新年に思うこと(問題解決に果敢に立ち向かうフロンティア精神)

関東学院大学
材料・表面工学研究所
梅田 泰

世界のお金の動き
 皆様、新年あけましておめでとうございます。今年は明るい兆しはあるものの、昨年同様にコロナ感染の問題から離れられない状況からスタートすることになってしまいました。皆様は良い年を迎えられたでしょうか。
 私はお陰様で、例年になくゆっくりとした正月を迎えることが出来ました。
 正月は暮れの大掃除がたたり、持病が悪化して、熱を出して寝込んでいることが多かったので、今年は暮れの掃除はほどほどにしたこともあり、健康で正月を迎えることが出来ました。感謝、感謝です。
 さて、そんな感じで余裕があったせいか、いろいろなことを考えました。

世界の富豪たちの資産の話と日本の税収
 世界のお金は世界のトップ1%の富裕層が世界の富の37.8%を所有し、上位10%が世界の富の76%を保有し、下位50%の人々の資産占有率は2%であるそうです。(President Womanhttps://president.jp/articles/-/53313)
 ということは50%の普通の人たちから集める税金は国家予算にとって微々たるものということになりますが、実際にはそのようなことではなく、普通の人たちからの税金で国家の予算は賄われています。令和2年度の「租税及び印紙収入予算の説明」(令和2年1月時点)によると、令和2年税収見込額は、63兆5130億円で実際は55兆1250億円でした。各税収としては令和2年度の所得税は約19.2兆円、法人税は約11.2兆円、消費税は21兆円、その他の税収となります。(https://news.yahoo.co.jp/) 一人当たり平均45万円となります。令和2年の国家予算は102兆6580億円ですから、簡単な計算では赤字として39兆1450億円となります。昨年役所の事務次官がこんな赤字があるのにばらまき予算は問題があると発言するのもあたりまえという感じがします。本来であれば富裕層から多くの税金を取ることが良いのでしょうが、あまり累進税率を過度に行うと海外に移住してしまう問題が出てくるようです。サラリーマンの給与からの所得税と買い物をした消費税が大きな財源になっているわけですから、額に汗して働いている人たちも大事にしてもらわなければなりません。

世界のデジタル化の潮流
 自分の普段の生活がコンピュータなしで生きられないと感じることがあります。家で必要なものはまずはアマゾンで売っていないか確認し、価格ドットコムで世間相場を確認し、製品を購入する。使い勝手などはカタログから想像し、満足がいけば購入といった感じです。
 子供のころは家電であれば、近所の電気屋さんに行き、品物をよく確かめて購入していました。電化製品好きな人は、わざわざ秋葉原に行って購入するといった具合でした。
 今は楽なものです。インターネットにボタン一つで配達時間まで指定することが出来、支払いもカードで簡単に済ますことが出来ます。
 これらはデジタル化のお陰で実現したものです。
 しかし、カード払いはカード番号をインプットするだけで購入できるので、いつデータが盗用されるか分かりません。
 今後、国のシステムをデジタル化する方向でマイナンバーカードを金融機関の口座等と紐づけて管理しようとしています。官庁の業務は複雑で人が関わることで処理に時間が掛かるため、デジタル化により、管理コストを大幅に削減できるはず。
 有用性は理解できますが不正使用への対策が心配な人は少なくないと思います。
 海外、特に中国ではアリペイなどが有名ですが、露天商の支払いもカード払いとなっており、カードの仕組みが分からない人はいないのかと思うほどです。
 しかし、これらのシステムはインフラ整備が遅れている山奥の農村では使えないでしょう。
 日本においてもシステムが使用できない地域はどのようにすべきかという問題が残りますが、それらを基準にすると永遠にデジタル化が出来なくなってしまうため、個別に管理方法を考える必要があると思いますが進めていかなければならないでしょう。 そのようなシステムに乗りそびれた人たちをサポートするシステムも重要になります。デジタル化を実現したとして、個人のデータが漏洩された場合を考えてみます。所得額、貯蓄額、家族構成などが漏洩されれば情報を得た企業は適時販売計画が立てやすくなります。
 当然それらのデータを企業は喉から手が出るほど欲しいはずです。セキュリティーが破られて、データが漏洩してしまうことは社会不安にもなりかねません。そのような中にあっても、データに氏名は公表されないとしても、貯蓄率や家族構成や住居の地域などはデータとして公表されることでしょう。私自身としてはデータが第三者に開示されてしまうことは嫌な気持ちがします。
 それではどのようにそれらの問題を解決するのでしょうか。国家機密でさえ、ハッキングされる時代ですから個人データのハッキングすることなど難しいことではないでしょう。海外の特に大陸の人たちはそれらのデータが外部に漏洩されることは理解しているはずですが、怖がっていないような感じさえします。日本人も頭の構造を少しずつ変化していかないと世界の流れについていけなくなるかもしれません。

