国際競争力ランキング
関東学院大学
本間 英夫
世界の大手企業トップが集まる世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は2004年版の国際競争力ランキングを発表、日本は前年の11位から9位と順位を上げた。
1位はフィンランド、2位アメリカ、3位スウェーデンで、前年の順位と同じ。アジアでは台湾が4位、シンガポールが7位に入った。
中国は、近年経済発展が著しいが、銀行制度の不透明さや官僚機構の非能率などが影響し、昨年の44位から46位に順位を下げている。
WEFの調査によると、80年代後半から90年代前半にかけては、日本は1位を独占していた。しかしながら、バブル崩壊とともに低迷し、何年か前にこのシリーズで紹介したが一時は21位まで転落し、その後日本も並みの国になったかに見えた。
今回のWEFの発表では、日本は「景気回復が持続し企業マインドが向上したこと、公的部門の透明性が著しく改善した」ことが評価された。しかしながら財政赤字や銀行経営の不健全さ、法人税の高さなどがなお順位を下げる要因になっているとのこと。技術力に絞って評価すれば日本は、バブル後もエレクトロニクス関連や自動車関連では群を抜いている。
物づくりの優位性
特に、物づくりに関する研究開発力、技術ノウハウは世界的に高い評価を受けている。我々の研究所には、最近海外からの問い合わせや技術者の訪問が多くなってきた。彼らといろいろ議論するが、日本の技術力を一様に高く評価している。私自身も、今までのようになんでもオープンに技術ノウハウを無償で提供するやり方から、きちっと権利を守り対価を研究所に入れる仕組みを構築している。どうも教員は、この種のことには疎いので、こと契約や費用の発生する問題には小生が前面に出るのではなく、副所長をしている豊田君にほとんど任せるようにしている。その中でこれだけは守りたい事、すなわち大学をベースにしている研究所であるので、学生が研究の一翼を担っていることを忘れてはならない。
したがって研究の成果は必ず学会での発表や学会誌への投稿は認めてもらうようにしている。今までも委託で受けていたテーマーの中で我々が手がけることによって大きく開発が進み、したがって企業側としては秘密にしたいとか、ここは発表しないようにとの要望がたくさん出てきていた。しかし、我々が優先して研究し、その結果として出てきた成果を拘束しようとするので、理屈が通らないと、敢然とこちらの要求を通すようにしてきている。
我々が英知を絞り、学生が昼夜別なく研究に没頭した成果が、何も公表できないとなると何のための研究なのかわからなくなる。当然、プロパテントの時代になってきたので、パテントを申請後発表するようにしている。
パテントの考え方
ところがそのパテントとなるとあれもこれも何でもパテントと、今までのやり方を主張する技術者が意外と多い。企業では実績をパテントの取得で判断してきたからなのか、玉石混交ならまだしもパテントの中身は、これでパテントなの?と思う石ころみたいなくだらない主張が多いのにはうんざりする。
だからパテントは申請するようにはしているが、まったく検索しないし、参考にしたことはない。
パテントに関して信用しなくなったのはかなり前に、このシリーズで書いたが40年位前に混合触媒の研究をしていたとき、ある先輩からこれを見てやりなさいと当時青焼きの字がかすんだようなパテントのコピーを渡され、それを参考にして研究したことがある。
ヒントになることはあったように記憶しているが、そのままトレースしてもまったくうまく行かない。キーになるところは伏せてあるわけだ。それ以来パテントなんかを参考にするのがばかばかしくなり、自分が率先してオリジナリティーの高いことをやっていれば、その方がやりがいもあるし、充実感がある。その癖が抜けず実は文献もほとんど読まないという悪い癖がついてしまっている。
元来、先達のやられた論文を参考にして研究をやったことがないので、参考文献となると既往の一般的な開発状況を示したりするくらいで、変な癖がついてしまったものだ。
中にはこのような研究者がいてもいいと思っているので、敢えて今までのやり方を変えようとは思っていない。学生にはよく話すが、世界に同じことを同時に発想する人が3人はいるぞと、文献を見るのは学生に英語の力をつけさせねばならないので、そのときになるべく最近の論文で興味の持てそうなものを引っ張り出す。
したがっていつも小生の机の上には新しい論文が包装されたまま置いてある。しかも海外の論文はけちをするわけではないが全て船便で入手しているので3ヶ月くらい遅れてくる。新情報、最新のニーズそれに伴うシーズ作りはもっとフロントでつかまねばならず技術者との交流は積極的にやっている。
