産学協同のルーツ

関東学院大学
本間 英夫

産学協同の推進が強く叫ばれているが、本学が日本の産学協同のルーツであることを知っている人は少なくなった。詳細は、関東学院大学工学部50年史、関東化成工業30年史や中村先生が執筆された回顧録に譲るとして、若干振り返ってみることにする。  

昭和21年、関東学院大学の前身である工業専門学校に、学生の技術習得と、学生に働き場所を与えることを目的として、実習工場がスタートした。昭和23年には、工場内に関東学院技術試験所が併設され、昭和26年に私立学校法の改正にともない、教育事業のほかに学校経営を支える収益事業ができるようになり、独立採算性の事業部が立ち上がった。

昭和28年には通産省からの助成金の交付を受け、関東自動車、トヨタ自動車向けのめっき加工の生産に入った。その後は、トヨタ自動車工業と技術交流が開始され、大学発の研究開発として多大の評価を受けるようになった。

次いで、昭和35年に工業化学科が設立され、中村実先生を初めとして技術スタッフの総力で、昭和37年に世界に先駆けて、プラスチックス上のめっき技術に成功し、表面処理業界にとっては一大革命をもたらした。現ハイテクノ社長の斉藤先生は、当時の事業部に籍をおき、横浜国立大学の大学院でプラめっきのキーテクノロジーである無電解銅めっきの基礎研究に着手された。今、盛んとなってきている社会人国内留学の走りだ。

そのときに提唱された『混成電位論』は、まさに無電解めっきの析出を理論的に明快に解析したもので、この研究成果に対して、当時関連学会から理論の提唱に関する論文に対して論文賞を、またプラめっきの確立にたいして技術賞が受賞され、関東学院大学の名前は表面処理分野では大きな評価を上げるようになった。しかも、国内はもとより、アメリカでも大きな反響があり、マスコミで大きく報道された。

当時は日本発の技術はほとんど無く、ヨーロッパやアメリカからの模倣が多かったのであるが、これら表面処理に関する一連の研究は、関東学院大学発の独創性の高い輝かしい実績である。

残念ながら、一連の研究論文は日本語でかかれていたために、世界的に評価されるまでに数年の期間を要した。

したがって、私が中村先生を受け継いで研究を遂行していく中で、論文の幾つかは英語で書くように心がけてきた。又、国際会議にも積極的に参加するようにしてきた。それが評価されて最近、内外の関連学会の賞を幾つか受賞している。特に海外の賞は日本人がまだ2、3人しか受賞していない賞で、これらは研究室を巣立っていった卒業生に代わって私が代表して頂いたものであり、みんなで喜びを分かち合うようにしている。

中村先生から研究室を引継ぎ30年になるが、コースドクター4名、論文博士1名、博士前期課程および卒研生あわせて、研究室を巣立っていった学生は300名以上になる。

これらのほとんどの学生は、表面工学の領域の産業界で活躍している。

このように、学院の事業部とともに研究を続けてきたが、つい最近まではいずれの大学においても、企業との協同研究に関しては評価されてこなかった。

我が大学の事業部は昭和42、3年から学園紛争が激しさを増し、産学協同路線反対との声が学生のみならず、若手の教員の中からも上がり、昭和45年に事業部を廃止し、大学が筆頭株主とする株式会社にせざるを得なかったのである。

現在は、各大学発のベンチャー企業の立ち上げが頻繁に報道されているが、すでに我々の大学では事業部から始まり、株式会社を持つ大学として社会に貢献していることを、強調すべきである。この1年間、雑感シリーズで大学と産業界の連繋について問いかけてきたが、我々の大学がこれまでの歴史、伝統と校訓をベースにし授業料にほとんど依存してきた研究と教育の仕掛けを変えていかねばならない。

