『ミラクルきなっこ』と『利ききな粉ワークショップ』

材料・表面工学研究所
所長  高井 治

『ミラクルきなっこ』を御存知ですか?
 当所の表面処理技術を生かした食品材料開発の一環として、風味改善した大豆の超微粉『ミラクルきなっこ』の開発を行っている。SDGsにかかわり、世界の食糧事情等の改善に役立ちたいとの思いもある。
 「『ミラクルきなっこ』は地球を救う!」との意気込みで普及をはかりたい。

 大豆につき、農林水産省の調べなどにより下記のことがわかる。
 国産大豆の主成分は、日本食品標準成分表(7訂)によると、(1)タンパク質(33.8 %)、(2)炭水化物(29.5 %)、(3)脂質(19.7 %)、(4)水分(12.4 %)、(5)灰分(4.7 %)であり、アメリカ産はそれぞれ、33.0 %、28.8 %、21.7 %、11.7 %、4.8 %、中国産は32.8 %、30.8 %、19.5 %、12.5 %、4.4 %となっている。
 産地、また種類によりその成分は異なるが、どの大豆でもタンパク質が多いのが特長である。
 現在、日本の大豆の自給率は7 %(油糧用を除き食料用のみで25 %)と低下している。かつては、日本の各地で、特徴ある大豆生産がなされていた。価格の安い輸入大豆が多くなるとともに、地場の大豆が廃れていった。
 大豆の品種の現在の作付面積のベスト5は、フクユタカ、ユキホマレ、里のほほえみ、リュウホウ、エンレイの順で、豆腐、煮豆に使われている。
 世界的には、大豆は、大豆油として油を取り、残りの油粕は豚などの飼料用に使われている。大豆をそのまま、あるいは加工して食べるのは東アジアなど世界的には一部の地域である。人間が、大豆をそのまま食べるようにすれば、世界の食糧事情も大いに変わり、炭酸ガス、メタンガス排出削減にも貢献できる。
 現在、GMO(遺伝子組み換え作物)の大豆が多くなっており、Non-GMO(遺伝子組み換えでない作物)の大豆が求められることもある。
 国内においては、各地の特徴ある大豆を復活させようとの動きもあり、『ミラクルきなっこ』と関連させ、この動きに貢献できればとも思っている。

 大豆には、タンパク質、各種ビタミン、各種ミネラル、脂質、植物繊維、イソフラボン、ポリフェノールなどが含まれ、高い栄養価を示し、「畑の肉」、「大地の黄金」と呼ばれる。タンパク質は血圧上昇抑制、肥満防止に、脂質は善玉コレストロールの増加に、植物繊維は整腸作用に、イソフラボンは骨粗しょう緩和に、イソフラボンはがん抑制に良いと言われている。
 この栄養を100 %利用できるのが、味噌、納豆、テンペ、きな粉である。大豆の一部を利用したのが、豆腐、醤油、豆乳、おからなどである。現在の豆腐製作ではおからが出て、この廃棄が課題になっている。大豆を100 %利用できる『ミラクルきなっこ』の登場で、この課題も解決できると考えている。

 きな粉の平均粒径は、粉砕法にもよるが、約200 μmであり、水への分散性が悪く、溶けない。また、臭い、収斂性(渋味)、えぐみ等の風味改善も必要である。この脱臭において、130ー190 ℃の高温処理を施すが、大豆に褐変という変色が起こりやすくなり、タンパク質の変性による分散溶解性の低下も起きる。一方、舌触りに関しては、粒径が約25μm以上であると舌にざらつきを感じるようになる。このため、粒径25μm未満の大豆粉の開発が必要になる。
 当所では、特殊な微粉砕装置を用い、平均粒径10ー20μmの生大豆微細粉を作り、約110 ℃の低温で空気に触れることなく焙煎処理を行い、風味改善を図った。また、消化に悪いトリプシンインヒビターを不活性にしている。このようにしてできた風味改善した微粉砕のきな粉を、『ミラクルきなっこ』と呼んでいる。

 『ミラクルきなっこ』は、従来のきな粉と違い、水によく分散し、水に溶けることに特長があり、豆乳、アイス、チーズ、ヨーグルト、肉などが大豆だけの原料で作ることができる。クッキー、パン、麺、飴などへの応用も可能であり、小麦、卵などと混ぜても使える。
 食品の三大アレルギー源は、鶏卵、牛乳、小麦である。これらのアレルギー源を使わずに、いろいろな加工製品ができることに、『ミラクルきなっこ』の特長がある。
 そもそも、『ミラクルきなっこ』を開発した当所の角田先生の動機は、「大学祭模擬店にきてアイスクリームを食べられなかった牛乳アレルギーの小学生に、牛乳を使わないアイスを食べさせてあげたい!」にある。

 特殊な冷凍法を用いるとチキンに類似の繊維状の大豆肉ができ、唐揚げ、チキンナゲット、チキンカツ等に利用できる。世界の食糧事情を鑑み、大豆を有効的に利用することは重要であり、特に大豆肉の発展は大いに期待できる。

 この『ミラクルきなっこ』関連で、2021年11月12日(金)に、きな粉スペシャリストのSEIKOさんを、研究所にお呼びし、講演会をかねた『利ききな粉ワークショップ』を開催した。SEIKOさんは、日本の500種類のきな粉を食べてきたとのことで、大変おもしろいお話しが伺えました。13種類の色も香りも舌触りの違うきな粉の特徴がよくわかった。日本には、500種類以外のきな粉も販売されているとのことで、きな粉愛好家の多いこともうれしい驚きです。
 SEIKOさんは、下記のYouTubeチャンネルを設けている。
https://www.youtube.com/channel/UCKl2uYwyh9jDla6uObrjvSg
 当日、お持ちいただいたきな粉ソースもおいしくいただけ、その動画も載っている。
 また、本学にいらした際の動画が、下記にアップされている。
https://www.youtube.com/watch?v=gEC_PX-zbjo
 是非、御覧になって下さい。

 当所では、小田原にあります「湘南ありへいとう製造本舗 利喜」に依頼し、ミラクルきなっこ入り有平糖を3種類(箱根路みそ落花生、足柄茶黒ごま、湘南はちみつ黒ごま)試作し、試供品を配布している。
 噛める飴とのことで好評を得ているので、是非、当所にお越し下さい!