省庁再編
関東学院大学
本間 英夫
年初からスタートした省庁再編(1府21省庁から1府12省庁に)、スリム化、効率化、大きな政府から小さな政府、中央集権から地方分権、色々キーワードがあるが、兎に角、構造改革が始まった。為政者の指導力、国家公務員の公僕としての責任と自信が強く望まれるところである。
特に今回の再編で内閣府を新たに設け、官僚主導から政治主導に切り替えるのがねらいの一つ、政治家を各省庁に送り込み、強力なリーダシップをとる事になっている。
議員を選ぶ側の国民も選挙での一票。都心部では革新が有利、地方では保守が有利に。一個人としても保守的な考えと革新的な考えが錯綜しているのに、意思表示としては、余りにも偏りすぎるし、軽すぎる。
省庁のスリム化に着手したのだから、議員数の思い切った削減、地方分権化を強力に推し進めればいいものを、いつも中途半端な足して2で割る方式である。
国レベルでは大枠を論議し決定し、地方に権限を委譲する。この種の論議はかなり前からなされてきたことであろうが、いろんな利権や思惑が働き、遅々として改善がなされていない。利権やエゴで政治がなされてはならないと皆、総論として了解しているのに。
しかし、今まさに構造改革が進められている。地方でも改革が進んでいるとみていいのか?
東京都と長野県がマスコミ受けする顕著な例か?最近のマスコミは大衆受けするように、どれをとっても同じ論調、同じ報道、かろうじてまともなのは経済を中心とした新聞と雑誌か?
金融制度および税制改革
兎に角、政府部門の構造改革は緊急課題であり、昨年、当時の内閣では構造改革は出来ないと交代を一時期迫ったが、政争の具にしている余裕など無いはずである。課題を先送りしたり、放置していては傷口が広がるばかりである。
総理が元旦に、将来の人口の急減に備え、女性の労働市場への進出促進の施策を発表しており、IT改革、教育改革〔教育基本法は1947年の制定以来一度も改正されていない〕と共に目玉としたい意向である。
IT改革に関しては、インフラ整備が最重要課題であり、大晦日で起こったインパクがパンクするようでは心もとない。さらには国際化に対応した金融改革は焦眉の急である。
国の借金にあたる国債残高は、昨年末で389兆円、これに地方自治体の借金を合わせると666兆円、国民一人あたりにすると520万円の負債を抱えたことになる。すでに国民の総貯蓄額1400兆円の約半分近くを、財政が借金している勘定だ。
景気浮揚策として、これだけ莫大な財政出動がなされてもその効果は小さく、日本の経済システム全体を抜本的に改革されねばならない。
そのアクションやアピール効果が小さいので、すでに外国の投資家は日本株を大幅に売り越し、日本全体の評価が低下し、大げさな言い方をすれば、これまでの財政出動は、まるでブラックホールの中に、お金を注ぎ込んでいるような状態になっている。
4月になると郵貯、年金積立金の全額自主運用が開始になる。したがって、当然、資金供給を受けていた不採算法人の大幅整理が進行する。郵貯、年金積立金の残金は約400兆円で本年度は120兆円以上自主運用されるとのことである。運用先は国内外の債券や株式、特に株式市場は期待が大きい。
また、昨年論議された2001年度の税制改正の中で、株式譲渡課税に対する申告分離への一本化が株価の低迷で2年間見送られた。
昨年大発会から大納会で日経平均株価でおよそ5000円、率にして25パーセント以上下げたことになる。この背景には上述した日本の借金体質に対する海外投資家の嫌気、民間企業や金融機関は株の持ち合い解消、利益の出ている株からどんどん売られた。
また、いわゆるアメリカを中心としたIT推進役のドットコムの理想買いで、一時は株価が10倍以上に急騰、その後7、8ヶ月で行って来い相場、日本でも同じくこのセクターの株は総じて10分の一から中には50分の一になったものまである。
シリコンサイクルで第4四半期での過剰生産、それに伴う部品、機械、半導体メーカーの凋落振りはすさまじかった。
したがって、株価は総じて悲観材料のオンパレード。昨年の暮れで銀行の含み益が大きく減少し、いわゆる国際的なBIS規制をクリアーできたのは数行である。米のナスダック指数と日経平均の連動性は極めて高かった。
このような状況の中で、申告分離へ一本化することによる手続きの煩雑さ、重税感から投資家が市場から離れ、さらに株価が下がることを避けるために取られた措置である。
一先ず、証券会社を初めとして市場参加者は、一息ついたようだが、2年間見送られただけで、他の金融商品と比較して魅力ある対策が講じられなければ、また、同じ問題が出てくることになる。
