財産管理について

関東学院大学
本間英夫

日本の一般の家庭では誰が財産の管理をしているのか。
一般的、平均的な家庭では奥さんが管理している。統計結果は知らないが、おそらく七割以上が奥さんの管理下におかれていると思う。主人は全く無頓着という家庭もある。
サラリーマンであれば当然、ウィークディは会社、給料も銀行振り込みであるから、自ずから奥さんが管理することになる。
 ただし、多くの家庭では、夫が財産の大枠をつかんでおり、あとは奥さんに任せているのであろう。
 男として、守銭奴になりたくないし、家内を信頼して任せればよい。
 他にも色々理由や事情があると思うが、いずれにしても、財産管理は女房と相場が決まっている。
数年前、証券会社に手続き上の理由で、渋々で出かけねばならなかった。
 なんとそこには、中年から老年のおばさん連中ばかり、主に投資信託のコーナーに何人もいる。株価の動きには、ほとんど関心が無いようであり、ボードをにらんでいるのはおじいちゃん。これがおそらく、つい最近までの証券会社の店頭の代表的な姿だったのであろう。
 また、振込み等で銀行に出かけることがあるが、昼間はほとんど奥さん連中である。このようにウィークディの真っ昼間、サラリーマンは動けるわけが無い。
 したがって当然ながら、財産は奥様の管理下に置かれることになってしまう。
 これは、あくまでも一般的なサラリーマンについての話であり、経営者、特に中小の企業では会社の財産は勿論、個人財産も経営者自身が管理していると思われる。
 もし奥さんが管理しているとすれば、それは奥さんが、その会社の役員になって会計業務を担当している。
 ところが、企業の規模が大きくなってくると、そんなわけにはいかない。たとえば、小生の本家も昔から製造業をやっているが、今では従業員が数百名になったので、奥さんは家庭に入っている。
 これが上場している大企業になってくると、事情は一変する。財務管理はプロが集団でやるようになるのが一般的である。 
 ヤクルトに代表されるように財産の運用を一個人でやると、大変な問題が起こってしまう。いつの世にも必ず不正が起こってしまう。
 人間の弱みである。その立場になり、そのような状況が起これば、ほとんどの人は、この誘惑から逃れられないのであろう。キリスト教で言うところの原罪である。
 金融機関や、多くの不良債権を抱えてしまった企業の体質を強化するために、一般のサラリーマンが犠牲となって(ちょっと言いすぎか)、低金利政策がとられるようになってきた。したがって、現在の金利はゼロに等しく、郵便局や銀行に預けていてもほとんど増えない。
 個人の預貯金が一千二百兆円、赤ちゃんまで含めて、一人一千万円貯金している勘定になる。
 また、今春から高金利時代の郵便貯金が大量償還される。今年の四月から二年間で百六兆円になる。
 これらのお金は行き場を探している。ペイオフが一年延期になったが、いずれにしても、これからは自分で財産を管理しなければならなくなってきた。低金利時代、これからは財産の運用をどのようにすればよいのか。

