最悪の就職戦線
関東学院大学
本間英夫
これまでに経験したことのない大不況に見舞われ、多くの企業では存続をかけていろんな対策が取られている。特に企業における重要な経営資源は人材であり、優秀な学生の採用が大切である。
各企業にとって、長期展望の上に真に必要な人材を明確化し、採用計画を立てることが重要であるが、多くの企業では、その前に、今まさに足元を固めることに注力せざるを得ない状況にある。
従って本年は採用を完全に控えたり、採用人員を大幅に削減している。その影響が就職希望の学生に直撃している。
採用にあたってはインターネットによるエントリーに始まり、会社説明会、人事面接、技術面接、役員面接と最終選考までのステップは4段階から5段階で、その間学生は拘束される期間がすくなくとも2ヶ月くらいに及ぶ。
それ故、学生はリスク回避から複数といっても2ケタ以上の企業にエントリーすることになり、その間は全く知識の蓄積の時間的余裕はないし、卒研や修士論文に手をつける時間がない。従って企業にとっても大学にとっても本人にとっても、ひいては日本全体の産業界にとっても全く非生産的である。
日本がこれまで世界的に力をつけてきたはずの技術力は、このような採用方式をとり続けていると、ボデーブローのように、じわじわと低下してくるであろう。
早い段階で、この種の一般的な採用方法を見直す必要がある。以前にもコメントしたことがあるが我々の研究室では企業側が特定採用をしてくれているので、今回のような最悪の不景気にもかかわらず、すでにほぼ全員の内定が決まっている。(協定で10月正式採用決定になる)
一般的には、企業にとっては、これまでに正社員として働いたことのない新卒者の行動特性を見極めるのは簡単ではない。
採用試験にあたっては、潜在能力や適性を短時間で判断せざるを得ないが、たった一度の適性検査や面接で学生の資質と適性を見極めることは難しい。
それ故、まだまだ一般的ではないが、徐々にインターンシップや大学との協同研究などを通して、必要としている人材を探す方法が浸透してきている。
我々は、中村先生が教授であった45年以上前から、就職課の窓口はほとんど利用せず、企業からの採用に関しては直接先生に企業から要請があり、先生の判断で決められた。この手法は小生が教員になった後も継続している。従ってミスマッチはかなり防げるはずである。
しかしながら、最近の学生はストレス耐性が低い。若者のストレス耐性の低さは、かなり深刻な問題を内包している。企業では、メンタルヘルス上の問題を抱える人を見極められねばならないので、面接にあたって、かなり意地悪で威圧的な質問を投げかけるような手法が多くなってきているようだ。
特に本年のように超買手市場になるとその傾向は強くなる。このような面接方式がいわゆる圧迫面接といわれている。しかし、ほとんどの学生は受験の際の志望校選びと同様、何社も(中には数十社応募は当たり前で100社も応募した学生もいると聞く)応募し自分が気に入るところを選ぶので、この種の威圧的な面接をする企業は印象を悪くし、内定時には逃げられてしまい、企業イメージ上にもよろしくない。
採用とその後の教育は人材育成上、車の両輪できわめて大切な項目である。長期展望にたった人材構成と採用プランは、企業の永続性な成長には欠かせない。それには、我々学生を送りだす側も意識を高めねばならない。
さらには、最近の団塊の世代の退職が社会問題になっており、彼らが退職した後は企業や研究機関での人材が育っていない。
その原因としては、企業側ではシニアによる技術の伝承がうまく機能していないこと、また大学側では、多分に研究室の制度が破壊されてきたことの後遺症と、それが増幅されている影響が大きい。
これまで開発を主に行ってきたか企業においても、大学の研究室においても、それぞれこれまで蓄積されてきた技術の取り組みのいい面を残し、研究体制を復活し、次の世代に技術を継承する人材を育成していかねばならない。
技術開発力は発想力の豊かな少人数の開発集団と、さらにはそれを実用化するためのチーム力が必要である。我々も、今まさに21世紀型の研究開発と実用化に向けた研究集団を研究所として構築していかねばならない。
本学の他の研究室の就職状況を聞いてみると4年生のまだ1,2割しか内定が出ていないという。本年は学生にとっては大変な1年になるだろう。
底を打ったか株式市場
東京市場の日経平均は、6月11日に2008年10月8日以来となる1万円を回復、12日にはさらに終値で1万150円を突破、出来高も40億株程度と活況を呈した。
市場関係者によると、景気回復期待を織り込む一方、各国の金融緩和政策や財政支出による過剰流動性がリスク資産に流入し、投資家心理が改善した結果と分析していた。
この先、上値については市場関係者のコメントによると、先高期待先行で、上昇を続けるとの見方が出ているほか、企業決算や経済指標から判断して4―6月期での底入れが明確になってきたとみて、もう一段の上昇を見込む予想が多い。