さらには、いわゆる日本版401K〔確定拠出年金〕、企業年金、ペイオフなど改革が目白押しである。
2002年4月にスタートするペイオフでは、すでに皆様ご承知のように、これまで全額保証されていた預貯金が、預け入れ金融機関が破綻した場合には1千万円しか保証されなくなる。
先ごろ発表になった1384兆円の個人金融資産、今年の暮れから来春にかけて通帳の分割、金融機関の選別が起こることが予想される。
これからは待った無しの一年、色々なデマ、金融再編でパニック状態にならないことを願う。
最近の技術の話題から
自動車電池技術
究極の低燃費、低公害車として注目を浴びているのが、水素と酸素の化学反応で電気を起こす、いわゆる燃料電池を搭載した車である。各社が2003年から5年を目処に実用化の一歩手前の段階に入っている。次世代の環境対応型としてハイブリット車が先行しているが、燃料電池車に関して技術的に大きく進展してきているようである。
燃料として何を使うか、純水素のボンベを搭載するのか、水素吸蔵合金を用いて一旦水素を貯めておくのか、メタノールを用いて水素と酸素を作るのか、各社がエネルギー業界と連携しながら開発が進んでいる。いずれにしても燃料を貯蔵するシステムをいかに小型、軽量化するか乗用車搭載をターゲットに各社が競っている。
1997年、12月にトヨタからプリウスが発売されたが、石油エネルギーと電池を組み合わせたハイブリッド型で利益を度外視した価格を設定し当時、確か一台売れるたびに100万円の損失ではなかったかと思う。搭載されている電池はニッケル水素電池で、当初は円筒形であったが現在は角型に改良され体積も当初のものと比較して40%コンパクトになり、しかもエネルギー密度も大幅に改善されているとのことである。
現在開発品として公表されているものを列挙してみると、トヨタの開発品は出力70Kw体積65リットル重量75Kg、ホンダはメタノール改質型の燃料電池を開発しており出力60Kw、また同社ではカナダのバラード社の純水素型の燃料電池を使ったものも開発しておりこれも同じく出力60Kwである。その他マツダ、三菱、ダイハツ、日産など乗用車を前提とした開発にしのぎを削っている。
電池のもう一つの話題
移動通信端末、ノートPC、デジタルビデオ、デジタルカメラ、など電子機器の需要が好調でリチウムイオン電池およびニッケル水素電池の生産額は大幅にアップしている。高性能を追求する領域ではリチウムが、またコストパフォーマンス性からはニッケル水素がアジアを中心に拡大している。この電池が小型二次電池と呼ばれているものである。携帯電子機器の性能やダウンサイジングに無くてはならないエネルギー源である。
電池には一次電池と二次電池があり一次電池とはいわゆる乾電池で化学エネルギーを電気エネルギーに変換しているのであるが、一旦放電させると充電によって再生できない使い捨て型の電池である。
一方、二次電池は外部電源から得た電気的エネルギーを化学エネルギーの形に変化させ、蓄えておき必要に応じて電気を取り出す電池である。この小型の二次電池は現在日本がほぼ独占的に供給している。
大手の3社が7割以上のシェアーを持っており、リチウムとニッケル水素電池を合わせると、すでに生産額は5千億円程度に達しているのではないだろうか。ほとんどの人が何らかの形で、この電池を使用している。
一つ大切なことをアドバイスしておく。充電に関することであるが、私も含め、せっかちな人は完全に電池がなくなる前に充電したくなる。これは絶対に避けるべきである。
電池の容量が落ちてしまう。メーカーの取扱説明書には、このあたりのことを書いていない。完全に電池がなくなる前に充放電を繰り返すと、電池がそれを記憶し、いわゆるメモリー効果により容量が低下してしまうのである。リチウムイオン電池は、このメモリー効果は少ないので安心されたい。
これから、ますます情報端末や次世代自動車の電子制御、およびクリーンエネルギーの蓄積などの観点から、この種の電池の需要の急拡大が期待される。
半導体実装技術
携帯端末の需要拡大、ますます高性能化、多機能化、ダウンサイジングが進む原動力は半導体自身の微細加工技術、それを担う半導体パッケージの実装技術の革新である。
初期に採用されていたDIP(Dual Inline Package)いわゆる端子挿入型に始まりQFP(Quad Flat Package)という半導体のパッケージ周辺にリードを取る方式が採用されてから半導体の表面実装が進んできた。しかしながら、ピンの数が増大する(多ピン化)につれて限界に達し、90年代後半からリードを無くし、パッケージの下にグリッド状の接続部を配置したBGA(Ball Grid Array)、さらには半導体のチップと同じ面積にまで接続ピッチを狭めたCSP(Chip Size Package)が採用されるようになり、電子機器の小型高性能化に大きく貢献してきた。
