最近の学生気質

関東学院大学
本間 英夫

各企業で入社式が行われてから3週間余り、新入社員は研修に毎日追われているだろう。最近の若者をLEDにたとえて「熱くならず冷たく、指示したことはきちっとやるが味気がない」と1ヶ月くらい前の新聞にコメントされていた。きわめて的確なコメントだ。実際、相対的にこの種の学生が多くなってきているのは確かのようだ。生き生きワクワクして活躍しそうな新入社員はどれ位いるのだろうか。産業界に送り出した側としての責任もあるし、一度受け入れ側の意見を聞きたいと思っている。

有史以前から「最近の若者は…」と年配者が批判するのが常であるといわれてきているので、この種のテーマーはあまり取り上げてこなかった。しかしながら、35年間、研究を通して学生と行動を共にしてきた立場から見ても、明らかに学生の気質は変わってきている。特に、この10年間の変化は大きい。

素直さ謙虚さの欠如、表現力の欠如、集中力の欠如、モラル低下、団体行動での非協力、時間にルーズ、自己中心的などなど。いつの時代も卒業研究に入ってくるまではしょうがないと思い、研究室に入ってから手作り教育と、使命感から一心不乱に彼らに自信と常識を持たせるべく、愛情をベースとして教育に専念してきたつもりである。しかし歳のせいか、最近はこの種の学生の数が多くなってきているように思える。3月の下旬、卒業式の後に化学科全体の卒業生が一堂に会しお別れ会をやっているが年を追うごとに形式的で感慨深さはなくなってきている。またその会の後に、研究室に分かれて2次会をやるのだが、本年は先生方はほとんど参加しなかったという。何故なのか聞いてみると、学生の教員に対する感謝の気持ちが希薄になり、単に飲み食いするだけで、参加する気になれないという。

我々の研究室においても継続してこの会をやってきているが、今まで謝恩会の形式でやったことは一度もない。費用は全てこちらが負担、卒業生も在校生もそれが極、当然と思っている。本来ならば謝恩で自分たちが費用を負担しあい、先生を迎えるのが筋であろうが、その気持ちはさらさらないようである。

かなり前になるが、卒業生への記念として家内がデパートで何か買ってきて、それを配ったことがあるが、最後に喫茶店で別れるときにそのプレゼントを置き忘れる学生が数人いたのでがっかりした。それからその習慣はやめた。今年も研究所の副所長である豊田君が参加できなかったので学生にかなり高価そうなものを私に託した。メッセージが添付されていたのでそれを読み上げ彼らにプレゼントした。しかしながら、本人に有難うとメールしてきたのは5人中二人だけ。別に期待しているわけではないが常識として何らかの方法で感謝の意を伝えるべきであると考えるのは歳のせいであろうか。

自分は学生に親父のような気持ちで付き合っているつもりだが、逆にそれが彼らにとっては負担に感ずるのであろうか。マスター修了生くらいになると3年間研究室にいたので、感謝の念は強いようであるが、それにしても中にはかなりドライに割り切り、終了したら後は知らん顔、自分の都合だけで行動する者が多い。在学中は頻繁にメールしてきたり質問をしたりするが入社とともにほとんど連絡がなくなる。

彼らが充実して仕事に励んでいるのだろうが、それこそインターネット社会でメールもあるのだから一年に2,3度くらいは元気ですよと近況くらいアクセスがあってもいいと思うのだが。特に、彼らが結婚する少し前になると、セルフィッシュさがありありとわかる。結婚式が終わると知らん顔。まーいずれ彼らも常識とか感謝の念とか解ってくると思うのでそーっとしておくのがいいだろうと温かい目で見るようにしている。

でも正直、たまには学生の方から、感謝するような企画があってもいいように思うのだが…。

LED型気質

 このように表現するのはいけないかもしれないが熱くならない、何時も冷めている、味気がない等々、何故現代の若者はこのように揶揄されるのか。それにはコミュニケーションの手段が携帯電話を中心とするインターネット依存がこの種の若者を多くしてきた原因の一つではないかと思う。

インターネット社会では瞬時にして情報が交換されビジネスの形態も大きく変わってきたし、大いに活用すべきである。世界は益々小さくなりこれからはグローバルに物事を考えていかねばならない。そのためにも今までにも増して英語の訓練は怠らないように研究所と大学の研究室で同時に進めていく。

現在はまさにインターネット社会の移行期でありインフラは大きく整備されてきている。インターネット社会に文句を言っているわけではなく、みんなが大いに有効に使いこなせるようにならねばならない。

しかしながら人間の精神活動はお互いのフェーストーフェースの暖かい交流が基本である。とかく我々より若い世代は何でもインターネットで調べようとするし、会議資料としても提出されることが多いが、インターネットによる情報は一次情報ではないし、重要な問題は公に、しかも不特定多数に流すわけがない。インターネットの効用と限界を早く認識しうまく活用してもらいたい。

今の若者の多くは勤務時間中に職場のパソコンを使い、インターネットで遊んでいる姿が目に付くという。我々の研究室でも遊びの頻度が高いようだ。また、実際にトピックス的な情報はほとんどインターネットからで中身は希薄。四六時中首っ丈になるのはよくない。

情報の一部として活用するのは大いに結構。それよりも折角研究できる環境が与えられているのであるから、大学院の学生が積極的に自ら実験をし、結果に基づいてさらに発想を豊かに持ち、追求していくことに喜びを感じてもらいたいと願うのであるが、実験は学部とマスター1年生のようになってしまったようで、この4月からこれまでの反省に立って軌道修正することにした。

研究所および研究室に大きな柱が

 この4月から小岩一郎氏が教授として本学に着任されました。ご存知の方も多いとは思いますが若干本人の研究内容を紹介します。これまでたくさんの研究をされてきましたがその中でも、無電解めっき法による電子材料の研究を中心に進め、その間に種々の成膜法を開発するとともに、組成分析法や構造解析法を習得されています。これが、その後の電子材料やデバイスの開発や商品化につながっています。また、プラズマディスプレイの研究、強誘電体メモリの開発をされてきております。これらの研究により、121編の論文、講演は、国内と海外にて招待講演も含め142題、さらに国内だけでなく、海外(米国、欧州、韓国、台湾)もふくめ33件の特許を取得されています。

ごく最近の研究としては半導体技術の開発があります。着任されてまだ3週間、これまでの企業における研究中心の仕事から教育と研究に専念していただくわけですが、誠実で温厚な人柄と、研究や教育に対する強い熱意をお持ちでありこれから大いに活躍していただきます。