国際語としての英語力
自分で言うのもおこがましいが、海外で名刺を交換するとほとんどの方々が、あなたが本間先生ですかお名前だけは存じ上げておりましたと、中には(若い研究者)恐縮して振るえて握手してくる人もいる。
本年は、前号でも少し触れたが都合5回海外に出かけた。もう小生も老年期に入り(?)英語の会話力も低下するばかりでストレスがたまるが、何とかして学生にだけは卒研一年では無理だが、マスターを終了するまでには英語で口頭発表が出来、質問にもある程度答えられるようにしてやりたい。またポスターの場合はface to faceで自分の考えがある程度相手に伝わるようになるまで伸ばしてやりたいと思っている。
今年は、その意味では海外に5人から6人くらいの学生と出かけたので、延べにすると20人くらい学生を連れて行ったことになる。その経験のもとに、学生は自覚し最近では英会話学校に通う学生が増えてきた。必ずしも英会話学校に通うことで、会話力が伸びることは期待できないが、要は自分がどれ位真剣に捉えるかであり、事あるごとに英語に触れるようにすればいい。CNNもあればABCもありライブでニュースが流されている。
また会話の教育番組も我々の時代と比べると格段に充実している。
敢えて研究室でこの人は成長したと誇っていえるのは、現在ドクターコース2年生に在籍している小山田君、彼女は4年生で小生の研究室に配属されたときは単位数も不足気味、英語は大の苦手で発音もイントネーションもあったものではない。「おい!おい!今までなにやってきたの!!」とあきれてものも言えない状態であった。
特に学部生の時は、外部での研究だったため輪講会にほとんど出席できず、能力は伸びなかった。
ところが大学院に入り、自分で自覚し英語くらいはやらねばとの意識が芽生え、特に一昨年ソルトレークの学会において、ポスターで発表してから、大きく意識が変化してきた。
本年、中国での発表の際に多くの他大学の学生の発表を聞き、「先生、今度はオーラルで発表したいです」それからエンジンがかかった。
10月の中旬に日米の合同電気化学講演大会がハワイで開催されたが、それに向けてかなり努力した。本人は女子高出身であり大学の一年から男子学生の圧倒的に多い中で学生生活を送ってきたので、かなり負けん気が強い。何をやらせても最初はテンポが遅いが、掉尾の一振のごとく、最後の追込みは目を見張る。
今回は口頭発表、最初のチャレンジ!したがって、華麗にやりたいと思う気持ちは勿論、本人も小生も同じである。指導教授としてサポートしてやらねばならない。今回はギリシャでのポスター発表、早稲田大学でのシンポジュウムでのポスター発表前のショートトークそれに続く口頭発表であったので、準備不足になりがちであることは当然予想された。
本人が自信を持て発表できるようにと、ハワイ出発前に「おーい原稿できたか?」ところが、まだ出来ていないという。機内で最後の仕上げをやるという。ハワイのホテルに到着後、最終的に小生が表現や発音、イントネーションをチェックすればいいと他の学生の前で本番と同じムードさながらに練習をしてもらった。
初めは原稿を見ていたが、最終的には諳んじて発表したいと真剣である。他の学生を交えて確か3回くらい練習をしたが本人は自分の部屋で真剣に練習を重ねたのであろう。本番ではこちらが指摘した発音、イントネーション、ほとんど諳んじてパーフェクト。かなり緊張したのであろうが本番に強いところを今回も実証してくれた。日常会話の力もこの1、2年で大きく伸びヒアリングの力はついてきた。但し今回発表後の質疑応答では発表そのものが華麗にやったので、逆に質問そのものがかなり早口でまくし立てられてしまい、何を言われているのか掴みきれず、しばらく時間を置いて小生が共同研究者の立場として、その質問に答えた。
初回の口頭発表としては上出来であったと思う。来年は韓国で国際会議があるが、そのときまでには本人の真剣で真摯なチャレンジ精神で華麗に質問にも答えられるようにはなるであろうと期待している。
彼女のように、学生自身が目覚め熱く燃えて、成長していく姿を見ることができることは、教育者としてもっとも充実感を覚える瞬間である。
来年度は研究室にドクターが6名、マスター10名、学部はおそらく8名くらいの大所帯になるので9月から10月にかけての一連の国際会議は学生諸君にとっては大きな刺激になりこれまで以上に朝の輪講会が充実するようになって来た。
インターネット依存症?
