電子メールの活用

関東学院大学
本間英夫

電子メールをコミュニケーションツールとして使い始めたのは何時頃からだったか、10数年になると思うが、もう忘れてしまった。現在は、1日に50から60件位のメールを受信し、その内、返信しなければならないメールは、およそ35件から40件位。後は、学会などからのお知らせや、広告宣伝とジャンクメールである。いずれにしても、今や連絡には欠かせないツールとなっている。

15年近く前までは、電話での応対が多かったが、今では迅速性、利便性から多くの要件はメールで対応している。したがって、大学のオフィスや自宅からの固定電話でのやり取りは、めっきり減った。

ただし、電子メールでのやり取りは便利だが、誤解を生みやすい一面もあるので、複雑で説明に時間を要する内容は、電話で会話すれば、電子メールで生じるような誤解は無くなる。

電子メールでは、ちょっとした表現で人を傷つけたり、内容について思わぬ受け取り方をされたりすることも多いと言う。中には、電子メールでやり取りをしているうちに、ささいな意見の食い違いから話がもつれ合い、お互い不信感を持ってしまう場合だってあり得る。

私自身はどちらかというと、人と向き合って話す時は相手を見て、正義感に燃えて直球勝負することが最近多くなってきたが、メールでは感情が伝わらないので、気遣いをする一方で、細心の注意を払っているつもりだ。

しかしながら、気遣いをしているつもりでも、中には挑戦的で、全く引き下がろうとしない人もいて辛い思いをした経験もある。その人とは、面談しても挑戦的で、先輩をリスペクトする気持ちが欠落しているようで、今でも、しこりが残っている。

幸か不幸か、感情的に、挑戦的にやり取りしたメールの入ったパソコンは、ウイルスに侵され残っていない。しかしながら、自分の記憶の中では、その人とのやりとりがあまりにも理不尽で強烈だったので、今でも暗い記憶として残っている。

同じく、自分では気付かないが、誤解されたり、相手を無自覚なうちに傷つけたりしていることもあるのではないかと危惧している。

この原稿を書いているさなかに、ある友人から、「さてさて」と題して「周辺はいろいろと忙しいですなあ・・・」と、ここに示した通りの短いメールが来た。これはまさに、初めから小生に対して、シニカルな意味を込めての、メールである。そこで、「他人の不幸は蜜の味というが、そのような傍観者的な視点から見ないようにお願いしたい」と、短く返答しすぐに電話した。

本人は不在であったので何度も電話し、数時間後に連絡が取れ、本人の部屋に行き、「周辺はいろいろと忙しいですなあ・・・」の内容の説明をした。彼は即座に自分の傍観者的な気持ちに立っていたことに対して、「申し訳なかった」と謝った後、比較的長いメールで「他山の石」というのは肝に銘じておかないといけないとの気持ちを伝えてきた。

本人とは40年来の付き合いなので、なんでもざっくばらんに話をしたり、ある時は激論にもなったりするが、極めて仲のいい同僚である。
 この様に、電子メールはコミュニケーション手段として、重要なツールになってきているのだが、普段から送信内容が相手に失礼にならないように、文章は吟味すべきである。

そこで、電子メールの送受信で誤解が生じないようにするには、どのような配慮が必要か自分なりの考えを示す。

誤解のない電子メールでの送信のコツ
 なぜ、電子メールでのやりとりは誤解を生じやすいのか、その原因は、フェイストゥフェイスのコミュニケーションよりも伝達情報量が少ないことに起因する。したがって、業務連絡などの知らせは、手短に書くように心掛ける。また、時間のかかる相談や自分の意見をメールで述べるのは極力避けて、簡単なメールの後、本人に直接会うか、または電話で話すのがいい。

長いメールを書いても忙しい人はうんざりするだろうし、自分が一生懸命に思いを伝えようとしても、読むのに時間がかかるだけで効果が低い。
 我々のコミュニケーションは、言葉に加え、相手の表情や声のトーン、五感をフル活用して集めている。小生は若い時に無茶をし、歯の健康には全く留意していなかった。「80歳‐20本」などには全くおぼつかなく、多くの人工物?を口の中に入れている。

したがって、滑舌が悪く、講義や講演や打ち合わせ等で、相手に理解されていないのではないかと、それを確認する目的と、最近英語のヒアリングを怠っていたので、ICレコーダーを購入した。

10年位前に購入したICレコーダーは、録音時間が短かったが、今の製品はなんと24時間も録音出来る。そこで、学生との打ち合わせ内容を録音してみた。

自分では、ある程度標準語を使っているつもりだったが、50年も横浜にいるのにもかかわらず、生まれ故郷の富山弁のアクセントは抜けていないし、早口で聞き難く、これではと思ったが、もう意識しても修正出来ないと、諦めた。

結論として、フェイストゥフェイスでコミュニケートしていると、五感を駆使しているので、少し位滑舌が悪く、方言のアクセントが混ざっていても通じているのであると自己肯定。

