環境であることは間違いありません。
今まで静脈血栓症はエコノミークラス症候群とも云われてきましたが、ファーストクラスでもビジネスクラスでも、足下にあるレッグレストを使わないでそれが太股の所を圧迫しているような状況になりますと、エコノミークラスと発症率は同じになるそうです。
さらに、機内の席は窮屈ですので睡眠薬を服用しますと、圧迫されたままの姿勢で長時間眠ってしまいますので、発症率がグーンと上昇してしまいます。座ったままでいますと、血液の循環が五〇%低下し、又、体の動きが拘束されていますので、足下に血液が停滞し足首が膨れ上がってしまいます。血液の循環が損なわれることだけでは血液の凝固にはつながるわけではなく、これに脱水症状、喫煙、肥満、脂っこい食物、窮屈な姿勢で座っている、最近外科手術をした、静脈溜がある、静脈血栓症の家族歴がある等の因子が加わります。凝固した血液が移動して肺や脳、心臓に到達すると、閉塞が起こり致命的になるとのことです。
五〇代以上になりますと性別に関係なく、誰にでも上記の条件がそろえば、起きやすくなるそうです。しかし二〇代の女性にも起こったそうで、飛行中に睡眠薬を服用してその結果、数日後に脹ら脛に血栓が生じたとのことです。六年後、同じ人が十三時間のフライトの後にまた別の箇所に血栓を起こしたとのことです。症状の始まりは痛み、膨れ、時には熱もでるそうです。
今までの研究の結果、血栓はフライトの四日後に起きるのが一番の多いのですが、フライト中に起きる場合もありますし、一ヶ月後に起こる場合もあるそうです。今までの中で最も痛ましいのは、五六歳のビジネスマンがフライト中に睡眠薬を服用し肺に数カ所、血栓による梗塞を起こして機内でなくなりました。ヨーロッパのある団体が、年間九万件、飛行によって血栓が起こると調査結果を発表しています。又、別の米国の医者は、飛行が原因で血栓が起こるのは、年間百万件近くになるだろうと云っています。なぜならば、飛行中や着陸して直後には発症の確率がきわめて少なく、後から発症するので、今まではフライトとの関係は考えられていなかったのだと云っています。
空の長旅をする場合は、次の事項に注意を払ってください。
l 睡眠薬を摂取したら、窮屈な格好で眠りにつかないようにする。
l 通路で運動したり座席で足を動かす。
l 血液を希薄にする作用を持つアスピリンを一錠服用する。
l 脚部に静脈瘤がある人、又静脈血栓症の家族歴のある人は伸縮自在の柔らかいストッキングをつける。
l 手荷物やレッグレストが脹ら脛を圧迫しないような位置にしておく。
l フライト後、脹ら脛に痛みや腫れの症状がでた場合は対処する。
l フライト中は脱水にならないように十分に水分をとる。
以上のことに注意をして楽しい旅を!