アメリカやヨーロッパでは大学は、施設を提供するが、研究費は自分で稼がねばならないのが常識である。

アメリカに本拠地を持つ学会のリサーチボードメンバーになっているので、助成金の審査員もやっているが、アメリカやヨーロッパの大学の研究者は、こぞって研究助成に応募してくる。

日本においても、最近では国立大学の独立法人化、TLO、大学発ベンチャー企業、産学協同と頻繁に報道されるようになり、これからは自ら研究費を稼がねばならなくなってきた。

大学全てにおいて、国や財団の助成金を初めとして、民間からの委託や共同研究費を集める努力をせざるを得なくなってきている。本学においては、工学関連の研究組織として工学総合研究所と設備工学研究所があるが、これらをベースとして、更に活発な研究活動ができる体制作りが望まれている。

これからの研究は、大学の研究成果の権利を守り、再投資のための原資を稼がねばならない。他大学と同じ事を、しかも後追いでやっていてもジリ貧になるだけだ。

産学協同のルーツが、本学である自覚と自信を持って、産業界との連繋を更に緊密にする仕掛けを作り、学生の教育研究に生かしていかねばならない。

コーヒーを飲んで昼寝を

2月下旬、文部科学省の「快適な睡眠の確保に関する総合研究班」は、午後の作業能率を向上させる『正しい昼寝の方法』をまとめた。それは、昼寝をする前にコーヒーを飲み、目覚めたら外光を浴びようと言うもの。

人間は、夜間に十分睡眠をとっていたとしても、午後2時ごろになると眠くなるらしい。

このように日中の眠気は、作業能率の低下だけでなく交通事故を起こす原因にもなり、手軽な眠気防止策が求められていたと言う。

30分以上睡眠をとってしまうと目覚めが悪く、体がだるくなってしまう。したがって、15~20分の昼寝が疲れを取り目覚めがいいとされている。研究の成果発表によると、目覚めに良いとされる行為を幾つか試し、その効果について脳波を測定して、眠気の〈残り具合〉が調べられた。

その結果、最も目覚めが良かったのは、コーヒーを飲んでから昼寝をし、目覚めたら明るい照明を浴びるのが最高の効果を示したとのこと。コーヒーを飲んでからの昼寝ではカフェインのせいで睡眠(仮眠)が取れないのではと思われるが、カフェインが脳に届くのに30分程度かかるので、20分~25分程度の昼寝では、カフェインの睡眠に対する影響はなく、しかも起きてしばらくするとカフェインの効果が現れ、仕事の効率がアップするらしい。とはいっても私は、夜中の1時過ぎに床につく。4時か5時に一度起き、6時過ぎまで新聞を読む。もう一度7時過ぎまで1時間くらい睡眠をとる。目覚めは極めていつも良好。次いで又、直ぐに新聞を読みながらテレビを聞いて?朝食を摂る。このような不規則な生活を送っている私や、夜中の3時過ぎまでコンピューターに首っ丈になっている、いわゆる『お宅族』にはこの研究は意味をなさない。しかも、色々研究することはいいが、この種の研究を文科省が行っているとは!人間をブロイラー化しているようで余りすっきりしない。

3月末、何も起きなければ・・

 この原稿を書いている2月25日、株価は一万とび3百円台、構造改革推進派は、公的資金の再注入も考慮しながら銀行の不良債券を一気に処理することによって、資金の流れを円滑化すれば景気は回復するとしている。

一方、デフレ警戒派は、バブル期の不良債券はすでに処理されており、現在の不良債権はデフレの結果である。デフレ下では企業収益は低下の一途をたどり、公的資金を注入してもデフレが止まらない限り、不良債権は増えつづけ、したがって思い切ったデフレ対策が必要であるとしている。

デフレスパイラルから抜け出すにはインフレ目標、円安誘導、消費を刺激する思い切った減税をと提唱している。どちらが正しいのかこの3月号が出る頃には思い切ったデフレ対策と金融システム強化策が打ち出され、危機が乗り越えられる状態になっていることを祈っている。