小泉内閣メールマガジン

関東学院大学
本間 英夫

6月14日に小泉内閣メールマガジンの創刊号が配信された。その時点での登録者は約130万人、一週間後の21日時点では180万人、28日時点で200万人突破、第4回目の7月5日時点では211万人と、関心が高まってきているという。この4点の数値をプロットしてみるまでもなく、そろそろ定常状態に達しているといえる。7月12日、第5回目に配信されたメールマガジンには、次のようにこのデータを分析していた。以下に配信された文を要約した。

 我が国のパソコンによるインターネット利用人口を3,723万人とすると、そのうち5.7%、また、全人口1億2,692万人の1.7%の方が登録している。

(年齢別の登録者数)

10代 9万人(4%)

20代 52万人(26%)

30代 63万人(31%)

40代 43万人(21%)

50代 24万人(12%)

60代 9万人(5%)

70代以上 2万人(1%)

不明 9万人

合計 211万人

(職業別の登録者数)

会社員 93万人(46%)

会社経営・役員 13万人(7%)

自営業 17万人(8%)

公務員 13万人(7%)

その他の職業 20万人(10%)

学生 21万人(11%)

無職 24万人(12%)

不明 10万人

合計 211万人

(都道府県別の登録者数)

1 東京都 34.4万人(17.3%)

2 神奈川県 21.2万人(10.7%)

3 大阪府 14.8万人(7.5%)

4 埼玉県 12.3万人(6.2%)

5 千葉県 11.6万人(5.9%)

6 愛知県 11.5万人(5.8%)

7 兵庫県 9.0万人(4.5%)

8 福岡県 6.4万人(3.2%)

9 北海道 6.4万人(3.2%)

10 静岡県 5.1万人(2.5%)

なお、海外にも2.6万人

このデータに基づいて、小生なりの感想を以下に示す。

まず、インターネット利用者が3,723万人としているが、この数値は3月号に書いた時よりも1,000万人以上増加したことになる。3月の時点で5人に一人の利用者、それがたったの4ヵ月で、日本人の3人に一人がインターネットを利用していることになる。何かこの数字には、計算の根拠で間違いがありそうだと3月号でも指摘したが、ともかく、この利用者の急激な増加は、おそらく携帯電話でのインターネットへのアクセスが増えたからであろう。メルマガの登録はパソコンからしか出来ないとしたら、登録者が211万人はかなりの人気である。

これを契機に、パソコン通信をやりたいと、新しくパソコンを購入した人もいるようであるが、今までの5回のマガジンの配信を見ると初めはものめずらしさも手伝って、全部をくまなく読んだ。首相や厚生大臣の人間味のある話題には心打たれた。

しかし、その後はどうもトーンが同じで魅力が低下してきた。すこしマンネリ化してきた。万人受けを狙っているので致し方ないと思うが。メルマガ構築にあたり、5億円の予算を取ったとのことだが、もう少し編集担当者は魅力作りに腐心してもらいたいものだ。

 登録者の分布を見ると、都心部に集中している。当然、インフラの整備との関係があり、高速ブロードバンドが未だほんの一部の地域でしか利用できない現状で、この数値は高いと見たほうがいい。また、年齢別登録者を見ると30代に山があり、年齢の増加に伴なって、急激に登録者は低下している。日本がITでは先進諸国の中で遅れをとっているが、この曲線が嵩上げされ、しかもプラトー(高原)になって、ブロードなバンドになって、初めて本物になる。

そのためにも、情報ハイウエーを一日も早く構築されねばならないのである。従来型の公共投資のように、ゆったり継ぎはぎでやっているようではいけない。5年後に世界一を標榜するならば、今すぐ政府が民間とともに素早く着手しなければならない。この種のインフラの整備には政府と民間の協力がぜひとも必要である。

 米国のIT関連企業の業績が期待したより上がらなかったことで、関連企業の株価は値を下げ、いわゆるITバブル。この一年くらいの間、日本でも同じように失望売りで、関連の株価が大きく下げている。半導体の設備投資額は2割減、半導体製造工場も生産縮小、牽引役であったIT産業が大きくスローダウンしている。

 インフラ整備が進まない限り、また、その間は設備投資が先行するので、業績には反映しないのは当たり前である。

半導体をはじめとして、エレクトロニクス産業はいずれも業績は、本年度に入ってほとんど土砂降りといわれている。

それにしてもこれからのグローバル化の社会の中で、日本の思い切った舵取りを政府は進めていかねばならない。21世紀最初の国政選挙、参議院選挙結果は小泉人気で自民の圧勝に終わった。これからが本格的な聖域無き構造改革、痛みが当然伴なうであろうが、国民が納得するセーフティネットをきっちり張り改革を断行されたい。守旧派もここで考え方を変えないと、自民分裂政党再編に繋がることも視野に入ってくる。