1ヶ月くらい前の新聞に、会社員のインターネットユーザー300名(男性228名・女性72名)に対して調査結果がでていた。それによると、「長期休暇時」のインターネット利用状況は「平日と同じようにビジネス以外のメールの確認を行う」が25・5%、「平日と同じように趣味や娯楽などのサイトをチェックする」が25・4%で上位2位につけ、以下「ビジネスメールの送受信などを行う」(11・6%)、「平日とは違った趣味や娯楽などのサイトをチェックする」(10・9%)、「平日と同じようにビジネス系サイトをチェックする」(9・1%)などが続いた。(複数回答)
長期休暇で旅行などに出かける場合、可能であればノートPCなどインターネットに接続して作業できる機器を「持っていきたいと思う」と答えたのは全体の58・3%で、2003年より約3ポイント増加したそうだ。その理由としては、「メールチェックだけは、こまめにしたい」というユーザーが半数以上、その他「現地の情報を入手するのに便利」「電車や飛行機の待ち時間の暇つぶしに」といった声が挙がっていたが、中には「持っていないと不安」「仕事上、いつメールで連絡が入るかわからないから」といった意見も挙げられたという。
一方、「持っていきたいと思わない」とした41・7%は、ほとんどが「オフの時に仕事の事は考えたくない」「旅行時に普段使っているPCを触るのはいや」など、面倒・煩わしいといった意見。これらの理由は昨年とほぼ同様でPCや PDA 等のモバイル機器を「持って行く派」と「持って行かない派」がはっきりしてきたとみている。
この調査は会社員に対してアンケート調査されたものでありこれを職業別、年齢別に分けて調査するとかなり違った結果が出ると予測される。アンケート調査は調査対象、調査の意図、質問事項によって意図的にストーリーを構築できる場合が多いので注意せねばならない。
その結果が現時点での代表的な流れだと勘違いするようなことがあるのでアンケート調査は実施する側も、その結果を判断する側も注意が必要である。特に教員に限ってみると、国内も海外でも忙しく責任のある教員になればなるほど少なくとも一日に2回は必ずメールのチェックはしている。
学生に対しても緊急の要件、アーっと思いついたとき、すぐにメールで配信するが現在20名以上の学生がいる中で1時間以内に返信してくる学生は5人くらいいる。また24時間いないになると90%近くの学生、あとは先生見ていませんでした、遅れて申し訳ないと数日後に返信がある。
小生はことさら故意にメールで必要事項を配信するようにして学生には必ずメールを一日に一度はチェックするような癖をつけるように仕向けている。また学生には連絡係を設けその学生がメールで全ての学生に連絡事項を配信するようにしているので研究室の学生にとっては、パソコンは必須アイテムになってきている。
当然これからの世の中、当たり前の道具として使用されるので学生時代にその癖をつけるように仕向けているわけだ。