問題があっても未来に向かって進む力
 海外では、コロナウィールス感染で何百万人の死亡者が出ていたとしても、マスクは嫌だとか、ロックダウンに反対するデモまで起こしたりしています。感染よりも自由を優先するといった具合です。クレジットカードでも、不正使用はカード会社が保証するから現金を持っていて強盗に襲われたり、小銭を払っている無駄な時間を短縮できる方が良いという具合なのでしょうか。そんな中で中国、欧米人にパワーを感じます。
 海外では急激に車の電動化とデジタル化を進めようとしています。その応用で自動運転を用いて一般公道を試走し始めています。(日本では公道道路内の低速走行のみ) アメリカではまだ試験段階ですが、手放しの自動運転の誤動作で死亡者が出ていますが、問題がありながらも路上試験を続けています。怖がるだけでは解決しないので先に進まなければならないというフロンティア精神なのでしょうか。このようなことは日本では死亡者が出れば、最大限の安全性が確保されなければ先に進めません。日本ではこのようなことは当たり前と考えていますが、リスクが企業に及ばないようにしたいという社会風潮があるからではないでしょうか。安全装置が付いる車でも安全装置が作動せず事故が発生した場合は、自己責任であると一筆書かされることもあります。安全の保障については変な国だと感じます。
 人間が運転していても、年間に警視庁調べで、昨年大幅に減ったと言っても国内で一日に847件、年に309,000件という事故が発生し、その中で2,839人の方が死亡しています。自動運転と比較すれば、人間の運転よりも交通事故は減るかもしれません。そのような結果となると予想できても、事故ゼロの未来を見据えて初期の失敗を許して行こうとはなりません。そう言う私自身も許すことは出来ないかもしれません。そのような環境に慣れていないからでしょう。もっと安全に対して未来のためのおおらかさを持つべきなのでしょう。
 アメリカでは会社を潰した経験があることをマイナスの経験としないようです。果敢に挑戦したという評価になる、と聞いたことがあります。これらの考え方は新しい時代を築くにはとても大事なことで、失敗した経験が最終的に大きく花開くことがあるからです。新しいことを始めるには、解決しなければいけないことが多く、手本となるものがないために大きな労力も掛かります。そんなときにはフロンティア精神は重要であると思います。

新しい開発に研究機関の知の活用
 新たな研究を始めたいと思うときに、自分達だけで開発が進まない時に公共の研究機関や大学の知の活用をすることも検討してみてください。どっぷりと問題点に漬かっていると、良いアイデアが生まれてこない時があります。場合によっては新しい発想のきっかけを提案してくれるはずです。今迄できなかったことも、ちょっと方向性を変えることで新しいアイデアが生まれることがあります。関東学院大学の材料・表面工学研究所では表面処理や材料開発のための幅広い経験を持ったスタッフが揃っています。特に、ファインバブル低濃度オゾン水を使った技術では、プラスチックのめっき前処理だけでなく、純水の殺菌や、めっき浴中の有機物分解や、脱色、生ごみの消臭など幅広い活用ができるようになってきました。
 基板のめっきで中国、台湾、韓国ではL&Sが2μmの開発が進められており、私どもではフルアディティブプロセスで樹脂にもよりますが、既に試作加工できる技術を開発しています。
 正月早々から愚痴ポイことを書きましたが、私が強調したいことはすべてのデジタル化に賛成しているわけではありませんが、世界の潮流に後れを取ると、思わぬ落とし穴に入ってしまうことを危惧しています。小学校の教科書で明治時代に電気が供給されるとランプが売れなくなると言って、その職人が電線を切ってしまうという物語でした。先に向かっていくことが悪いと感じてしまうと一生ランプで生活しなければなりません。
 フロンティア精神が発展には重要で、有効な知の活用も検討してほしいということであります。
 また、弱者への配慮を欠くことのない世界も重要だと思っています。
 今年も新しい技術の研究に挑戦して参りますのでよろしくお願い致します。