要は、現代社会ではコミュニケーションが不足しがちなので、極力直接会って話をしたり、電話で話したりするのがいいと言うのが小生の結論である。

電子メールに不足している情報
 人との情報交換で伝わる情報は、「顔の表情が55%」「声の質や大きさやテンポが38%」「話す言葉の内容が7%」の割合になるというコミュニケーションの法則をメルビアンの法則というらしい。
 すなわち、情報の多くは言語のほかに、非言語の情報も大きな役割を果たしているということを示している。左記の私の同僚とのやりとりにおけるお互いの誤解は、非言語情報が電子メールでは欠落するからである。
 電子メールのコミュニケーションでは、表情や声のトーンは伝えられない。電子メールでは、言語情報のみで情報を判断し、不足情報を類推しなければならない。そこで、ビックリマークやハートマークなど、何種類かのマークを駆使して、感情面を和らげるようにしているが実情である。

したがって、メールではネガティブな内容は喧嘩別れをする場合はいいだろうが、そうでなければ否定的な内容は極力避けたほうがいい。
 以上のように、電子メールで誤解が生まれるのは、ネガティブな内容の時なので、電子メールを送信する時にはよくよく注意するようにしたい。
 また、電子メールを送信する時の心構えとして、相手が誤解しそうな内容の場合は、内容を吟味し、ネガティブな内容を避けるように努める。
 また、電子メールを読んで感情的になった時には、すぐに返信すると感情に任せた文面になってしまうので、誤解が生じやすい。時間を置くことで、気持ちを落ち着かせることも必要である。

また、相手からの電子メールを冷静に読み直してみると、相手が本当に伝えたかった内容に気付く場合もある。電子メールだけではなく、その他いろんな場面で感情的になった時は、一日置くと自分の気持ちが落ち着き、意外と感情的にならないものである。

電子メールのCCの功罪

仕事内容を共有するためには、メインの送信者以外の関連の人にはCC(カーボンコピー)で送ることが常である。

経過が分かるし、場合によっては推移を見て、メールのやり取りをしている当人たちに、サジェッションしたり、軌道修正をしたり出来る。

我々の研究所のスタッフや学生との間では、研究の進捗や内容について、研究やクライアントとのやりとりを共有するために、グループごとにCCを入れるようにしている。この中で注意せねばならないのは、情報が不足している内容や、ネガティブな内容を電子メールで送ると、誤解や人間関係の悪化を招く恐れがある。
 電子メールのやりとりで誤解が生じるようであれば、電話や対面によるコミュニケーションに迅速に切り替えるようにせねばならない。最近、小生の周りでいろんなことが起こり、2月号には若干鬱になり、この試練を乗り越えてきたと述べた。まさに、実際に直接話をすることで、ささいな意見の食い違いだったと分かることがよくあることだ。

たまたま、ネットサーフィンをしていた際に、まさに、「電子メールでの誤解を防ぐには」という内容が出ていた。その中の一部を紹介すると、「相手の言いたいことを否定して自分の意見を主張するのは、新たな誤解を生みやすい。人の意見は千差万別だ。相手の考えに理解を示した上で、自分の主張をする。誤解を防ぎながら、自分の主張を伝えることができるだろう。相手の言いたいことを考えることで主張にも一理あると気付く場合もある。」
 電子メールは、一度に多数の人に配信でき、情報の伝達時間も短縮できるので、仕事に大きなメリットをもたらす。その半面、誤解が生じた時の影響も大きくなってしまう。
 読者諸氏も電子メールにネガティブな内容が含まれている場合は、注意し、意識して見直してみましょう。

意見の食い違いによる誤解は、ちょっとした気遣いで解消できるし、相手とのスムーズな意思疎通を図ることにつながっていくと確信している。

電子メールや電話に対するレスポンスの早さ

メールで連絡した際に、素早く応答してくる人ほど、大学においても、産業界においてもアクティビティーが高い。

私自身は、メールを携帯電話には転送するようにしていないが、大学のオフィス、実験室、研究所のオフィス、自宅にそれぞれパソコンを配置して、何時もメールを送受信可能な状態にしている。また、海外出張は勿論、国内で一泊以上する場合は、必ずパソコンを携行し、何時もメールをチェックできるようにしている。

携帯電話に転送すると、もっと便利かもしれないが、ジャンクメールも多いので、携帯電話の メール機能は使用しないで、専ら発信専用の電話として使用してきた。

また、最近は車も快適性が高くなり、ブルー トゥース対応になっており、ハンドフリーで通話が出来る。誰もいない空間の中では頭がすっきりしていて、どんどん会話が弾むように思える。便利な道具になったと驚いている。

自宅から、大学および研究所への移動時には何時も学生への連絡、スタッフへの連絡、企業の方々との連絡と、時間を有効に使うことが出来る。

私はどちらかというとせっかちな性格で、思いついたら即座にメールや電話をする。

しかしながら、何度こちらが連絡しても電話がほとんどつながらないし、また、メールをしても返信が遅い人がいる。この様に、連絡のとりにくい人は、このスピード重視の時代、よっぽど雲上人でない限り、謙虚に猛省されたい。