デフレスパイラル

製品価格は、毎月、前月比で下がっていると言う。販売の数量は増えているが、販売金額は下がっている日本のGDP500兆円に占める、個人消費は300兆円。

スーパーに足を運び価格を見てみると、どの製品も値下がりしている。

パソコン、デジカメ、携帯、DVDなどいずれも高機能、低価格。7月中旬の新聞によると、デジタル家電製品を各社軒並み15から30%値下げするという。売上がピーク時の7分の1の一万台とか。したがって、生産拠点をアジアに移管せざるをえないという。車も最近では部品の共通化で、低価格車にも機能の高い部品が使用されている。土地も住宅も下がり続けている。値上がりしたものは見当たらない。

有楽町のそごうのデパートにビックカメラがオープンした。ものすごい人気のようだ。学生によると、ユニクロでは品質の高い衣料品を低価格で販売しているという。

四季報を見てみると、4000億円の売上げでに対して、1000億円の利益を上げている。

徹底的に高品質製品を低価格で提供している。その秘密は中国での生産である。人件費を徹底的に抑え、高品質のもの作りのノウハウを中国に持ちこみ大成功だ。今までは繊維製品は日本のお家芸であったのだが。

 このように低価格化製品がジャンジャン売れるとともに、高級ブランドは最近は売れないのかと思っていたら、高級車は予約でいっぱいだという。また、女性好みのエルメスとかルイヴィトンとかという、高級ブランド製品のメーカーがデパートの中に進出し、しかもそれが大人気であるという。イタリアやフランスの本店に行こうと誘われたことがあるが、買い漁っているのは日本人だけ。

物質文化から精神文化へといわれているが、戦後の全て失った中から、GDPで世界2位まで駆け上ってきた、背景には精神的なものより物質的なものへの渇望から、がむしゃらに働いてきた、そのつけが今、日本に襲ってきているのか。世界地図を眺めてみると、こんなちっぽけな国が世界2位まで上りつめたこと自体がそもそも間違っていたのではないか。

 これからは国際協力の中で、日本の特徴を出していかねばならない。その大きな特徴の一つは電子立国であったと思う。日本は一流になれるはずだ。

しかし、最近ではほとんどタイムラグ無しに、アジアで同じ品質の製品ができるようになってきた。日本はこれから何を特徴にすればいいのか。8年後に中国でのオリンピックの開催が決定した。中国では国際化に向けて、これまで以上に工業化に着手するであろう。日本GDPはこのままずるずる下がり続けるのであろうか。

これからの日本製造業はどう変わらねばならないか、真剣に考える必要がある。

研究開発費について

最近、新聞やテレビで国立大学の独立法人化、TLO、大学からのベンチャー発信、産学協同などの言葉が多く耳にしたり目にしたりするであろう。今までも、この雑感シリーズでこれらをキーワードにして話題を提供してきた。ある国立大学の学長が以前に、「日本は研究開発バブルに陥っている。」と語ったことがある。

 これからの社会を考え、大型のプロジェクトに研究費をどんどんだす。また、政府も金さえ出しておけば成果が上がると、かなり思い切った研究費の補助を行ってきている。

 極端な場合は、はやりのテーマで申請すると、どーんとお金が出て、その使い道で頭を悩ますという、ばかげた現実があるという。無理にその設備を導入し、一度、使ったらそれで終わり、後は見学者用に全く有効利用されないまま、埃がかぶった状態になる場合が多いという。

 本年度、小生の研究室に小額の助成が決まったが、直ぐに業者が駆けつけてきた。小生が知る前から業者が知っているとは、どのようなシステムになっているのか。本年の科学技術白書によると99年度の研究開発費の総額は、16兆円で米国の29兆円に次いで世界第2位。3位は6兆円のドイツだという。GDP比で3.1%で先進5ヶ国中でトップとのこと。それに見合った成果は?

 科学技術に関しては、あまり性急にその成果を期待するべきものではないだろうが、それにしても北欧、米国などと比較すると、いつもトップではなく2番手、あるいはそれよりもずーと遅れをとっている。

 日本の大手の企業は、多額の研究寄付金や助成金を日本の大学ではなく、北欧や米国の大学に出している。それにはやはり魅力があるから、また、成果が現実に出るから出資するのであり、日本ではお付き合いで出しているようにも見受けられてしまう。

 有識者が色々論議した結果だろうと思うが、2ケ月くらい前にトップ30大学、研究費の重点配分するとの記事が出た。本年度から第2期の科学技術基本計画がスタートし、5年間で24兆円の研究開発投資を行うとのこと。

 多額の研究開発費を出せば成果が上がるというものではない。資金が無ければ創造型の研究開発が出来ないわけではない。小生にとっては、犬の遠吠えのようなものだが、自分の領域であまり投資をしなくても、効率良く、創造型の研究をこれからもやるしかない。