投資について

 財産三分法は皆様もご承知のように、財産を預貯金、株式、不動産に三等分して管理運用する方法である。アメリカではこれがあたりまえのように運用されている。
 最近、アメリカの異常な株高で、この三分法も若干歪になっているかもしれないが。日本と違い、財産は夫がしっかり管理している。もっとも夫婦平等でお互いに管理している場合も多いと思われる。
そう言うおまえはどうなのか。これまでの雑感シリーズを読んでお分かりと思うが、自分で管理している。と言うよりも、そのように仕向けられてきた。
 物心がついたころから日経新聞を読んでいた。地元紙以外は読売新聞と日経と決めていたようなのでしょうがない。
 今から約四〇年以上も前のことになるが、電話がすでに普及していたが、電話で取引するのではなく、証券会社の人が週に一度位、自宅に上がりこんで話し込んでいた。
 それも現在のように成績を上げねばならないからと、必死になってセールスしているわけでもないようであった。遊びにきている感じであった。おまえも運用してみろと、当時の金で数十万円預かった。
 池田首相が所得倍増論を提唱したのは、それよりも数年前であったと記憶している。タイミングがよかったのである。
 購入した株はどれも上がった。大学の入学金はそれで払ったはずである。株を運用させてもらった副次的な効果はたくさんある。
 まず、新聞をよく読むようになった。新聞の経済面や企業の動きに敏感になった。当時から四季報があったと記憶しているが、たくさんの企業の業務内容を知ることができた。
 大学生のころ、テレビで「てっぺんやろう」と言う面白いドラマがあった。確か投資、むしろ投機で成功し、てっぺんまで登ろうと、毎週楽しくそのドラマを見たものだ。
 おそらく、一般の人も徐々に投信や、株に投資する気運のときだったのであろう。大学に入ってからも、どこで聞いてきたのか、証券研究会を作ろうと誘いを受けた。経済学部でもないので即座に断った。
 株を手掛けて迷惑をかけ、自分もゾーッとしたこと。それは企業の倒産である。
 山一證券が、二年前につぶれたが、四〇年位前、日興證券がおかしくなった記憶がある。第一次の投資ブームの萌芽期であったのであろう。
 大学に入ってから小生は、観光事業研究部を作った。これからは、日本が豊かになり発展すれば、観光事業が絶対伸びると思ったからである。当時は鎌倉や横浜の観光局を訪ね、課長以上のクラスと対等にいろいろ交渉をしたものである。
 また、観光事業の中で将来は外国からの観光客が増加するだろうと、特に外人向けのアンケート調査を主体にした。
 と言うわけで、親戚連中には、もし株に投資するなら、その部門の株を購入したらいいぞと富士観光をすすめた。勿論、小生はすでに何株か持っていた。それが購入して五、六年くらいしてからだったか倒産してしまった。
 自分はともかくとして、今まで経験の無かった親戚に迷惑をかけてしまった。それも一人ではなく複数に。
それ以来、人にはめったに勧めないようにしている。その後上場企業の倒産は、あまり無かったと思う。
 最近になって、国土開発の倒産は少しショックであった。関連のコクドと国土開発は同じであると、思っていたことも迂闊であった。
 うわさは色々聞いていたが、手放したほうがいいぞと、しかしながら、大手ゼネコンはいずれも膨大な不良債権をかかえており、まさか大蔵省がこの一社だけをつぶすとは思わなかった。
 減資にあったのは現在の企業名で言うと、吉冨製薬、パスコ、チノンの三銘柄くらい。また、十年以上前の株の絶頂期は、五百円を切る銘柄が無かったが、現在半値からもっと安くたたかれたものでは、十分の一以下になっている銘柄も多い。なんてことは無い。これでは減資と同じこと。そのような株はしょうがないからナンピンを入れる。
 山一の倒産のときは、株そのものは保護されているから問題は無かったが、株券をすぐ他に移すことができなかった。増資の際の新株や裏書されている本人名義の株券は、各支店が閉鎖される直前まで、引き出すことができなかったのである。その間高騰した株もあったが。
 上述した証券会社に足を運んだというのは、株券を移し替えた証券会社の店頭の様子である。そのとき一部の裏書された証券を見たが、個人名義になっているものが意外と少なかった。
 と言うことは、個人で直接株の取引をしている人は、ごく一部の人に限られているということになる。
 つい最近ではヤクルトの事件。五、六年前までは高値で三千二百円、その後二千円台で推移していたと思うが、なんとあの事件が発覚して、一挙に六百円くらいまで下がった。
 本業が健全であるからいずれは戻るだろうと、また、株主優待で内野スタンドの指定席、それと年一度、化粧品が送付されてくるので塩漬けにしておいた。昨年十月ころ半値まで戻していたが、最近またジリ安であった。
 年末、証券会社から電話があり、「はじめまして、担当の何々ともうします。こんなときに初めて電話して申し分けございません」「ヤクルトが監理ポストに入りました。このままでは上場廃止になりますが」
過去の経験で営業の言いなりになっていると大変なことになる。ホームトレードが導入されてから、一切営業とは話さないようにしてきた。だからこんな時しか電話がかかってこない。 国土のときの経験もあるので、もし上場廃止になったとしても、慌てふためいてもしょうがない。ただ、今回は個人の不正で本業のほうは健全のはず。
 「どうせ売りが殺到し値がつかないだろうから、売りに出さなくてもいいですよ」 
 それから連日、ストップ安の売り注文で買いが入らない。若干不安になる。しかしながら乳酸菌飲料や医薬品に関しては何の問題も無い。もし買いが入りだしたらどーんと買い増してやろうかとも思ったくらいである。
一月五日に元のポストに復帰した。いずれは、監理ポストに入る前の値段に戻るのではないだろうか。このように、自分で投資するとなるとリスクは伴う。 
 この十年間は、バブル後の修正で倒産、合併、減資、持ち合い解消、企業がサーバイブするための苦渋の時期であった。もうしばらくリストラ対策が続くと思われるが、体質が強化され生き残った企業は、大きく進展することが期待される。
 今まで投資など考えていなかった人も今が買いどき。特に、情報通信以外は安値で放置されたままである。
 平均株価が年末から上昇し、大発会では一万九千円台の高値をつけたと、一般紙の一面にまで報道しているが、実情は情報通信と一部の電子部品株のみが、異常なまでに買われているだけである。
 ここにも株価の健全さが見られない。店頭上場のいわゆるドットコム、IT関連、さらには、マザーズにいたっては何をか言わんや。
 今回、マザーズに二社上場されたが一社は本年六月期の予想売上高が一二億、これに対して時価総額約九千億円(PRS七百五十倍)、もう一社は予想売上高六千万円に対して、時価総額約八百億円(PRS千三百倍)である。
PRSとはプライス・セールス・レシオのことで日本語では株価売上高倍率のことで株価を正当化する苦肉の策として米国であみ出された。本家本元でさえ、高くても百倍程度。と言う事は日本では、いかに割高で買われていることか。もう少し頭を冷やすべきである。
人間の、いや資本主義社会の醜さを露呈しているような感じである。資本主義のお手本であるアメリカが、いまバブルの真っ直中(米国政府や多くの投資アドバイザーは、依然として健全であると主張しているが)にある。
 上がるから買う、買うから上がる。そこには株価に対するめちゃくちゃな理屈がある。マネーゲーム化している市場は、いつになったら健全になるのか。
 人間の欲が絡むから、これが健全?なのかもしれない。リスクが増幅される信用取引、ヘッジファンドにいたっては完全にゲームと化している。株式投資がギャンブル視されるのも、この辺りのことに起因しているのであろう。
 しかしながら、好むと好まざるにかかわらず自己責任で財産を運用する時代に入ってきた。もし直接、株に投資するのであれば、短期に一喜一憂するのではなく、長期保有で臨まれたい。
 余裕資金があれば、経済や産業界の動きに敏感になるし老化防止にもよい。企業業績回復、株式手数料自由化、インターネット取引、個人の資金が投資信託や直接株式投資と市場に流入しだした。株価は先行指標、今買うなら低位株が絶好のチャンス!!
ゆっくり仕込んで値上がりを待つ。欲をかいて深追いしない。現物投資でやけどをしない程度に投資をしてみてはいかがでしょうか。