新年に想う
関東学院大学 教授
関東学院大学 材料・表面工学研究所 所長
香 西 博 明
2025年(令和7年)、新しい年の幕開けです。今年はどんな年になるのか。新年を迎え、思いをめぐらせている人は多いだろう。「昭和100年」、戦後80年、さらに阪神大震災から30年にあたる。節目の年だが、皆様にとって、よりよき年になりますことをお祈りしています。
さて、昨年を振り返れば、新年早々、最大震度7の大きな地震が能登半島を襲いました。被災者や離れた場所にいるその家族のつらさはどれほどだったでしょう。あくる日には、羽田空港の滑走路で日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突し、炎上する衝撃的な事故が起きました。20年ぶりの新紙幣(日本銀行券)の発行、能登地震被災地で豪雨、兵庫県知事のパワハラ疑惑、令和の米騒動、被団協にノーベル平和賞受賞などなど、気になったニュースは色々ありました。そして、なにより暑かった。やっと涼しくなったかな、いや11月になっても、まだ暑くて汗をかくほどでした。スポーツの明るい話題も多かった。バリ五輪・パラリンピックの日本勢の躍進が、関東はプロ野球(横浜DeNAベイスターズ:26年ぶり日本一)、関西はサッカー・J1リーグ(ヴィッセル神戸:二連覇)で、スポーツも熱かった。今年は、1970年に吹田市で開催されて55年ぶりに大阪・関西万博が夢洲(ゆめしま)で開催されます。異常気象や疫病による発熱はご勘弁願って、平穏な日々であってほしいものです。
コロナ禍の間に、少なからず世の中のさまざまが変わりました。ステイホームで往来が制限され、リモートで在宅勤務、在宅学習のためのウェブ会議、ウェブ講義が当たり前となりました。DeepLで翻訳がスムーズになり、ChatGPTに代表される生成AIで気の利いたレポートもコンピュータが作成してくれて、提出もネット経由です。来年の春に就職を希望する学生は、すでに就職活動(就活)をスタートさせています。では、企業の内定を取るために、大半の学生がまず頭を悩ませるのが、エントリーシートの提出でしょう。志望動機、自己PR、学生時代に打ち込んだこと、入社後にやりたい仕事、などなどでしょう。ところが、生成AIを使うと、簡単にできてしまいます。しかも欠点もポジティブにしてくれます。わずか2年余りで、驚くほど浸透したことになります。もはや学生が生成AIを使うのは止められないでしょう。生成AIが普及した今、学生の実力よりも、むしろ、受け入れ側の“目利き”力がより一層問われる時代を迎えているように感じます。電車の中で新聞、本を読む人が稀になり、皆スマホの画面とにらめっこです。無言のままスマホに熱中していることに非常に違和感を覚えます。私が体調不良などで助けを求めても、誰も気づいてはくれないのではないかと不安を感じます。決済もスマホをかざして、なんじゃらペイしてキャッシュレス、予約・手続きもペーパーレスです。LINE、インスタグラム、ユーチューブとスマホは便利ですが、コミュニケーション手段が多様化した今の社会だからこそ、同僚、友達、そして家族と向かい合って交流することも大切だと思います。直接人と向き合う機会を、大切にしたいです。メールで審査を依頼された論文も出版社ホームページからダウンロードして、査読結果もウェブ上に返しますが、実は一旦プリントアウトしなければ読んだ気がしません。世の流れから落伍しつつある身の上にとって、つくづくえらい時代になったと感じます。世の風潮として「24時間、戦えますか」は死語になって久しく、人口の減る日本では、景気に関わらず学生の売り手市場が続いています。ついつい、「昔はよかった。近頃の若い者は・・・」と言いかねないと自らを戒めますが、そんなことを言わずとも、現代の若者の中には、歴史残る偉業を、こともなげに気負うこともなく達成しています。藤井聡太氏や大谷翔平氏もいます。素晴らしい潜在能力を秘める次世代の若人に期待したいです。
新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行して1年半以上が過ぎましたが、よくご存知のように、必ずしも感染が終息したわけではありません。今も多くの病院や高齢者施設などで「面会制限」が残ります。「15分間」「家族のみ2人まで」「子どもは禁止」・・・。いつまで「面会制限」続くのでしょうか。親しい人との面会は患者のケアにも重要です。それだけではなく、むしろ、インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎が大流行する今日この頃ですが、通勤もかなりの程度が戻って、大学では講義を対面でやるようになりました。むしろ、オンラインで講義するなら理由書を出しなさいといった近頃です。今後、何がどこまでどうなっていくのか、皆目わからず、不安の中で翻弄されるばかりです。しかし、これをひとごととせず、それに対応するために、誰もが何かはできるはずです。この1年が良い年であることを祈りつつ、どうぞ本年も材料・表面工学研究所共々、皆様のご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
今回、久しぶりに雑感シリーズを執筆させていただきましたが、2025年3月発刊予定の関東学院大学工学総合研究所 工総研だより(No.73)の巻頭言とほぼ同じ内容であります。