たとえば、ビデオカメラがパスポートサイズにまで、さらにはもっと小型化した背景にはCSPの採用がある。現在、BGAは多ピン化対応で大型化し、また、プラスチックBGAが小型化に、テープBGAが薄型化にと類別されるようになって来た。今後ますます電子機器の高速化、新機能付与、カラー化、インテリジェント化が進む。
さらにはITCに代表されるように自動車の情報化はこれからすさまじい勢いで進展するであろう。したがって、自動車搭載用の制御機器の高性能化にあいまって、小型パッケージの需要は一段と高まるであろう。
私が所属するエレクトロニクス実装学会で半導体パッケージやプリント基板のロードマップ作りを一昨年から進めてきたが、2005年には従来から使用されているDIPやQFP(現在80%)がかなりの比率で、新しいパッケージ方式に変わると予測している。
通信量の増大に伴う光ファイバー網の構築を
ゴア前副大統領の提唱のもとに、米国のインターネットの普及率は約40%に達したといわれている。日本でもようやく政府がIT(情報技術)を前面に打ち出して本腰を入れるようになってきた。
現在のところ日本では、個人ベースでのチャットに代表される携帯電話の普及は、Iモードの導入に伴い、ピーク時には、一日5万台の新規加入者があったとのこと。
少し古い話になるが、昨年7月の中旬だったか、余りの普及率に基地局が追いつかず、新しい基地局を横浜に作ったが、それでもトラブルが発生とのこと。若者を中心としたこの種の携帯端末としての利用は、今後未だ伸びるであろう。
しかしながら、さらに大切なのは次世代のための音声とデータ通信量の増大に対して、デジタル回線やケーブルIV回線を利用したネットワークの高速化と大容量化に対する対応である。これを可能にするには基幹線自身を大容量化しなければならない。
アメリカでは、この基幹線には光ファイバーが中心になっている。光ファイバーの伝送量はWDM(Wavelength Division Multiplexing)波長分割多重と日本語に訳されているが、波長変換、波長の多重(一度に沢山の波長を分割して送る)、波長の分離を高速、高精度、大容量にするものである。これを可能にするには高速、高精度のレーザー発振素子、光ファイバー増幅器、光を波長ごとに分ける分光部品である。
日本は光ファイバー構築では、アメリカに大きく遅れをとっているが、これら、もろもろの光部品関連産業がテークオフの段階に入ってきた。
このWDM装置を光ファイバーの両端につければ、一本のファイバーでいろいろな波長を多重に使うことにより伝送容量が従来の数百倍に向上させることが可能となる。
このWDM技術はDWDMへと進展している。(DはDense 高密度)現在はアメリカでも通信業者間での互換性が未だ取られていない。これからは購入単価の低下、互換性を持たさねば普及のネックになる。また、送信した情報を途中で分岐する(光分岐挿入装置)、複数箇所との情報のクロス接続OXC(光クロスコネクト装置)が必要となってくるが、これらは未だ試作段階である。光ネットワークは多重化ネットワークになるであろう。
そこで一般の消費者は、ラストワンマイルが光ファイバーになれば安価で大容量で、超高速で、世界全体に情報伝達が出来、経済効果は計り知れない。まだまだ構想段階で実用化に至っていない領域が多いが、いずれにしても莫大な産業になる。
IT革命は始まったばかり
いわゆるドットコム関連の株価は、次世代の花形産業と、従来の株価算定評価で使われてきた指標抜きにして一時大暴騰したのもこの夢を買ったのである。現実はそれほど利益がでず、米国ではドットコム産業の496社が4万人以上を解雇し、また91社が破綻吸収された。
将来は、ネット社会になることは確実でIT革命が始まったばかりである。
長期的には強気で臨んだほうがいい。
日本での代表格のソフトバンクは、昨年の暮れ4000円を割るまで大暴落したが、今が買いのラストチャンスかもしれない。
それよりも日本の企業は、次世代に向かった戦略に長けていないようである。一昨年の上半期のデータによると世界全体のM&Aは円換算で60兆以上、日本の企業がかかわったM&Aは、僅かの一兆五千億程度とのこと。
これらの中で、大型のM&AはITや通信ネットワークに関するものであり、しばしばソフトバンクやソニー、NTTなどがM&Aで話題に上がっているが、世界的に見ると、日本は完全に立ち遅れたと言われている。