一方、米金利の上昇圧力や円高、国内での総選挙などの不透明要因もあり、上値は重いのではとの見方も出ており、1万0500円─1万2500円と予想している。予測不可能な変動要因が多い株式市場では株価の予測は難しいが、6月中旬の市場関係者のコメントは、以下のとおりである。
A氏
景気の底打ち感からの回復期待と、各国の金融緩和策と財政支出による過剰流動性から平均株価は値上がりした。
この過剰流動性相場が機能しなくなるとすればそれは米国の金利上げだが、年内の利上げはないだろうが、米国の雇用問題は深刻であり従って個人消費が回復するかは微妙であり、景気の実態が期待しているほど回復していないとなれば、失望による株価は下落するだろう。
また財政赤字懸念から米金利が上昇することも注意すべきである。
従って、市場に失望が広がれば、秋以降8500円程度までの下げはあるだろうが、その後、来年の景気回復期待から年末までに1万1000円程度まで回復すると予想する。
B氏
1万円の大台は回復したが、今後は手掛かり難から1万円付近で推移するとみている。
8月に総選挙が実施され、政権交代なら9000円付近に下げ、その後景気が回復し、年末にかけて1万1000円に回復する可能性はある。しかしながら、年明けは息切れするとみている。
C氏
景気回復期待から理想買いの段階に入り日経平均1万円回復を示した。今期の業績予想を踏まえれば、ここから上昇すると株価収益率(PER)の壁に突き当たるが、先行き収益が回復すれば高PERもクリアでき、業績回復を買い始めたとみることができそうだ。
これまでのネガティブなムードから、ポジティブな見方が広がり、投資家心理が大きく好転してきている。
底値からかなり戻したとは言え、上昇余力はまだまだ大きいのではないか。ヘッジファンドから個人まで幅広い投資家層の間で、パフォーマンスが改善しており、ジリ高のトレンドを今後も維持し、日経平均は年末までに1万1000円を目指す動きになるとみている。
D氏
株価回復の背景は、過剰流動性にあるとする向きもいるが、流動性が過剰になっているという統計は特に見当たらない。
原油などの国際商品や株式などリスクアセットに資金がシフトしているのが実情で過剰とは言えないだろう。
日本の国内総生産(GDP)は約520兆円で、東証の時価総額は約300兆円まで回復し、GDPに対する比率は約60%で、これまでの平均75%をまだ下回っている。
PERは、企業の利益から割高だとの指摘もあるが、今後企業利益は上方修正されていくだろう。
株価は今期の利益だけでなく将来の利益を織り込み、株価が形成されるので、日経平均は来年3月をめどに1万2500円程度を目指すとみている。
E氏
余剰の投資マネーが新興国市場や商品市場から先進国の株式市場にも流入し流動性相場を示している。
短期テクニカル指標が過熱しているため、目先の日経平均は1万0500円程度で頭打ちとなるだろうが、今後の企業決算や経済指標で4―6月期での底入れが明確になってくる。早ければ8月ごろにも1万1500円から1万2000円の高値はあるとみている。
F氏
中国を中心としたアジア市場がしっかり推移し、需給改善、為替でのドル高基調などが総合的に下支えして1万円を回復したが、景気回復への期待感がかなり先行している。
米国を中心として利上げを含む金融政策の転換につながると景気回復の腰折れとなる可能性もある。
当面はリーマン・ショック前の2008年3月23日につけた安値1万1691円00銭が上値の目安とみている。夏場にかけて景気回復への期待感が続くかどうかが鍵となりそうだ。
G氏
投資家の多くは、まだ景気や企業業績の先行きに懐疑的であり、投資タイミングを失っている。出来高は流動性相場と呼ぶには少なすぎる。ベンチマークに追いつけず、パフォーマンスの悪化しているファンド等が買いを入れるのはこれからだろう。
日経平均は早ければ6月末にも1万1000円程度に到達するとみている。買わざるを得ない投資家がウエートを高め、需給相場が一巡すれば、いったん調整に入るだろう。
およそ50年の投資経験から
このように、いろんなコメントが市場関係者からでている。いずれにしても、この半年の間、事あるごとに技術関連以外の話題では、どんなセクターでも今は買い時で、目を瞑って何を買っても値上がりするから、こんなチャンスはないよと言ってきた。谷深ければ山高し、当たり前のことで、自分がその企業を応援する気持ちでタイミングを探し、ほぼ底値で買いを入れ、長期投資すればいい。売買に一喜一憂することもなく自然に財産を増やすことができる。
高校の2年だったか、もう50年も前になるが親から、株式投資をしてみるかといわれ、高校生としては手にできないような金額をいただいて投資を始めた。大学に進学する頃は、まじめに場立ちになろうかと「ナマリ」「マムシ」「テツ」「カヤク」などと符丁を覚えたり、売買のサインも覚えたものだ。